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攪乱

「雪風の姿は!?」

『それはまだ確認できてないけど……』

「今からそっちに行く!! 朝野はその間に雪風の正確な居場所を突き止めてくれ!!」

『了解にゃ!』



 俺は全力疾走で校舎に向かう。千夏から貰ったパンのおかげで元気が湧いてきたし、今ならいつも通り闘える気がする。待っていろ雪風!!


 程なくして俺は校舎の三階で朝野と合流した。朝野曰くこの階で痣が反応したらしい。



「雪風は!?」



 俺が問うと、朝野は気まずそうに肩を落とした。



「ごめん、見つけられなかったにゃ。多分逃げられたんだと思う」

「逃げられた……!?」



 ここに来るまでに俺の痣に反応がなかったことから、入れ違いになった可能性はかなり低い。ならどうやって逃げた? 窓から飛び降りたのか? いやいくら仮転生体が特別だからってこの高さから落ちたらタダでは済まないだろうし、今まで隠れてた奴がそんな目立つような真似をするとも思えない。



「朝野、本当に痣は反応したのか? 俺へのドッキリじゃないよな?」

「この非常事態にそんな悪ふざけしないにゃ! そういうことする人間に見える!?」



 ご立腹の朝野。正直見える。



「確かに痣は反応したし、怪しげな気配も感じたんだけど、突然その気配が消えたの」

「……どういうことだ?」

「そんなの私が聞きたいにゃ」



 くそっ、ようやく雪風を倒して氷の牢獄から抜け出せると思ったのに……!! しかし雪風は何の目的で校舎に現れたのか。被害に遭った生徒も見受けられないし、奴の行動パターンが全く読めない。



「一応、四階と屋上も見てみよう。まだ校舎のどこかに潜んでいるかもしれない」

「……そうだね」



 俺と朝野が歩き出そうとした、その時。またもや携帯に着信が来た。今度は春香だ。ちょうどいい、春香にもこのことを伝えようと思っていたところだ。



「春香、ついさっき校舎で――」

『秋人、今すぐ部室棟に来て!! アタシの痣が反応したわ!!』

「……は!?」



 俺は耳を疑った。そんな馬鹿な、校舎と部室棟は結構な距離があるし、この短時間で移動できるはずがない。しかし春香がこんな状況で嘘をつくとは思えないし、行ってみるしかない。



「春香ちゃんから? どうしたんだにゃ?」

「朝野は引き続き、ここで雪風を探してくれ! 俺は部室棟に行く!」



 朝野にそう伝え、俺は二度目の全力疾走で部室棟に向かった。



「春香! 雪風は!?」



 部室棟で合流した春香に尋ねると、春香は力なく首を振った。



「確かに気配は感じたんだけど、突然その気配が消えて……!!」

「何……!?」



 朝野と全く同じ状況だ。間違いない、雪風は何らかの手段で特定の場所から場所へ瞬間移動している。普通はスキルを使ったと思うだろうが、それならどうやって氷の牢獄を創り出したのかという疑問が生じる。氷系のスキルでは瞬間移動など不可能だろう。


 となると、雪風は複数のスキルを所持しているのか? 俺という例がある以上全くないとは言い切れない。支配人がマルチプルだけ特別に複数のスキルを与えた可能性もある。真冬の話にそんな情報はなかったが……。



「ようやく復讐を果たせると思ったのに……!!」



 唇を噛みしめる春香。悔しいのは俺も同じだが、春香の悔しさは俺とは比べものにならないだろう。



 一通り部室棟の中を見て回ったが、やはり雪風の姿はない。ひとまず俺は春香と共に校舎に戻り、朝野と落ち合った。



「あっちに現れたりこっちに現れたり、一体何がどうなってるんだにゃ!?」

「一つだけハッキリしたのは、雪風は学校の敷地内のどこかにいるってことね」

「……ああ」



 それだけでも収穫と言えるだろう。後で真冬に報告しなければ。もっとも本当に雪風が瞬間移動のようなスキルを使えるのなら非常に厄介だ。



「二人とも、他に何か気付いたことは?」



 俺の問いに、春香と朝野は考え込む様子を見せる。



「んー、特には……あっ。そういえば、いつもより痣の反応が強かった気がしたわ」

「私もそれ思った! なんか凄く痛かったにゃ!」



 痣の反応、か。マルチプルに対しては通常よりも痣が強く反応するのだろうか。なんにせよ大した手掛かりにはならないだろう。俺がそう思った矢先――



「……っ!!」



 俺の痣が赤く光り出した。今度は俺か!



「秋人!!」



 俺は春香の声に頷く。確かに痣の反応がいつもより強く感じる。近くに雪風がいると考えて間違いない。



「朝野と春香は一階と二階を探してくれ! 俺は三階から上を探す!」

「了解にゃ!」



 俺達は二手に分かれて走り出す。今度こそ絶対に……!!



『ふふっ、どうした? 僕を見つけられないのか?』

「雪風……!!」



 三日振りに雪風の声が、どこからともなく聞こえた。一体どんな方法で声を送っているのか知らないが、これで一つ確信したことがある。


 雪風の目的は、俺達と闘うことでも誰かに危害を加えることでもない。ただ俺達を混乱させて楽しんでるだけだ。きっとまたすぐに瞬間移動する気だろう。



「出てこい雪風!! この臆病者が!! 俺と闘うのがそんなに怖いか!!」



 廊下を突っ走りながら、俺は堪らず叫んだ。しかしこんな安っぽい挑発に乗ってくれるはずもなく、結局雪風の姿は発見できなかった。春香達からの連絡もないので、とっくに校舎から姿を消したのだろう。



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