17.宣言
「どういうことだ?」
三上が怪訝な顔で僕を見た後、星宮に問いかける。
いやいや、その質問おかしいでしょ。なんで今存在に気づいたみたいになってるの? はじめから僕いたでしょ。逆に何だと思ったの? 本当に僕の存在に気づいてなかったの?
ダンジョンだよ。星宮一人で来てるわけないじゃないか。
はぁ。言っても仕方ない。本当に女性しか眼中にないんだろうなぁ。勇者様は。
「何度も言わせないで! 私は彼とダンジョンを攻略しているの!」
星宮は、そう言うと僕の腕を掴み、胸を押し付ける形で腕を組んでくる。三上への当てつけに、やってるのはわかってるけど、ちょっとドキッとする。
あ、でもユーリ王女が見てるから止めて欲しいかも。
「なっ! なんだよ、そいつ! 俺よりそんなモブっぽいやつがいいっていうのかよ!?」
三上が明らかに狼狽えて不機嫌な声で、星宮を問い詰める。
「そうよ! タケルは凄いんだから!」
星宮が、ぎゅっと、腕を組む力を強める。
うん。正直ドギマギしてます。
こんな漫画のようなシーンが僕にもあるなんて……、でもこれ完全に当て馬役だよね?
「だから誰だよ! そいつ! あかり! わかってんだよ! 俺に焼きもち焼かせようとしてるんだろ?」
「馬鹿言わないで! 別に私はあんたの彼女じゃないんだから、彼氏みたいなこと言わないで! 気持ち悪い!」
「気、気持ち悪い!? この俺が!!?」
そんなこと言われると思ってなかったのか、三上が目を白黒させる。
「そうよ! あんた大学でもモテなかったでしょ? その発言が気持ち悪いからよ。それが異世界に来てチヤホヤされて勘違いしちゃって、馬鹿みたい!」
「はぁ、なんだよ! それ! おい! おまえも何とか言えよ! だいたい誰なんだよ!おまえは!?」
星宮の予想外の反撃にたじろぎ、三上が僕に矛先を変える。
げっ! 僕ですか? 飛ばっちりだなぁ。
「えっと…… 僕は」
「タケル様。ですよね?」
そう言ってユーリ王女が、答えられずに困っている僕に微笑みかけてくれた。
そして、そのまま僕と三上との間に入るように前にでる。
「山本タケル様ですよ。ショウゴ様」
「ん? 知らないな。ユーリの知り合いなのか?」
「ショウゴ様とアカリ様と一緒に召喚に応じていただいた勇者様のお一人です」
「ふーん、そう言われれば……、こんなやついたような気がするな」
三上が値踏みするように上から下と僕の全身を見てくる。
「えっと……」
い、居心地が悪い。
「確かこいつ碌なスキルがなくて、王宮から追い出されたんじゃなかったか?」
三上がニっと歯を見せて笑い、ドヤ顔で僕に詰め寄る。
「あっ、その……」
「ははは! 笑わせるなよ! あかり! なんの冗談だ? この勇者である俺とそのただ巻き込まれて召喚されただけのモブ野郎を比べようっていうのか?」
「そうよ! あんたよりタケルの方が凄いんだから!」
「へぇ~、面白いことを言うなぁ」
ヒートアップした星宮と三上が僕そっちのけで睨み合う。僕、何も言ってないんだけど。
「いいわ! こうしましょう! 私達パーティーとあんた達パーティー、どっちが先にこのダンジョンを攻略するか勝負しましょう!」
「ほう~! 面白れぇ~! いいだろう! その勝負乗った! 勇者であるこの俺に挑んでくるんだ、覚悟はできてるんだろうな!?」
「当然よ!」
勝手に話が進んでいく。
「おい! そっちのおまえも二言はねぇだろうな!?」
三上が僕に問いかける。
うわぁ、勇者と争う?
とんでもないよ。あんな化物に勝てるわけがない。争っても仕方ない、揉め事は避けるべきだ。謝って無しにしてもらおう。
「いいよ。やるよ」
考えていたこととは裏腹に僕の口から出たのはそんな言葉だった。
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