病気と呪い、そして人と神
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樫木は僕たちが造る家を、どこか乾いた笑顔で見守っている節があった。
「樫木君にとって家ってあんまり意味なかった!?」
クエストを受けて樫木が稼いできた金や、彼が神官になって得る月給も大きかったから、樫木の発言権は大きいはずだ。
なのに樫木は、ひとつも楽しそうにしていない。
それが気になっていた。
僕の質問に樫木は珍しく真面目に苦笑いを浮かべた。
「家って大事やと思うで、ほんとにな」
家の建築の進行状態について肯定してくれた樫木だったが、どこか寂しそうだ。
「でもさ……。どんなに反映した家でも、歴史上三百年以上続く家ってあんまりないよな。ーーでもって、続いちまった家って、格式とか型式とかそんなんばっかで、いい例を知らないんだよ」
樫木の家も由緒正しい火柱神社だった。
「わいの実家だって、千年できかないくらい歴史のある神社だったけどさ、最終的にはどうよ。時代に合わなくて、窮屈やったから、わいは家から出たいばっかりやった」
実際家出したんだったよな、そういえば。
呪術を扱う御三家と言われる由緒正しい家系であっても、子孫はそんなもの継ぎたいのかといえば、そうじゃないらしい。
「森君はさ、感染症とかの病気と呪いとか呪術の類い、どっちが怖かった?」
え?
唐突だな。
「ごめん僕、目に見えないもの信じないから。正直、感染症も未知のやつで、科学的裏付けがなきゃ、呪いと一緒で似たようなもん。原因不明ってことが怖いんだ」
率直に答えたリトウに、アキ・カシキがその手を肩に回してくる。
「だよな。病気も呪いも、元をたどれば一緒ってこと、お前ならわかってると思ってたわ」
意識していないところで納得され、褒められる。
一緒かどうかはわからないけどね。
人類は科学を武器にして、わからない謎を解き明かし続けた。
たとえ今わからないことでも、先の未来では解明されているという可能性がある。
「たとえば日本の古事記読んだことある?」
「あるで」
「当然だな」
樫木も和木も、なかなか珍しい高校生だ。
だいたい普通の高校生って、その手の本に興味がなく、読んだことのない者がほとんどだと思うけど。
「わい神社の跡取りやで。神様のルーツ知らないとかないだろ」
なるほど、それは道理だ。
「和木君は?」
「刀を調べていると、歴史に興味を持った。行き着いた先は日本の成り立ちを書いた古事記。結構面白かったな」
やっぱりこの二人って、結構脳内偏差値高そうだ。
樫木はいかにも努力家だったし、和木は超絶要領がいい。
「で、古事記がどうした?」
「あ、なんかさ。この異世界って昔の古事記の世界みたいだなって思って。単なる人が神格化されてて、神様同士でも権力争いしてたり。僕たちが生きていた未来の成り立ちを見てるみたいだ」
「なるほど。西洋では聖書があるし、仏教では経典みたいな感じで、全部神様がいるな」
「ま、仏教はどっちかっていうと努力して悟り開いた人を神格化していったわけだが、共通点は目指す道を示す存在ってことか」
イドゥスの神様なんて、特にそうだ。
呪術や魔法なんて使わない。
浅黒い肌で日毎畑を耕す民の安全を見守り、規則正しく生活している。
一般の民よりもかなり体格がいいってことぐらい。
食べ物よきゃそうなるよな。あとオーラはあるかな。
でも日本の天皇家の人だって、実際会ったことないけど会ってみたら結構オーラあるって聞いたし。
タレントに関しても同じようにオーラってあるんだろ。
会ったことないけどさ。
「案外俺ら、異世界転生したんじゃなくタイムスリップしただけだったりして」
「歴史書に書かれていないだけで、人類の成り立ちにこういう国が合ったとしても不思議じゃないしな」
僕と和木はそう言ったけれど、樫木だけは首を横に振った。
「違うと思うよ。この世界は呪いの量が多すぎるし、身近にありすぎる」
偽りの神々シリーズ紹介
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
シリーズの7‘作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
未来都市10Gストーリー
『X G都市』