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10.ダンジョン攻略開始

随分とお待たせしてすみません。

「当たれ!!」


 ダーンッ! ダッダッーン!


 女性の掛け声と共に魔法の弾丸がホーンラビットに向けて放たれる!


 が、ホーンラビットは、これを軽快なステップで鮮やかに躱す。


 そして、そのままステップ踏み、リズムに乗るかのように、こちらに猛然と迫ってくる。


「ちっ! すばしっこい! こっち来るわよ!」


「わかってるよ!」


 僕は、舌打ちをした女性に応えつつ、呪文を唱える。


「――スパイダーネット!!」


 こちらに飛びかかろうとしていたホーンラビットに、白く輝く糸で構成された蜘蛛の巣状の網が放たれる。


 ホーンラビットは瞬時に飛ぶ方向を変え、逃れようとするが包みこむように広がった白い網を躱すことができずに成すすべなく捕縛される。そのまま網から抜け出そうと必死に藻掻くが、粘着性のあるこの糸は動けば動くほど絡みつき、動けなくなっていく。


「よし! よくやったわ! 後は任せなさい!」


 そう叫ぶとその女性は嬉々として手に持った銃をホーンラビットに向ける。


「ちょっと! また美味しいところだけ持ってこうとしないでよ!」


 やれやれ、僕がそう言っても彼女は聞いてくれないだろうけど……


 現在、僕はこの銃を構えている星宮あかりという女性とダンジョンに来ている。


 そう先日発見されたあの新しく出現したダンジョンに!


 なぜ彼女と来ることになったのか? 彼女は何者なのか?


 それは順番に説明させて貰いたい。


 少し時間は遡る。


 



 その日、僕が冒険者ギルドに顔を出すと、揉め事が起きているようで争う声が聞こえてきた。


 声からしてどうやら女性冒険者同士で言い争っているようだ。


「だから! 断るって言ってるの!」


「なんでよ! 女だけのパーティーなんでしょ? 参加資格は満たしていると思うけど? まさか私が男に見えるとでも言いたいの?」


「はぁ? 話を聞いてなかったの? 別に女かどうかじゃなくて、パーティーメンバーは募集していない、って言ってるの!」


「私が入ってあげるって言ってるんだからいいでしょ? こう見えても冒険者ランクはD級よ。あなた達より上なの! 断る理由なんてないでしょ?」


 全く話の通じない相手に黒髪ポニーテールの少女が、こりゃ困ったといった表情を浮かべ、頭を抱え天を仰ぐ。


 あ、この子、前に採取依頼の時に会った子だ。


 確かサシャと言ったかな。


 なるほど。あの時の三人組が明るい茶髪のショートヘアの女性に絡まれているようだ。


「あのねぇ。パーティーメンバーは命を預けることになるんだからランクだけで選んでいるわけじゃないの。一緒にやっていけるか慎重に判断しなきゃいけないの。特に私達は気の合うメンバーで組んでるから他の人を加える気はないの」


「なんでよ! あなた達もダンジョンに行くんでしょ? そう話してたじゃない! 今回発見されたダンジョンはDランク以上が同行しないと入れないのよ! 私がいればダンジョンに入れる。ちょうどいいじゃない!!」


 そう。今回見つかったダンジョンには参加条件がギルドによって設定されたのだ。


 彼女の言う通りDランク以上の冒険者が同行ないと入れないのだ。僕も単独では入れないのでどうしようかなぁ、と考えていたところだったりする。


「ん~、別にすぐに入る必要はない。ランクを上げてから行きたいと言っていた。急がなくていい」


 三人組の一人、水色の髪の少女、確かキャロルだったかな? がのんびりした口調でサシャのフォローに入る。


「そんな悠長なこと言ってる場合じゃないわよ! すぐに攻略されちゃうわよ! 今回のはすぐに攻略されちゃうんだから!!」


 茶髪の女性が凄い剣幕で三人に食って掛かる。


 なんだろう? 彼女、随分と急いでるみたいだ。


「そんなのわからないのにゃ? ダンジョン攻略は早くても数か月かかるのにゃ。時間がかかるものは何年もかかることもあるし、未だに攻略できていないダンジョンだって沢山あるのにゃ」


 三人組の一人獣人のハンナが呆れた顔で尋ねる。


「いいえ! 今回はすぐに攻略されてしまうわ! 何たってあの勇者パーティーが攻略に来るんだから!!」


「うぇっ! えええええぇぇ!」


 僕の大きな声がフロアに響く。


 一斉に視線が僕に集まる。


 あ、こっそり近くで聞いていたのに驚いて声が出てしまった。


 「「「あ!」」」


 「あああぁ! あんた!」


 三人組に、口論をしていた茶髪の女性、一緒に異世界召喚された星宮あかりに気付かれてしまった。


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