15.フロアボス
「このっ!」
ダーンッ! ダーンッ!
星宮が銃を連射する。
奴は、避けることもなく直進してくる。
勿論、星宮の銃弾は当たらない。
確かに相手の動きは素早いけど、的があれだけ大きいのになんで故当たらないんだろう?
「ファイヤーボール!」
バーン!!!
火炎の玉が命中し弾ける。
が、表面を焦がした程度で大したダメージになっていないようだ。少し動きを阻害しただけで、足止めにもならない。
くそ。だめか。
僕の初級魔法じゃダメージを与えらないか……
「はっ!」
ドガッ!!
奴が近づいてきたところを、星宮が殴り飛ばす。
鮮やかなその動きは、もはや熟練の格闘家である。洗練されていて美しさを感じる。それ用の装備にすればもっと攻撃力を出せるのに……。勿体ない。
強烈な一撃を受けたビックスライムは、その巨体を吹っ飛ばされ、壁に衝突し、バウンドする。
ただ、バウンドが止まった後、何事もなかったようにこちらに再度向かってくる。
派手に飛んでいったけど、どうやら大したダメージは受けなかったようだ。
う~ん。まいったな。どうやら僕らとは相性が悪いようだ。
現在、僕達は五階のフロアボスと交戦中である。
フロアボスの鑑定結果はこの通り。
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■ビックスライム
通常のスライムの数倍の大きさのスライム。
ただ、その強さは通常のスライムとは比べようもない。
打撃無効、魔法耐性スキルがあり、自動回復スキルまで保持している。
一定以上の攻撃火力がないと倒せない。中級以上の冒険者でも苦戦する。
種族 : スライム
HP : 120
MP : 20
SP : 30
力 : 30
魔力 : 30
素早さ : 22
身の守り: 20
知力 : 18
スタミナ: 20
運 : 2
■スキル
溶解
打撃無効(中)
魔法耐性(小)
自動回復(小)
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この通り、打撃と魔法に耐性があるようで、絶賛苦戦中です。
五階層に降りると正面にボス部屋があり、ここまで苦戦することもなかった僕らは迷うことなくフロアボスに挑んだ。ここまで星宮の圧倒的なステータスを便りに順調に進んでいたけど、星宮の打撃が効かないとなると少々分が悪い。
「ダークボルト!」
僕はファイヤーボールが効かないのならと覚えたての闇魔法をぶつける!
バーン!
漆黒のエネルギー弾が、ビックスライムに当たり弾ける。ビックスライムが爆発に吹き飛ばされ、表面に少し焦げたような跡ができる。残念ながら、こちらもほぼダメージを与えられていないようだ
ちょっと、打つ手がなくなってきたかも。
「ねぇ! 僕の魔法は効かないみたいだ。何か対策とかある?」
「そうね―― この弾が当たればいいんだけど……」
うん。それは、いい案は無いってことだよね。
「はぁ~、そうだよね」
「ちょっと、溜息つかないでよ! 私だって一生懸命やってるんだから!」
頭を抱える僕に星宮が怒った顔で抗議してくる。
「ごめん。そうだよね。でも、なんで全然関係ないところ撃っちゃうの? 銃の性能のせいとかなのかな? もしかして照準機能が凄くシビアとか?」
「う~ん。そういうのは、ちょっとわかんないんだけど…… 私、近視なのよね」
「はっ?」
「いや、だから遠くはよく見えなくて、ぼやけちゃうというか……」
「えっ!! ちょっと待って」
僕は慌てて、自分のカバンから眼鏡を出し、星宮に差し出す。
「えっ、これ?」
「いいからこれかけて撃ってみて!」
「えっ、でも……」
「いいから! もうこっちに向かって来てるよ!」
観念したのか、星宮は仕方ないとばかりに眼鏡をかける。
全く、なんで眼鏡をかけるだけで、そんなに躊躇するんだよ。おかしいだろ。
「あっ、よく見える」
そう呟くと星宮はビックスライムに向けて銃を構える。
ダン! ダッダーン!
銃弾がビックスライムを撃ち抜き、ビックスライムが弾け飛ぶ。
「やっ、やったー! やったわ! 当たったわ!」
「凄い! 凄い!」
星宮と僕が歓声をあげる。
「あらら、先を越されてしまったか」
突然の後方からの声に振り向く。
「よう! あかり久しぶり! て、それほどでもないか?」
そこには、同じく日本から召喚された勇者、三上祥吾とそのパーティーメンバーがいた。
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