躊躇
「い……(一緒にやろう)。」
「どう!どう!一緒にやってみない。」
「そ……(そうだね、面白くなるね。)」
「絶対面白くなると思うんだよね!」
「た……(楽しくなりそうだね、一緒にやろう)。」
「私の勘って外れないでしょ。」
「そうだね。」
私がやっと言えたのは簡単な同意の言葉だった。
みゆが悪いわけではなく私の言葉が出ないのを助けるために言葉を出してくれる。
私の歩みがみゆの足を引っ張てしまうのではないかと少し不安になる。
みゆはずっと自分のやりたいことのために全力で突き進んでいった。ずっと勉強をして、海外の学校に行って、力をつけてきた。
何もできず一人で陰鬱と部屋に籠り続けている。
このまま私はどこに行くのか。どこに行きたいのかも考えることができなくなっている自分がいることに気が付く。
漫画の主人公の様にある日突然自分に不思議な力が宿らないことなど分かり切っている……分かりきっているはずなのに私はここから離れることができない。
もしかしたら私はみゆを足掛かりにして自分を特別にしたいのかもしれない……。
「みゆ!」
「な、なに。」
気が付いたら、目の間にみゆの顔があった。
いつの間にか自分の世界に閉じこもっていたらしい。
「やっぱり変わらないね。自分の世界に入り切っていたよ。」
「そ…そうだね。」
みゆは目の前で急に私の瞳を見て止まった。
私はすぐに目をそらしたが、その後もじっと私を見つめるのを感じる。
何かを見抜こうとするようにみゆは私を見続けた。
「卑屈になっていたでしょ。」
「そんなことないよ」
私は間髪を入れずに答えた。
何を言われるかある程度想像ができていたので、その時はすぐに返事ができた。
みゆに失望されたくないとの一心での反射だったが、雰囲気はさらに鋭いものになった。