表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/99

意思なき決断

「覚悟ならあるよ。そうじゃないとここに来れないし居れないよ。

 確かに心配させてしまうかもしれないけど、私も一生懸命頑張るからさ。」


 シュミレートしてきた言葉を喋る。流石にアーイシャのを見て喋ることができずに視線をしきりに動かしながら口だけ動かした。

 しかし、喋れば喋るほどアーイシャからの圧力を感じた。


「本心の言葉?」


 一言だが重い言葉だった。

 言葉の意味以上の圧力を感じ言葉を継ぐことができなかった。


「これぐらいで黙るくらいの覚悟って事?」

「そんなことは……」

「そんなことはないなら説明できる。覚悟の程を。」

「それは……えっと……さっき言ったようにまだまだ決意は足りないかも……」

「決意が足りないならここに来てほしくない。今ここから去れば私から二人に上手く伝えるから黙って去って。」

「その……決意なら……。」


 私はそこに立っていることしか出来なかった。

 そこから逃げ出さないことが唯一出来る自分の意思表示だった。

 しかし、それさえ見通すようにアーイシャは言葉を続けた。


「いつまでもそうやって立っているつもり、遅刻するのも嫌だから早く決めてほしいんだけど。」

「……」


 私はそこから何もしゃべれなくなった。言葉を出せば声が震えてしまいそうで、必死に足を震わさないで立っている事に集中した。


「分かった。そうやっているもみゆに頼ってきたんだ。そこで黙って立ってればいいよ。」

『そうじゃない。私はあなた達がみゆを理解していないから、それをサポートするためにここに来た。あなたはみゆの何を知っているの。』


 言葉にできない言葉が頭の中に浮かんだ。

 しかし、実際その言葉は誰にも伝わることなく。何にも影響することなく。消えていった。


「私は今から入る。あなたは入ってこないで。ここから先は自分の意思を持たない人は入れない。」


 そう言い残し、アーイシャはインターホンを鳴らした。


「もしもし。来たよ。」

『はーい。どうぞ入って。』


 インターホン越しにこの前聞いたリーの声が聞こえ、オートロックの扉が開いた。

 中に入る直前、アーイシャは再びこちらに向き直った。


「早く帰れば。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ