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16.勇者一行

「祥吾……」


 そう呟いた星宮の視線の先には僕らと一緒に異世界召喚された勇者、三上祥吾みかみしょうごが立っていた。


 立派な鎧を身に着け、腰には煌びやかな剣を提げている。召喚された時は、今どきの大学生といった感じだったが、今や正統派勇者といった雰囲気を醸し出している。


「へぇ~、銃、当たるようになったんだな」


 突然の勇者一行の登場に思考が追いつかず、戸惑う僕らに構わず、三上が気さくな感じで星宮に声をかける。


 どうやらビックスライムを倒すところを見られていたみたいだ。


「なんだよ。どうした? 釣れないな。返事ぐらいしてくれよ」


「お久しぶりです。こんなところでお会いするとは思ってもいませんでしたが、お元気そうですね」


 星宮が言葉を返せずにいると、勇者パーティーの一人、スペード王国の王女、ユーリ・スペードが場を和ませるような穏やかな口調で僕らに微笑みかけてくれた。


 ユーリ王女は本当に優しい。


「ふむふむ。腕を上げられたようだな。アカリはエレメンタルショットの扱いに苦労していたからな」


「良かった。アカリは努力家。頑張っていたのは知っていた」


 残りの勇者パーティーの二人、金髪のショートヘアの王宮第二騎士団団長、エリザ・ランスロットと燃えるような赤い髪で深紅のローブを身に纏った主席宮廷魔法使いシャイナ・ハスルザードも星宮を称えながら、会話に加わる。


 腕をあげたというか、星宮は眼鏡を掛けただけなんだけどなぁ。流石にこの場でそんなことは口にしないけど。


「――えぇ、久しぶりね」


 星宮がようやく落ち着きを取り戻し、彼らに向き合う。


「ふふふ。だが、本当に良かった。これでパーティーに戻ってこられるな!」


「えっ」


 エリザの一言に星宮が虚を疲れたような顔をする。


「えぇ、スキルを使いこなせるようになったんですから。誰にも文句は言わせません」


「ん! ライバルが増えるのは嫌だけど、アカリが戻ってくるのは嬉しい」


「えっ、えっ、ちょ……」


「ははは! なんだ、あかり! そんなにパーティーに戻りたかったのか? しょうがないなぁ。モテる男は辛いぜ! 別に意地悪したわけじゃないんだけどなぁ。おまえのためを思っての決断だったんだぞ!」


「なっ!? ち、違う! 誰もそんなこと言ってないでしょ!」


「ははは! 照れるな。照れるな。おまえの気持ちはわかってるから!」


「うんうん。一緒に頑張っていこうではないか」


「歓迎する。でも、ショウゴの件は別だから」


 何が何だかわからないうちに、話が進んでいく。どうやら星宮が勇者パーティーに復帰することで話が纏まったようだ。


 どうしよう?


 僕、完全に蚊帳の外なんだけど。正に空気だ。みんなに見えてないのかな?


 まぁ、いいさ。よくあることだ。


 星宮もパーティーに戻れるなら良かったじゃないか。これで慌ててダンジョンを攻略しなくてもよくなったし、ハンナ達のパーティーに入れてもらう必要もなくなった。万事解決じゃないか。


 あ、でも、僕はここから一人で帰らなきゃなのかな?


 ちょっと一人だと道中危ういんだけど……


 仕方ない。流石にこの空気だと出口まで送ってくれたりはしないだろうなぁ。


 あ、そういえば、折角だし、勇者を鑑定しておこう。


 【鑑定】

―――――――――――――――――――――――――

名前  : 三上 祥吾

種族  : ヒューマン

年齢  : 19歳

職業  : 勇者

HP   : 320

MP   : 240

SP   : 250

力   : 245

魔力  : 310

素早さ : 210

身の守り: 255

知力  : 240

スタミナ: 210

運   : 150


■スキル

 異世界言語

 剣術(中級)

 光魔法(上級)

 火魔法(中級)

 水魔法(中級)

 風魔法(中級)

 土魔法(中級)


■ユニークスキル

 逆境のヒーロー


■称号

 異世界の勇者

 聖剣保持者 

※聖剣クルタナ保持


―――――――――――――――――――――――――


おお! 流石勇者! なんてステータスだ!


星宮も大概だったが、それ以上じゃないか!


ほとんどのステータスが200~300代で、魔法も五属性も使える……


逆立ちしても歯が立ちそうにないな。


周りがチヤホヤするのも、本人が調子に乗るのも頷ける。


こんなハイステータスだったら僕でも自分が主人公だと思うだろうなぁ。


それにこのユニークスキル。

―――――――――――――――――――――――――

■逆境のヒーロー

ピンチや逆境に遭遇すると発動。HPMPなど全ステータスが回復し、一定時間、全てのステータスが三倍になる。

―――――――――――――――――――――――――


ピンチで全回復して強くなる!? 反則だろ?

だめだな。これと敵対しちゃだめだ。

そっと、この場からいなくなろう。星宮にパパッと別れを告げて帰ろう。 


と思った時だった。


「だから! 勝手に話を進めないで!」


星宮の声がフロアに響く。存外大きな声に少し驚く。


「なんだ! どうした? あかり」


 星宮の剣幕に三上が驚いた表情を見せる。


「パーティーには戻らないわ! 誰も戻りたいなんて言ってない!」


「おいおい。 本当にどうしたんだよ? なんでそんなこと……」


「あぁ、パーティーを外されたことについて、まだ思うことがあるのだな? アカリの気持ちを考えれば仕方ないことだが――」


「あぁ、そうか! いや、悪かったけど、しょうがないじゃないか! おまえだって納得してただろ? それにもう過去のことだろ?」


三上が我儘言うなよ、といった感じで星宮の肩に手を回すが、星宮に乱暴に振り払われる。


「なっ! 私がどんな思いをしたか!」


「悪かったって! おまえのことを思ってのことだったんだって。いい加減機嫌を直してさ! 一緒に行こうぜ? 先回りしてダンジョンに来てたんだろ? 意地を張るなよ」


おお、流石勇者打たれ強いな。


「しつこい! 私はあなた達とは一緒に行かない! 私は彼とパーティーを組んでいるの!」


へ?


全員の視線が僕に集まる。


き、気まずい。


読んでいただきありがとうございます。


毎度のお願いで恐縮ですが、この作品を面白い、応援してもいい、思っていただけましたら下に★評価がありますので、こちらで評価いただけると嬉しいです。更新の励みになります。


よかったらよろしくお願いいたします。

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