13.打ち合わせ結果
「準備はこんなものね! さ、ダンジョンに行くわよ!」
という星宮の発言の後、一通りの装備などを買い揃えた僕らはダンジョンに来ている。
一通りといっても主に食糧や水筒などの冒険者なら普段から常備していそうな物を買っただけで、本格的なダンジョン攻略を考えたら全くもって準備不足なんだと思う。まぁ、無いよりはマシということで受け入れている。
あとは、星宮がマントを調達している。彼女は日本の女の子らしい露出が少し多めな恰好だったので「流石に軽装すぎじゃない?」と伝えたところ、意外にも「それもそうね」とすんなり受け入れてくれた。
「全力満腹亭」での話し合いが終わってから、少し僕の話を聞いてくれるようになったように思う。
うん。話し合いは大事だね。
ちなみに、ダンジョンの話だけでなく、僕が王宮を離れた後のことや冒険者をしている事情なんかの情報交換もした。
僕はガチャスキルのことは濁し、追い出されてから冒険者をやっている、頑張って魔法を身につけて、細々と依頼をこなしてランクを上げているんだ、と伝えた。嘘をつかないでいいように、所々詰まりながら話したから相当怪しかっただろうけど、星宮が突っ込んで聞いてくるようなことはなかった。
「へぇー、頑張ってんじゃん」が、星宮の感想だった。
僕が何か隠しているとは思っているようだったけど、あえて聞かないようにしてくれていたんだと思う。まぁ、単純に僕にそこまで興味がないのかもしれないけど。
星宮の方の説明もざっくりしていた。
召喚された後は、勇者パーティーの一員として行動していたそうだ。ちなみに、パーティーメンバーは、僕に紹介状をくれた王女様、第二騎士団団長、宮廷魔術師、勇者、それと星宮の五人で、勇者以外は全員女性という、いわゆるハーレムパーティーだ。
勇者の彼は本当に勇者しているなぁ。
しばらくして、星宮だけ勇者パーティーを離れることになったそうだ。
理由は本人が語らなかったので触れなかった。リア充の方々は僕みたいな陰キャにはわからない複雑な人間関係があるんじゃないかと思う。
ただ、大事な点なので、なぜダンジョン攻略をするのか? なぜそんなに急いでいるのか? という点は聞いておいた。
「そんなのどうでもいいじゃない?」
「いや、良くないよ そこを教えて貰えないと協力しにくいというか、やりづらいよ」
「はぁ、たいした話じゃないわよ。さっきも話した通り、勇者パーティーもダンジョン攻略に来るの。いい? 私はただ勇者達より早く攻略して見せてやりたいの! 彼らより私が優秀だって見せつけてやりたいの! これでいい?」
とのことだった。
うん。パーティーを出るとき何かあったことだけはわかった。
◇
そして、現在、僕らはモンスターと交戦中である。
星宮がユニークスキル「エレメンタルショット」の銃を構え、弾丸を放つ。
ダーンッ! ダーンッ!
銃声が響く。
「くらえ!」
ドガッ!
続け様に星宮はゴブリンを銃のグリップで殴り飛ばす。
「よし! やったわ! どんなもんよ!」
ゴブリンを倒した星宮がドヤ顔で僕に話しかけてくる。
「いやいやいや、ちょっと待って。どういうこと? 何で殴り倒したの?」
「えっ? 近づいてきたから。いいでしょ? 倒したんだから」
そりゃ力のステータスが70もある星宮が殴ればゴブリンなどイチコロだ。
問題はそこじゃない。
弾丸が当たってないのだ。
特段早く動くわけでもないゴブリンに掠りもしていないのだ。
もしかして、彼女が勇者パーティーを外れた理由はそれじゃないのか。
複雑な人間関係なんてなかった。
読んでいただきありがとうございます。
この作品を、面白い、応援してもいい、と思っていただけましたら下に★評価がありますので、こちらで評価いただけると嬉しいです。更新の励みになります。良かったらよろしくお願いいたします。