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秋人vs雪風

 なんせこいつらを倒すことができたら一気に二つのスキルが手に入るんだからな。どちらも有能なスキルなので絶対に欲しい。



「貴史、お前はスキルを使ってここから脱出するんだ」

「そんな、兄さんを置いて逃げるなんてできないよ! 僕も一緒に闘う!」

「……まったく、本当によくできた弟だ。分かった、貴史は僕のサポートをしてくれ」

「うん!」



 どこかに逃げられると厄介なので、ここに留まってくれるのは俺としてもありがたい。だが同時に二人の参加者を相手にするのは初、しかもその内の一人はマルチプル。一筋縄ではいきそうにないが、皆の為にもこの闘い、絶対に負けるわけにはいかない。



「では、始めようか」



 雪風が指を鳴らすと同時に、俺と雪風達を隔てていた氷の壁が消失した。これで攻められる――が、それは相手も同じ。



「まずは挨拶代わりだ」



 雪風は頭上に巨大な氷塊を生成し、俺に向けて放った。やはり遠距離攻撃で先手を取ってきたか。俺は【怪力】を発動し、その氷塊を拳で粉砕した。



「お見事。それがこれまで君が【略奪】で奪ってきたスキルの一つというわけか」

「……!!」



 こいつ、俺のスキルを知っている!? 一体何故……!?



「何故僕がそれを知っているのか、だろ? 実は僕が生み出した氷と僕の聴覚は連動してるんだ。つまり氷世界内の大体の音は僕にも伝わっていた。当然、君達の会話もね。君がわざわざ自分のスキルを口にしてくれたおかげさ」



 それで雪風は地中に居ながら俺達の状況を把握できていたのか。そういえば春香に「絶対に【略奪】で奪ってやる」とか宣言してたな俺。迂闊だった。



「強力なスキルだが、それだけに何かしらの発動条件があるはず。そうでなければ僕達はとくにスキルを奪われているはずだからね。これは警戒しておかないと」



 そう言いながら、雪風は自分の周りに無数の氷塊を生成した。先程よりも小さいが、これだけの数となると――



「どうだい? これなら自慢のパワーも意味を成さないだろう。この狭い空間では君に逃げ場はない。ここは僕にとって圧倒的に有利なフィールドなんだよ」



 無数の氷塊が次々と放たれ、俺に襲い掛かる。奴の言う通り、これだけの数を全て対処するのは無理だ。一つ一つの威力は大したことないが、身体の至る所から出血し、着実にダメージは蓄積していく。


 俺は負けじと痛みに耐えながら前進する。だがその先に雪風はいない。



「ふふっ、どこに向かっている? 錯乱して目が眩んでしまったのかな?」



 それは違う。俺の狙いは雪風ではない。俺が向かった先、それは――パン、お菓子、惣菜など、様々な食べ物が置かれたテーブルだった。



「うおおおおお!!」



 俺は凄まじいなスピードでそれらを口の中に放り込んでいく。空腹のあまり、もはや気力だけで立っている状態だった。腹が減っては戦はできない。とにかく今は腹を満たす必要があった。



「「…………」」



 一方の雪風達は、自分達が用意した食べ物が俺によって食らい尽くされていく様を、ただ唖然とした顔で見つめていた。



「ふー。ご馳走様」



 数十秒後、テーブルにあった食べ物は全て俺の胃袋へと消えた。久々のまともなエネルギー摂取に、全身が喜びの声を上げているのが分かる。



「……は、ははは。あまりに突拍子もない行動だったから、ついポカンとしてしまったよ。闘いの最中に人の食べ物を奪うなんて、君にプライドはないのかな?」

「プライド? お前をぶっ倒せるのなら、そんなもん捨ててやるよ」



 身体の奥底から力が漲ってくる。やはり空腹時とは全然違う。



「水を差されてしまったが、再開するよ」



 再び雪風が無数の氷塊を放つ。俺は咄嗟にテーブルを盾代わりにしてそれらを防いだ。そしてそのまま突き進み、雪風の目の前まで近づいたところでテーブルを放り投げ、拳を握った。この距離ならかわせまい!



「!?」



 だが俺が拳を放った瞬間、雪風の姿が消え、代わりに椅子が出現した。その勢いで俺は椅子を粉砕する。これは……!?



「どうした? 僕はここだよ」



 いつの間にか雪風は俺の背後に立っていた。俺は再び拳を放つが、またしても雪風は消え、今度は照明スタンドが出現して俺の拳に粉砕された。そしてさっきまで照明スタンドが置かれていた場所に雪風が移動している。



「やれやれ、無闇に物を壊すのはやめてくれないかな?」



 そう言って雪風は自らの拳に氷を纏わせると、俺に向かって一冊の本を投げた。一体何を――まさか!


 気付いた時にはもう遅かった。その本と雪風の位置が入れ替わり、瞬時に雪風が空中に現れた。



「がはっ!!」



 防御が間に合わず、俺は雪風の氷の拳をまともに喰らい、床を転がった。



「さっきのお返しだ。あ、汚れるのは嫌だから吐いたりしないでよ?」

「……心配、すんな」



 今の一撃は効いたが、この程度で音を上げるほどヤワではない。俺はすぐさま立ち上がった。



「……弟のスキルか」

「その通り。優秀なスキルだろう? 見事なサポートだったよ貴史。発動タイミングもバッチリだ」

「あ、ありがとう兄さん」



 事あるごとに弟を褒めやがって。ブラコンかこいつは。



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