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開き直り

「くそっ……!!」



 思わず俺は壁を殴った。同一の参加者に二度以上痣が反応することはないので、もう痣の反応を利用して雪風を探し出すという方法は使えなくなった。そもそも雪風がいつでも瞬間移動できるのなら、この方法は最初から意味を成さなかったことになる。


 一体どうすればいい? 膨大な氷を操れるだけでなく瞬間移動まで使える敵を、どうすれば捕らえられる……!?




  ☆




 それから何の進展もないまま、氷の牢獄の出現から五日が経過した。生徒達の表情はすっかり絶望の色に染まり、もはやほとんど言葉も発さなくなっていた。


 念のため俺達は今でも学校の敷地内の巡回を続けていた。もはや無駄な行動だと思われても仕方ないが、どうせ他にやることもない。ずっと屋内に閉じこもっていたら身体が鈍りそうだしな。この寒さはしんどいが……。


 前に真冬は「これだけの氷を外部から維持するのは難しいはず」みたいなことを言っていた。それが本当なら、たとえ雪風が瞬間移動を使えたとしても、この氷の監獄からは出られないことになる。となると、やはり雪風は学校の敷地内のどこかにいると考えていいだろう。


 しかしその場合、雪風も俺達と同じ環境下に置かれていることになるので、雪風にとっても過酷な状況のはずだ。予めどこかに自分専用の部屋でも用意してそこに大量の食糧を持ち込んでいたら話は別だが、そんな部屋があったらとっくに見つけている。まあ、どれも仮説に過ぎないわけだが……。


 なんにせよ雪風も転生杯の参加者である以上、いずれ俺達を殺すつもりのはず。他の参加者を脱落させて最後まで生き残ること、それが転生杯のルールなのだから。雪風は俺達を殺す為に必ず姿を現す。その時を狙うしかない。


 と言っても、これはあくまで理想論だ。おそらく雪風には俺達と正面から闘うつもりなどない。俺達が全員餓死するまで、姿を現す気も、氷の牢獄を解く気もないと考えた方がいい。雪風を捕らえるのが先か、餓死するのが先か。これはそういう勝負だ。




 同日の夜、皆が寝静まった頃。俺が校舎の近くを歩いていると、遠くに一つの怪しげな人影が見えた。あいつ、石神か? こんな時間に何をしてるんだ。やけに周りを警戒しているように見えるが……。


 まさかと思い、俺は石神の後をつける。俺の予想通り、石神が向かったのは食材が保管されている倉庫だった。大きめの石を抱え、今にも倉庫の窓を割ろうとしている。



「石神!!」

「っ!?」



 俺の声に驚いたようで、石神は持っていた石を地面に落っことした。



「つ、月坂……!!」

「お前、そこで何をしてるんだ」



 明らかに動揺した様子で、石神は後退る。



「た、ただの散歩だよ」

「散歩、ねえ。俺には倉庫に侵入して食材を盗み出そうとしているようにしか見えなかったけどな」

「……っ!! う、うるせえ!! 俺はもう腹が減りすぎて限界なんだよ!!」



 開き直りやがった。いっそ清々しいな。



「腹が減ってるのは皆も同じだ。言ったよな、今は皆で協力し合う時だって。お前が食材を盗んで腹を満たせば、配給分の食べ物が更に減って皆がますます苦しむことになる。それでいいのか?」

「ああいいね!! 他の奴等なんざ知ったこっちゃねえ!! てめえは邪魔すんな!!」



 石神が再び窓を割ろうと石を拾い上げる。二日前に力の差を思い知らせたはずだが、どうやらそれだけでは足りなかったようだ。


 俺は【怪力】を発動し、近くに立っていた樹木の幹に拳を叩きつける。その樹木は真っ二つに折れ、大きな音と共に地面に倒れた。



「なん……!?」



 驚愕の表情で動きを止める石神。こんなことをしたら普通の人間ではないと疑われるリスクはあるが、この手の輩はこうでもしないと言うことを聞かないだろう。



「お前もこうなりたくなければ、今すぐここから去れ」

「くっ……くそ!!」



 石神は倉庫の前から去っていった。まさか巡回がこんな形で役立つことになるとはな。石神以外にも食材を盗み出そうとする奴は出てくるかもしれないし、この周辺は特に注意を払った方がよさそうだ。




  ☆




「くそっ!! くそっ!! くそがあ!!」



 食材の強奪を秋人に阻止された石神は、その腹いせに校舎の玄関前にある校長の石像を蹴りまくっていた。



「月坂秋人……絶対許さねえ……!!」



 今まで自分に逆らえる者などいなかったというのに、秋人によってそれは覆された。ここまでプライドを傷つけられたのは、石神にとって初めてだった。


 秋人に強い憎しみを抱く石神だが、力では秋人に敵わないことは石神自身も分かっていたので、こうして何かに八つ当たりすることしかできなかった。



「はあっ……はあっ……」



 ボロボロになった校長の石像を踏みつける石神。しかしこんなことで鬱憤が晴れるはずもなく、ただ無意味に体力を消耗しただけだった。



「つーかどうなってんだあいつのパワー、あれじゃまるで化け物……んん?」



 ふと、石神はとても芳ばしい匂いを嗅ぎ取った。間違いない、食べ物の匂いだ。こんな真夜中に一体どこから? そんな疑問を抱きつつも、腹が減って仕方がない石神は、フラフラとその匂いに吸い寄せられていく。



27日に投稿するつもりが、若干オーバーしてしまいました。申し訳ありません……。

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