5.三人組
「さっさと見つけて帰ろう」
僕は気を取り直して採取に取り掛かる。
「さてと……、う~ん…… やっぱりどれが薬草なのかさっぱり見分けがつかないや」
一応、依頼書に薬草の形状が書かれているが、そこら中に多種多様な草が生えており、そう簡単に見わけがつきそうになかった。ゲームのように分かりやすく、これが薬草です、といった目印がついていると楽なんだけどな。
「仕方ない。片っ端から鑑定していくか」
えっと、これはどうかな?
僕は片膝をつき、両手をつくような形で身近な草にやや顔を近づけ鑑定を使う。
『雑草』
残念。こっちはどうかな。僕は近くの草を順番に鑑定していく。
『雑草』
『雑草』
『雑草』
『弱毒草』――軽微な毒がある。口にすれば数時間微弱な毒状態になる。――
うん。だめだ。結構面倒だし、効率が悪い。それに最後の弱毒草って、そんなのもあるんだ。気を付けよ。
よく考えたら大体こういうのって、一定範囲をまとめて鑑定できるんじゃないかな。
物は試しと一番近くの草が群生している場所をまとめて鑑定する。
すると、一斉に情報が入ってくる。
『雑草』
『薬草』 ――回復効果がある。口にするか傷に直接あてることで傷を癒し、HPを回復する――
『雑草』
『雑草』
……
……
やった! できた! それに幸先よく薬草もあった。大体まとめて鑑定できる範囲は、1メール四方ぐらいかな。それにしても薬草がまとめて群生してるわけじゃないんだな。鑑定のない他の冒険者はどうしてるのかな。
僕は採取セットを取り出し、慣れない手つきで薬草を採取する。
よし。これならすぐに必要数を集められそうだ。
その後は楽勝だった。
一定範囲を鑑定しては薬草類を採取していく。
二度ほどスライムとホーンラビットが木々の間から出てきて驚いたけど、前回の反省を活かし、素早く逃げた。相手も特に追ってこなかったので戦闘にはならなかった。
雑魚モンスターから逃げるなんて恰好悪いけど、今は我慢、と自分に言い聞かせている。
攻撃スキルを手に入れるまでの辛抱だ。
ちなみに、薬草だけでなく、依頼対象のキュアハーブ、その他マジックハーブなどのポーションの材料となるハーブもいくつか見つけた。
これらも袋に入るだけ取得した。10本からの依頼だったけど、多い分には追加報酬が出るので問題ない。
よし、そろそろ帰ろうかな。そう思った時だった。
「にゃー! どれが薬草かなんて見わけがつかないのにゃ!」
「ハハハ、本当だよね。しょうがない。それっぽいのをまとめて持っていこうか」
「ん~、そうね~、ちょっとわからないわね~」
夢中で採取していたので気が付かなかった。近くに他の冒険者パーティーがいるようだ。
こんな近くに来るまで気づかないなんて……。気配察知なんかのスキルがないと危ないな。というか無くても気を付けないと。少し肝を冷やす。
「ったく、だから採取なんてやめようって言ったのにゃ」
ロングソードと盾を背負った猫耳の少女が不満を漏らす。茶色い髪にクリっとした大きい目の美少女。恰好からして戦士なのだろう。
「え~、またその話? ランクあげるには採取クエストもやらなきゃって、ハンナも納得したでしょ?」
猫耳の少女に黒髪のポニーテールの少女が答える。
胸元が開いたシャツに短パン、露出高めの軽装備にダガーを腰にぶら下げている。恰好からしてシーフなんじゃないと思う。こちらの娘も整った顔をしている。何より巨乳だ。
「そうにゃけど~」
「ん~、そう。サシャの言う通り。ハンナが細かいこと苦手なのは知ってる。でも…、やらなきゃダメ」
口を尖らせて不満げなハンナと呼ばれた猫耳の少女に、青いローブに水色の髪の少女がのんびりした口調で苦言を呈す。
たれ目でおっとりとした印象を受けるがこの娘も美少女だ。恰好からして魔法使いなのだろう。
「はぁ~、わかったのにゃ…、キャロルの言う通りにゃ。ん…、誰にゃ!?」
やばっ!! 様子を見ていた僕にハンナが気づく。