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18.祝杯


「かんぱぁ~い!」

「乾杯!」


 ゴン、と、お互いの杯を軽くぶつけると、星宮は勢いよく、エールを飲み干した。


「はぁ~、美味しい! お姉さん! エールおかわり! ほらっ! タケルもジャンジャン飲みなさいよ!」


「あぁ、そうだね」


 僕は、星宮のテンションに気圧されつつ、彼女にあわせて頷く。


 テンション高いなぁ。


 僕はジュースなんだけど……


 まぁ。こんな日だし、飲むでしょっ、てのはわかるけどさ。


 僕と星宮はダンジョンを出て冒険者ギルドに報告した後、冒険者の御用達しである酒場兼食事処である全力満腹亭で祝杯を交わしている。


「折角だし、もっと高級店にしようよ」と星宮に提案してみたのだけど、格式ばったところよりも冒険者らしい店がいい、という星宮の希望を取り入れ、めでたく全力満腹亭がチョイスされた。


「おお、タケル! ランクアップしたんだって? おめでとう!」


 顔なじみのいかつい顔のおっさん冒険者が僕を見つけると声を掛けてくれた。彼は、顔が怖いが面倒見がよく、新人冒険者に色々と世話を焼いてくれる。


「えっ、あぁ、そうなんですよ。ありがとうございます。耳が早いですね! もう知ってるんですね?」


「まぁな! というか、ギルドじゃ、その話題で持ち切りだ。受付のエマ嬢も満面の笑みで、凄い喜んでたぞ!」


「ははは。参ったな。エマさんにはお世話になってますからね。喜んでくれてるなら、僕も嬉しいです」

 

 がはははっと、その話の流れでおっさんに背中をバシバシと叩かれる。ステータスが上がる前の僕だったら相当痛かっただろうな。


 やれやれ、もう大抵の冒険者には知られてしまったんだろうなぁ。


 守秘義務という概念がないわけじゃないが、ダンジョンに挑んでいた冒険者が多かったこともあって、ダンジョンが攻略されたことは街中にすぐに知れ渡ったようだった。そもそもこの手の話題は注目度が高いこともあり、隠そうと思っても、あっ、という間に広がるものだ。



「あぁ~、くそっ!! やられた!」


 勇者三上祥吾は、そう言って頭を抱え、掻き毟る。


「ふふふ、残念でしたね」


 何度も繰り返されているセリフにもかかわらず、ユーリ王女は笑顔で三上に相槌を打つ。


「本当だよ。俺としたことが、こんなミスを犯すなんて」


「まぁ。いいじゃないですか。ダンジョンを先に攻略するという勝負には勝ったんですからね。ダンジョンが攻略されて国王も民も喜んでいますよ」


 そう。ダンジョン攻略勝負はあっさりと勇者パーティーに軍配が上がったのだ。


 タケル達と別れた後、それはあっさりと、何の苦労も苦戦も接戦となるようなこともなく、勇者パーティーが電光石火のスピードで最深部のボスを倒し、ダンジョンコアを停止させたのだ。では、何を彼が悔しがっているのかというと、


「あぁ、そうだな。でも、くやしいなぁ。しっかりと負けた時のペナルティを決めておけばよかった」


 ということだ。


「過ぎたことを言っても仕方がないじゃないか。後から四の五の言うのは勇者らしくないぞ?」


 愚痴を繰り返す三上に、エルザも呆れた顔をする。


「でもなぁ~、エルザはそう言うが、あの時のあかりのセリフを覚えているか? 腹立たしいったらありゃしない!」


 ダンジョン攻略後、三上が意気揚々と星宮に話しかけたところ


『ふ~ん。負けたわ。それで? 何? なんか用なの? 私は負けたらパーティーに戻るなんて約束してないけど』

 

 と冷たくあしらわれたのだ。


「そうですね。やられちゃいましたね。まぁまぁ、アカリさんが望まれてないんですからもういいじゃないですか」


「そうだぞ! ショウゴ! アカリのことは、もういいんじゃないか? 勇者にはやらなければならないことが沢山あるじゃないか! 助けを待っている民がたくさんいるんだぞ!」


「そう。ショウゴは人気者」


「ん…… そうかぁ」


 そうだ、そうだ、とパーティーの美少女三人に説得され、三上はコロッと機嫌を良くする。


「あぁ、そうだったな! つまらない小さなことを気にするのは俺らしくないな!! よしっ! 次に行くか! ユーリ次の行く先はどこだ?」


「えっと、次はですね……」



読んでいただきありがとうございます。更新遅くてすみませんでした。


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