一歩
「……」
再び部屋には沈黙が流れた。
今まで無駄にしてきた時間を呪う。
私の語彙では何を言っても軽く感じそうで言葉が出なかった。
「……」
それでも目の前で涙を流さすに泣いている友人を見て、動かないことは出来なかった。
「あの、聞こえている?」
「……」
当然の様に返事はなく、私の滑稽さだけが浮き彫りになった。
顔が熱くなることを感じながら、次の手を考える。
「……」
何も出てこない。
私の人生経験では次に何をすべきか、全く出てこない。
頭に浮かぶ言葉を無理やり紡ぐ。
「アーイシャさんも急だよね。」
「……ッ」
りなから反応がありそれに縋るように話し始めた。
「急に言われても言葉が出ないよね。」
「……」
「ゆっくり考えさせてほしいよね。」
「……」
「大切な判断するんだもんね。」
「……」
りなは下を向いたまま全く反応をしなかった。
言葉が空転しているどころか逆効果なことは分かっていたが、それでも言葉を吐き続けた。
「もう少し、やさしい言葉掛けれないのかな。」
「……知らない……」
「え?なにかいった。」
「私の事もアーイシャの事も知らないでしょ。」
「う、うん」
「それなら喋らないでよ。」
「わ、わかった。」
りなが私に当たってくる悲しみよりもりなが私を認識していることが嬉しかった。




