その拳銃は誰の?
偽りの神々シリーズ
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
シリーズの6作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
※
和木は和服にかけていたエプロンを外して、僕達の部屋のベットにどかっと腰を下ろした。
それからベットの枕元に手を伸ばして、布に包んだ拳銃を取り出した。
「こいつの出どこについてだよな」
黒くて重い鉄の塊。
圧がすごい。
この世界には存在しないはずの拳銃を目にして、僕はごくんと息を呑んだ。
「うん。和木君はそれでその……、倭の国の呉服屋の主人を打った時。あわわわっ、いや、べ、別に人殺ししたっていうんじゃなくて、あれはほら早く楽にしてやりたかったってわかってるし……」
緊張して喋ると、やっぱり僕は吃音になる。
「せ、せ責めてるんじゃなくて」
「ああ。わかってるって。こいつの出何処を知りたいだけだろ? ーーおまえ、俺がこっちの世界に持ってきたものだって誤解してたんだよな?」
「違うの!?」
和木はちょっと睨んできた。
「俺言ったよな? こっちには刀しか持って来なかったんだって。2回も同じこと言うのは好きじゃない!」
「ごめん」
僕が謝ると、和木はため息をついた。
「ーー最初。オオカミもどきと戦った時、俺だってこんな便利なもん持ってたら使ったしな」
確かに。
そういえば、和木はこんなになるなら拳銃でも持ってくればよかったか、と愚痴っていたことを思い出す。
「えっ。じゃあ?」
「こいつは、俺がバスに食料やら薬やらを取りに帰ったときに、バスの中で拾ったんだよ」
「ーーえっ!?」
日本ってそんな拳銃簡単に手に入らないでしょ?
なんでインターハイ向かうパスの中に、そんなもん落ちてたんだよ!?
「おまえ、拳銃イコール俺の持ち物だって、偏見だな」
「ご、ご、ごごめん!」
和木が所持してたものだって決めつけてた。
ほんとごめん。
そうだ。
和木は、樫木が怪我してる時に、一人でバスに薬や食料を取りに行ってくれた。
その時に刀まで、僕達のそばに置いていったくらいだ。
もし拳銃持ってたら、その時に言うよな。
「ーーほんと心外」
和木は嫌な顔をして見つめてくる。
だからか。
『おまえ俺信頼してねーの?』って聞いてきた理由。
「ああ。ほんと思い込んでた。ごめん、まさか他に拳銃持っている人がバスに乗ってたなんて」
僕は胸の支えが取れた気がした。
「でも、なんでその……、拳銃ひらってきたこと言わなかったの?」
「だから信頼できなかったんだって」
ーーん?
あれ、また引っかかった。
「まさか、おまえや樫木が拳銃所持してきてるって可能性は低いと思っていたよ。ーーでも可能性はゼロじゃない。俺以外、あのバスに乗ってた人全員が、こいつを持ってきた可能性があったわけだ」
「ちょっと! じゃあまさか信じられなかったってその意味は、ま、まさか僕や樫木がこの拳銃の持ち主かもしれないって思ってたってこと!?」
和木は軽く笑った。
「まあ、おまえみたいなドンくさいやつのもんじゃないだろうって思ってたけどね。樫木は妙にサバイバル慣れしてたし、警戒はしていた」
はぁぁぁ。
僕は深くため息をつく。
なんだよそれ。
結局めちゃくちゃ用心深くて、隠してたってことだ。
新たな和木の一面を見た気がした。
「1年おまえらと付き合ってみて、おまえらがそんなやつじゃないって確信したし、ーーこいつ拾ったときの経緯、もう話してもいいよな」
和木は語り始めた。
「オタク家を建てるまで」:2020年12月25日