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20.旨い話

 どうしてこうなった?


 僕は今、星宮の部屋に来ている。


 あの後、訳の分からぬまま、星宮に誘われるがままに部屋まで来てしまった。


 何が起こったんだ?


 とりあえず、椅子に座り、深呼吸をする。


 スー、ハー、スー、ハー


 うん。まずは落ち着かないと。


 キョロキョロしすぎて挙動不審だと思われたらヤバい。


 そうだ。落ち着いていて状況を確認しないと。


 星宮は一体何を考えているんだろう?


 かくいう星宮というと部屋に入るなり、そのままベッドに寝ころび「はぁ~、疲れた~ ちょっと飲みすぎたかな~」などと言いながら寛いでいる。


 うん。状況について行けない。


「ねぇ」


「ひゃい! って、えっ、あっ、はい! なんでしょう!」


 慌てて返事をしたら噛むし、敬語になってしまった。落ち着け、驚きすぎだ。自分に言い聞かせる。


「どうしてそんな離れたところに座ってるの? こっち来て」


 星宮はそう言うと僕の腕を引っ張り、星宮の横、ベットの隣に座らせる。


 何この展開? おかしくない?


「こうしたかったんでしょ?」

 

 戸惑う僕をよそに星宮はそう言って僕を引っ張り、二人はベッドに重なるように倒れこんだ。


 星宮の顔が僕の顔の目の前にある。


 息がかかるぐらい近くに。


 星宮が潤んだ瞳で僕を見つめている。


 ヤバい。どうしよう? 心臓がバクバクする。


 これって、そういうことだよね?


 僕は星宮の目を見つめながら、そっと彼女の肩に手を回す。


 ……


 ……震えてる?


 一瞬で思考が切り替わる。


「だめだよ! こういうのは好きな人とするものだ!」


 危ない。流されそうだった。僕は慌てて身体を起こす。


「――別にいいよ。私としたいんでしょ?」


「……いや、よくないよ。だって……、星宮、震えてるじゃないか」


 星宮の言葉にちょっと気持ちが揺らぎそうになったけど、きっぱりと言い切る。


「えっ、あぁ、久しぶりだから少し緊張しちゃったのかな」


 何でもないことのように言うが、その声も少し震えている。


「いや、わかってるから。チャラそうとか、派手そうな感じに見えたりするけど、星宮が本当はそうじゃないのは、わかってるから」


「いいよ。そういう綺麗ごとは。私のことなんてわからないでしょ? 召喚されてからここまで、皆そうだった。祥吾のやつもそうだし、声掛けてくる冒険者の男共もみんなそうだった。すぐヤレそうとか、軽そうとか私をそういう目でしか見てなかった」


「……わかるよ。短い期間かもしれないけど、一緒にいたからわかるよ。全てがわかる、なんてことは言えないけど、わかることもあるから。それに――」


「それに?」


「日本に帰りたいんじゃないの?」


「えっ?」


「必死になってるのも、気持ちが張り詰めてるのも日本に早く帰りたいからでしょ? そんなこと無理にしなくても僕は協力するよ。本当は内緒なんだけど、僕、『鑑定』のスキルがあるんだ」


「なっ! 鑑定ってあの何でもわかるやつ? もしかして、それで私を!?」


「うん。そうだよ。悪いんだけど、このスキルで星宮のステータスを見させてもらったんだ」


「えーっ! 見ちゃったの! 私が処女とか、誰とも付き合ったことないとか!」


「えっ、いや、『鑑定』じゃ、そういったことはわからないけど……」


「えっ……」


 二人の間に気まずい沈黙が流れる。


 しばらくすると星宮が突如大声をあげる。


「うわー、騙された! 恥ずかしい! 今のは忘れて! 忘れてね!」


 星宮がそのまま両手をバタバタさせて、ベッドの上で悶えている。


「う、うん。だ、大丈夫。僕は何も聞いてないよ」


 さりげなく、とんでもないことを聞いてしまった。


「それで、鑑定で何がわかったの?」


 真っ赤になった顔を両手で隠しながら星宮が問いかけてくる。


「あぁ、鑑定で見たのは

 

  ――

 

  ■称号

   苦労人

   親代わり

   弟妹思い

 

  ――


  だよ。

  細かい事情は勿論わからないけど、称号から色々察しがついてしまってさ。弟さん、妹さんがいるんだよね? 星宮が面倒見てるんだよね? そりゃ、弟さん妹さん心配だよな、帰りたいよなって、そう思ったんだ」

 

 …


 星宮から返事はない。俯き、じっと佇んでいる。


「星宮?」


 そっと顔を覗きこむと彼女は涙を流していた。


「帰りたい。あの子達のところに帰りたい。私がいないと……」


「星宮! 大丈夫、とは言えないし、僕じゃ頼りないかもしれないけど、帰る方法を一緒に探さないか?」


 しばらく沈黙が続いた後、星宮がボソッと呟くように問いかける。


「……なんで? 同情したの?」


「同情、していないわけじゃないけど、僕だって日本に帰りたいんだ!! 僕だって怒ってるんだ!! こんな不便な世界に無理やり連れてこられて、勇者じゃないって王宮を追い出されて……」


 そう喋っていたら何だか腹が立ってきた。こちらの世界に来て味わってきた理不尽が思い出される。うん。僕も怒るべきだ。


「ふ~ん。目的は同じってわけね。いいわ! 協力しましょう!」


 星宮が立ち上がり、握手を求める形で手を差し出す。


「あぁ」


 僕はがっちりとその手を握る。


「正式にパーティー結成ね!、パーティー『にゃんにゃんガンナーズ』の始まりよ!」


「おう! ん? ごめん。今、なんて?」


「だから正式にパーティーを組みましょうって話でしょ? もうしっかりしてよ!」


「いや、それはOKなんだけど。そこじゃなくて…… にやんにゃん? ん?」


「あぁ、『にゃんにゃんガンナーズ』、パーティー名よ。私猫が好きだから! タケルを篭絡した後、パーティーを組もうと思って考えておいたの。カワイイでしょ?」


「えぇ~ 篭絡って…… それにパーティー名はもうちょっと考えようか? 僕はガンナーじゃないし」


「えーっ! なんでよ!」


「いやいや、なんでとかないでしょ? 折角二人なんだしさ! 一緒に考えさせてよ」


「ん~、まぁ、そっか。二人だしね。もう、わかったわよ。一緒に考えましょ! じゃ、私もう寝るから出てって」


「えっ、ちょっと、急じゃない?」


 抗議も空しく、星宮に背中を押され部屋から追い出される。


 と、それは部屋から出るタイミングだった。


「ありがとね。タケルなら良かったのに」


 耳元で星宮がそっと囁くように呟く。


 えっ、慌てて振り返ると、「おやすみ」とドアを閉められてしまった。


「お、おやすみ」


 どういうこと? あ~、モヤモヤする。


 読んでいただきありがとうございます。


 ここで一章終了です。次から二章になります。早くS級にランクアップしてタイトル詐欺にならないようにしなくてはですね。プロットはできてるんですが、遅筆ですみません。


 さて、本作品を面白い、応援してもいい、と思っていただけましたら、下に★評価がありますので、こちらで評価いただけると嬉しいです。ブックマークや感想も是非是非お願いします。


 次話頑張ろうと更新の励みになります。よろしくお願いいたします

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