明晰夢
夢を見ているみたい。
私を救いに来たみゆは更に未知の、更に楽しい世界に連れて行ってくれる。
夢ならば醒めないでほしい。
むしろみゆと会っていない時間がすべて悪夢だったのかもしれない。
「ミユ!やっぱり納得できない!!」
ずっと黙っていたアーイシャが我慢の限界が来たように言葉を吐き出した。
「納得できないって何が?」
その怒りに全くの動揺もなくみゆが返事をした。
「こんな子が私達の会社から出す初めての子なんて我慢ならない!」
「それはまだアーイシャがごんちゃんの事を……」
「知らない。知らないけど。」
「よく見て、アーイシャが描いた子とそっくりでしょ。」
みゆに唆されアーイシャは自分の事を観察を始めた。それに耐えきれず私は目線を虚空に向けた。
「確かに似ているけど、私が描いた金剛寺飛鳥は目をこんな風に泳がせない!」
「ごんちゃんは人見知りだからなー」
「そもそも見た目なんてなんでもいいでしょ。VTuberなんだから需要なのは中身でしょ!」
「そうだね。」
「この子は声も何かごにょごにょ喋っているし、何かやり遂げそうな気迫も感じられない」
「うーん。そんなことないけどな。」
「そんなことある!それとも何か特技があったりするの?」
「ごんちゃん。」
「は、はひ!」
唐突に私に声が掛かり思わず声が上擦る。
「ごんちゃんってなんか特技あるっけ。」
「な、ないです……」
今にも消えてなくなりたいかのように小声で答えた。
「アイちゃん。無いみたいだね。」
弾けるような笑顔でみゆは答えた。