ヒント
「ありがとうございましたー。またねー。」
「……終了と。お疲れさまー。」
「うん。ありがとう。」
録音が終わるとみゆは必ずと言っていい程、私の事を褒めてくれる。
その言葉が何か引っかかるようになっている。
全くうまくいって行っていないものを無理に褒めらえている様な違和感というのが正しいのかもしれない。
「じゃあ、これをさ……」
「待って。」
「また?」
「うん。」
「そっか……。うん。分かった。」
みゆは私が録音したものを配信しないことを何も言わない。
黙って私の意見を尊重してくれる。だからこそ焦りを感じる。
「みゆ。」
「なに?」
「……何でもない」
「そっか。わかったよ。」
『みゆは焦っていないの?』
『みゆは後悔していないの?』
『みゆはこれからどうしたいの?』
聞きたいことは無限にあるがどれも聞くこと出来なかった。
聞けば答えてくれそうなものもあるが、結局それはすべて自己満足の様に感じた。
大切なのは私がみゆの為にどうするかだけであり、それ以上のものは何もない。
「ごんちゃん。あのさ。」
「なに?」
「イラストの事なんだけどさ。ちょっと問題があって。」
「問題?」
「そう。動かすために少し修正が必要なことがあって。ごんちゃんって絵とか書けたりするっけ。」
「無理無理無理。あんな綺麗な絵とか描けないよ。」
咄嗟に出た言葉が全てだった。アーイシャの描いたように描ける自信などとてもではないがなかった。
「そっか……じゃあさ。」
「なに?」
「描ける人とか知らない?」
「イラストレイターて事。」
「そんな大層なものでなくてもいいんだけど。少しいじれるぐらいでいいんだけど。」
「いると思う?」
「そうだよね。」
みゆの少し落ち込む姿を見て、心がざわついた。
少ない知り合いの中から必死に探す。
当然の様に全く思いつかない。何度も同じ知人を思い浮かべるが全く当てはまらない。
「思いつかないなら大丈夫。何とかするから。」
「本当に大丈夫なの?」
「うん。何とかするから。」
みゆの表情の裏に焦りを感じた。
そもそも、私に相談するということ自体が相当切羽詰まているだろう。
何とかひねり出そうとした瞬間。ある人の顔を思い出した。
「あっ!」
「どうしたの?」
「八巻さん」
「八巻さん?ああ、てるちゃんの事?」
「そう!八巻さんなら大丈夫だよ!」




