猫の日ということで。
「ねぇ、今日って猫の日なんだって」
「猫の日? どういうことなの?」
アケビは、幼馴染のマナと下校中。
不意にそんな話を振られて、あからさまに困惑した。
「だーかーらー! 猫の日なんだって! 二月二十二日! にゃん、にゃんにゃん! しかも今は令和二年でしょ!! まさしく猫の日!!」
「分かったから、そんなに主張しなくていいよ。それにアンタがやってるポーズ、猫じゃなくて兎になってない?」
「細かいことは良いのにゃー! 肉まん奢るのにゃー!」
「関係なくない?」
自由奔放、天真爛漫なマナの勢いに圧倒されながら。
アケビは冷静にツッコミを入れた。
「むぎゅー! アケビは良い匂いがするにゃぁ~!」
「ちょっと、そんなにくっつかないで? 財布が取れないでしょ」
「にゃにゃ! 奢ってくれるのかにゃ!?」
「割り勘。決まってるでしょ?」
「ふにゃぁ~!」
商店街の中華まんを購入し、ベンチに腰掛け食べるアケビとマナ。
「ごろにゃぁんっ!」
「なんで私がアンタに膝枕してあげなきゃならないの?」
そんな折に、マナがアケビの上に。
上目遣いに幼馴染を見上げた彼女は、小首を傾げる。
「いやかにゃ?」
「別に、嫌じゃないけど」
そして問うと、そんな答えが返ってきた。
「すんすん! やっぱり良い匂いにゃ!」
「ちょっと、変なところに顔突っ込まないで!?」
「いいにゃにゃいか、いいにゃにゃいか、アタシとアケビの仲だにゃぁ?」
「もう、うんっ……きゃ!」
「おっとっと、すこしふざけすぎたにゃ」
アケビが肉まんを落とす。
それを見て、マナは申し訳なさそうに自分の肉まんを差し出した。
そして、潤んだ瞳でこう言う。
「食べさせて、あげようかにゃ?」
口に含み、小首を傾げる。
「どうやるのがいいかにゃ?」
呼吸が触れ合う距離まで、近づく。
そして――。
「バカやってんじゃないの」
「ふにゃ!」
――ペチン。
アケビがマナのおでこを叩いた。
「さぁ、帰りましょ」
「ふみゃあ~」
歩き出す二人。
でもマナは気づいていなかった。
普段は冷静沈着な幼馴染の顔が、真っ赤になっていたことを……。