設定書
ー試験
改めてその言葉が腹の底で冷たく重く響いた。
当たり前といえば当たり前だが、認められるためには戦わないといけない。
息を大きく吐き、少しでも気分を変える様に試みる。
「どうしたの、顔色悪いよね。」
全てを見通すようにリナが言った。
「大丈夫。問題ないからやろうよ。」
揺れる心で私は答えた。
しかし不思議とみゆを見ると心の揺れは収まるように感じた。
「わかった。じゃあやってみてよ」
リナは勝ち誇ったかのように吐き捨てた。
リナの中にはすでに物語が出来上がっているのだろう。
しかし私はその想像を超えないといけない。
「ごんちゃん。じゃあこっちに来て。」
みゆに手を取られ私はみゆの後を付いていった。
導かれるままに4人掛けのテーブルの隣同士で私たちは座った。
その後、私の正面にリナ、はす向かいにアーイシャが座った。
「これ見てみて。」
皆の前に用意された、Å4サイズの冊子を手に取った。
表紙には”金剛寺飛鳥”と印刷される以外何も書かれていない無機質なもの。ページ数も5ページ程で何が書いてあるか想像がつかなかった。
私は緊張しながら小冊子を開いた。
開いた瞬間、私はその世界に引き込まれた。
みゆに誘われたときに見せられた、キャラクターのイラスト。それが一枚や二枚でなく、様々な角度から、様々な距離から描かれていた。
繊細なタッチのイラストはずっと見て居られるような不思議な魅力があった。
「ごんちゃん、すごいでしょ。」
みゆは勝ち誇ったかのように話しかけた。
「これって……」
「金剛寺飛鳥ちゃんのキャラクター設定書」
「すごいよこれ!すごい綺麗!それにすごい丁寧に繊細に書かれていてずっと見て居られる!!」
私は興奮を抑えきれず喋った。
その様子を見てみゆは満足そうな顔をしていた。
「もっと見ていい。」
「いくらでも見ていいよ。」
私はみゆの言葉を全部待たずに更に読み込んでいった。




