想像
「やるなら、早くやったらどう。」
「はいはい。分かってるよリナ。」
リナが話と話の間に巧みに入り、話を戻した。
みゆは少しイラつきながら返事をしたが、それも納得の言えるものだった。
リナの行動の一つ一つにうまく言えないが、何か策略めいた嫌なものを感じた。
「ごんちゃん、話を戻すけどこれから金剛寺飛鳥として録音させてもらえない。」
「うん。大丈夫。」
「じゃあ、みんなへ挨拶する感じで喋ってみて。」
「みんな。」
「そう、録音を聞いているみんなに向けてみたいな感じで。」
「ちょっと待って。何か台本とかそういうのは。」
「台本?」
「そう。これを読んでください見たいな。」
「ないけど。いい感じに喋ってみてよ。」
このやり取りをして思い出した、みゆが猪突猛進で深く考えずに進むことを。
しかし、録音ができないと突っぱねることは出来ない。
リナもアーイシャも私の事を見ている。
みゆを守ることができるチャンスが来ているのに、みすみす見逃すわけには行かない。
「分かった。じゃあどうすればいい。」
「じゃあ、このイラスト見てイメージを沸かせて喋ってみて。」
「うん。」
改めてイラストを見てみる。
どのイラストも青の綺麗なショートヘアーを躍動させている。
時には汗を輝かせて叫んでいる。
おそらく元気で活発何だろう。
碧の瞳はまっすぐに未来を見据えている。
全身を見ると、少し小柄な事もあるが、手足を大きく使い感情を爆発させている。
マイクを握り歌っているところやダンスをしているところを見るとアイドルなのだろうか。
しかし、背景の多くが稽古場や小さなライブハウスであるところを見ると、今はトップアイドルというものではないのだろうか。
「元気そうな子だね。」
「そうだね。その子になり切ったつもりで喋ってみて。」
「わかった。VTuberになるからよろしくねみたいな感じで。」
「そうじゃなくてアイドルとして修業するからみんな見てね見たいな感じで喋ってみて。」
「アイドルとして……みんなに見てもらうように……。」
「これも何百万回再生されていく予定だから、その人達に向けてね!」
「うん。」
皆に納得してもらえるような、ものを作れるように集中していく。




