異世界でコケない自転車づくり
気ままに投稿します。
お付き合いよろしくお願いします。
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僕たちの当面の夢は家を持つこと。
だって異世界にきて野宿が多くて、安心できなかったから。
前の生きてた時代じゃさ、ソロキャンプとか流行ってた。
車中泊とかも。
大人たち、アウトドアに飢えてたよなぁ。
でもホント、実際家失って野宿生活してみろよ。
誰も憧れないと思う。
軽々しく異世界転生したいとか。
それで人生リセットしたいとか、ーー言うな。
まず虫を食べれるぐらい飢える飢餓を体験してみて。
文明社会バンザイ!!
僕は鉄を錬成した。
異世界でのレベルはたぶん上がった。
僕らの世界の異世界転生なら、レベル1からレベル5ぐらいまでは進んだのかな??
スキルわかるようなモニターでろよな。
そうすればどんどん異世界転生生活っぽいのに。
元ヤクザの跡取りで、現在料理人志望の和木に、鉄錬成スキルで包丁を作ってやる。
和木は研ぎ石をどこからかみつくろってきて、夜な夜な包丁を研いでいる。
シャーーー。
シャーーー。
結構ホラーなんですけど。
切れ味が良くないのは、お気に召さないらしい。
どの角度で研いだらいいのか研究をするために、和木は包丁を何本も要求してきた。
思うけど、こいつ肉とか切るの好きだよな。
和木が夜な夜な包丁を研ぐ姿を見て、僕は身震いする。
「ついでに、拳銃の玉作ってくれるともっと嬉しい」
などと、物騒なことを口にする。
「拳銃はNG」
こんな異世界転生で飛び道具なんて、NGだよ。
それは化学で、どんでもない殺戮のための武器作っちゃうのと同じだから。
僕は自分なりの線引きをしていた。
僕たちは家を建てるために、料理を作り、クエストを受け、相変わらず現代において重要だった勉強からは縁がない怠惰な生活を送っている。
最近イドゥス大陸で高位の爵位があるリーインリーズ伯爵がパスタにハマっているので、料理人としては楽勝の日々を過ごしていた。
でもさ。
パスタって栄養偏るから、そろそろなんかさ、違うの出そうよ。
僕の提案より、和木は包丁と研ぐことに夢中だ。
シャーー。
シャーー。
だからホラーなんだってば。
いったい何を切り刻みたいのか。
君が刃物に向かうとき、僕は13日の金曜日を思い出してゾッとするよ。
倭の国から着物を取り寄せては包丁を作る和木を横目に、僕は冷や汗たらたらになった。
「ただいま」
樫木君は傷だらけだ。
クエストに行くのに、馬車だけでは不便だと、現代社会で僕が乗っていた見様見真似のママチャリを、鉄とゴムで錬成した。
樫木君にプレゼントしたけれど、いつも傷だらけだ。
「んー、ママチャリいいね」
樫木は笑う。
「でもコンクリない世界で、ママチャリはきつい」
犬の妖怪の有名なアニメでは平気で乗ってましたけど。
実際走ってみたら、コンクリMy ラブらしい。
「僕、ロードとかのフレームって遠目にしかみたことなくて」
樫木は思い切り苦笑して、顔の前でブンブンと手を振った。
「いやーこの世界でロードバイク乗ったら、もうママチャリ以上に傷キズになってしまうで」
と蒼冷めている。
「マウンテンバイクを、欲しいんや」
本音の要求が声になって僕に伝わる。
「最強ママチャリでも、舗装されてないこの世界、ちょいこけるんで、マウンテンバイク作ってくれやんかな?」
僕の知識の中に、そいつはない。
「タイヤ、ちょい太いぐらいしか知識ないんだ」
「徐々に試したらあかんやろか?」
和木の包丁もそんな感じで制作して、前進し続けている。
「OK」
この世界でも樫木がこけない自転車、作ってみようか。
僕はうなづいた。
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?」;2020年12月13日
小説というのは、ただ書くのが楽しいから書く。
それでいい。