言わないでおこう
偽りの神々シリーズ
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
シリーズの6作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
※
「この話、樫木にもする?」
「拳銃のこと知らないんだから、言わなくていいんじゃないか」
和木の意見に同意した。
聞いても気持ちの良い話じゃない。
多分聞かなければ、単に不幸な事故で死んだ、で後腐れなかった。
でも他人によって人生を奪われたって思うと。
やっぱり前の世界に未練がないわけじゃない。
特に樫木は。
茜っていう婚約者を、前の世界に残してきたんだ。
監督たちの企みを知ったら、地の果てまでも探して、復讐に行くかもしれない。
「わかった」
こうなってくると和木一人で、よく秘密を抱えてたもんだ。
「やっぱ和木くん、根性半端ないよね」
「なんで?」
「よく今の今まで、黙ってたよ」
「別に……」
話すのがめんどくさかっただけ。
ボソッと呟いてそっけない態度だ。
「もし見つけたらどうするの?」
「どうも。もう済んだことだろ?」
僕よりも一年近く前にその現場を見てしまって、和木が出した結論だった。
「よかったんじゃね? そいつらもこっちに来たってことは、あっちの世界では二度と同じような誘拐事件、起こらないってことだろ?」
自分死んじゃったのにさ。
あっちの心配!?
つまり黒田の心配をしてるのか!?
僕は和木の肩に手を置いた。
「そうだね」
僕は君ほど優しくないけど、確かに済んだことだ。
「ーーただ……気になるのは、あの時俺たち以外に一体何人が異世界転生したんだろうな? 俺たちだけでも、このキコアイン一族に結構な影響もたらしてる気がする。倭の国だってそうだった。なんらかの影響与えてる」
「だね。でも僕たちだって不可抗力でこっちに来たわけだし、影響まで考えてらんないよ」
そうだな、と和木が言った。
でもその横顔は、言いたいことを飲み込んだような様子だった。
「オタク家を建てるまで」:2020年12月28日