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男のツンデレにデレるとか……。

オタク、シリーズ再始動して動かしています。

昼休憩に書きたいのだが、昼休憩まともに取れぬ。

ブラックーー。

社会人とはこんなもん。

         ※


 僕たちは僕達は順調に金をかせぎ、足らない分を労働し、無事に異世界で家を建てた。


 開店オープン!!

 店じゃないから、誰からも祝われなかった。


 でも感無量かんむりょう

 だって引きこもりだった僕が異世界にきて、やっと自分の家を持つことができたんだから。

 ここで涙流さず、どこで流すの!?


 僕以外の異世界転生メンバーの気持ちは分からない。

 でもその日、僕達は各々特別のものを用意した。


 約束していた。

 この記念すべき開店オープンに、異世界転生グループであるつながりを示せるようなもの、用意して見せ合おうって。


 僕はめちゃくちゃ悩んだ。

 だって言い出したのは僕だったから。

 

 いつかは別々になったとしても、この家に帰ってきたくなるようなつながりを考えたかった。


 そして。


 僕は電気を使ったクーラーを用意した。

 暖房もできて、冷房もできる。こいつを密かに準備していた。


 元々和木くんが育てる植物の温度管理をしたいと始めた研究だったが、この家をまかなう電気を蓄電できるぐらいになれば、可能なプレゼントだったと思う。


「あかん。永久にこの家に居つきたくなってまうやつやないか」

「ーー確かに。快適すぎるな」

 このプレゼントは樫木と和木をうならせた。

「久々に文明の力ーー! しかも窓開ける必要ないから虫ら、入ってこれやんのか」


 僕は見逃さない。

 和木も小さく「いいな」とつぶやいていた。


「次は樫木くんの番ね」

 得意げに僕が言うと、樫木はあごに手をやってうなっている。


「なんかトップバッターすごすぎて、あかん!! わいは、何もないんで。新艦長になった祝い金、全部この家に費やすよ」

 建具を始めた調度品、ソファやテーブル、樫木がこの家に運び込んだ。


 高級家具だ。

 イドゥス大陸の高価な調度品が運び込まれ、僕はこんなに贅沢していいのかと、たじろいだ。


「祝い金全部って……、こんなんあったら一生苦労しないのに樫木くん……!」

 僕は涙を浮かべる。

 やっぱ樫木もこの家のこと、つまり僕達の関係のこと大切に思ってくれているんだ。

 それが伝わってきて嬉しかった。


 それなのに和木が水を指す。

「無駄づかい。買う前に相談」

 相変わらず無愛想だった。

 樫木が和木につかみかかりそうになるのを、僕は「まぁまぁ」と止めている。


「で、和木君は?」

「そうや。おまえは何用意したんや!?」

 僕達が注目しても、和木は無感情に言った。


「おまえらってさ……、誕生日だから無条件に祝ってくれって言ったり、プレゼントねだる子供か?」

 和木の言葉に樫木が激怒したけれど、僕は胸がずきんと痛んだ。


「プレゼントすればいいってもんじゃないよな」

 提案したのは僕だった。

 何か記念になる形が欲しかった。

 僕達は、特別な関係だって確認したかった。


 そんな心に、スッサリと包丁を刺された気分だ。


「プレゼント? 送りあってたら友好関係築けるなら、大人になって送る賄賂わいろにころっといっちまう。本心とか別にあってもなぁ」

「何ぃ!? そんなことこんなめでたい日に言わんでいいやないか!?」

 樫木が和木の胸元に手を伸ばす。

 樫木と和木の身長差は頭ひとつ分以上違い、和木は全く動じていない。


 それどころか、和木は何か機嫌が悪いのか、さらにヘソを曲げた意地悪を上乗せした。

「おまえ達のレベルに合わせてやろうか?」

 それは簡単だと、和木は言った。


「仲良しごっこなら、俺は一生食うに困らない穀物を生成できる庭を考えた。それに転生前の調味料。この世界じゃ高値で取引されるやつだ。それをこの庭から一生おまえたちに献上してやる」

 上から目線がひどい。


「でもこんなもんで、この世界攻略できたなんて思ったら間違いなんだよ」

 和木は言った。

 いつになく、いじわるーー。いや感情が泡立っている。


「これはただ単に……」

 拠点を築いただけ!

 お祝いして馬鹿騒ぎしたかったけれど、僕らは三人とも、視線で同じことを確認した。


「わぁってるよ。おまえがシメ直さなくっても」

「うん。僕もそれはわかってるから」


 こっちにきて、みんな死にかけてる。

 和木くんの言葉は、命に染みたので、僕達は和木の不器用さを許すことにした。


「案外おまえさんは、慎重なのな。素直に祝いもできやんのか?」

「うんうん。でもプレゼントとかじゃないんはわかった」

 僕達が和木にからみついたので、和木は嫌そうにこちらを睨め(ねめ)付ける。


「わぁぁったて。素直やないし、もう。どうや? この高級ソファの座り心地は!?」

「ーー悪くない……」

 あ。ソファとか好きそうだもんね。

 僕は和木が心からほくそ笑んでいることを確認した。


「もう、本当に君はーー」

 和木の横で泣き笑いしそうになる僕に、和木は言った。


「プレゼントなんてしたくない。でもこの先、おまえら二人が本当に困った時、俺は絶対に力になる。そういう力を身につける」


 僕の涙腺は一気にゆるんだ。

 何っ!?

 そんなこと言えるの!?


 和木がっていう意外性が相乗効果になって、感動する僕の横で、樫木も腕で涙をぬぐっている。


「おまえ、サプライズか!? 悪いやっちゃな、ほんま」

 ほんまに。

 僕達はグラスを傾け、仕切り直して門出を祝った。




感想、足跡、コメント、評価、ブクマが次の活力に。

何卒反応よろしくお願いします!


偽りの神々シリーズ紹介

1「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

2「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

3「封じられた魂」前・4「契約の代償」後

5「炎上舞台」

5と同時進行「ラーディオヌの秘宝」

6「魔女裁判後の日常」

7「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

8「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

9「脱冥府しても、また冥府」

10「歌声がつむぐ選択肢」

シリーズの10作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー


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