どっちつかず
「どう考えても無理でしょ。」
アーイシャは勝ち誇ったような表情でみゆに向かって吐き捨てた。
今まで何度も見たことのある風景。
自分に失望している人間の表情。
胸に突き刺さる言葉と空気が卑屈感を煽る。
「アーイシャ、私には浮かぶのごんちゃんが世界中の人を魅了していく姿が、楽しそうに喋っている姿が、私はいつも直観に頼っていたの、だから今も直観に従う。」
『社長。』
「何、りー」
『確かに今まで社長の直観を頼ってきた部分は大きいけど、さすがにそこまで社長を信じけれないって、アーイシャが言いたそうだけど。』
「そう!信じられない。」
リーは画面の向こうから笑みを浮かべながら言い、アーイシャも追従するように喋った。
私の焦点が合わなくなくなっていく、私は助けを求めるようにみゆの様子を伺う。
『それにそもそも、肝心の本人がやる気がなさそうだし。』
「そんなことない。」
『それは社長が決めることではなくて、金剛寺飛鳥さんが決めることじゃないの。』
一斉に全員の視線がこちらに集まる。
「え……あ……その……」
どの言葉も正しいとは思えずただ時間が過ぎるのを待つことしか出来なかった。
『社長と一緒にいた時期なんて、たかだか数年でしょ。その一瞬で何がわかったの。』
「ずっと一緒にいたし、ごんちゃんに何度も救われたんだよ。」
『またその話、もういいから。』
「なら理解できるでしょ。」
『今、大切なのは金剛寺飛鳥さんの意思だから。』
「それを今からごんちゃんが言おうとしているのに遮るから。」
『結論が遅くて、沈黙は肯定でしょ。』
「なんでもりーのペースで進めないで。」
リーとみゆがものすごい速さで言い合う。
「あ、あの。」
私の言葉に皆が視線を向けた。
「できればやりたいけど、邪魔になるなら大丈夫だよ。」