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2人の女子

 次に目を開けた時、見知らぬ天井があった。それから数秒間、俺は自分の身に起きたことを思い返してみる。確か鮫島という男と闘って、勝利することはできたが、すぐに二人目の敵が現れて……。


 普通に考えれば、俺はそいつに殺されたはず。だがここはあの世というわけではなさそうだ。つまり俺はまだ生きている。


 背中には心地の良い感触。多分ベッドの上だろう。どうやら俺は誰かに助けられたらしい。意識はハッキリしている。ちゃんと呼吸もできる。身体の節々は軋むように痛いが、それでも気を失う前に比べたら遙かにマシになっている。


 やがて俺はゆっくりと身体を起こした。どうやらここは誰かの部屋らしい。カーテンの隙間からは日差しが漏れており、壁に掛けられた時計の短針は11を指している。もう昼近くのようだ。



「あっ、起きたのね」



 部屋のドアが開き、ポニーテールの女の子が入ってきた。その華麗な容姿と抜群のスタイルに、思わず魅入ってしまう。まさに、美少女。俺がアイドルのスカウトマンだったら確実に声を掛けるだろう。



「アタシは青葉春香。貴方と同じ、転生杯の参加者よ」

「……何!?」



 彼女の発言で、俺は咄嗟に身構える。もしそれが本当なら、この子は俺の敵ということに――



「そんなに警戒しなくていいわよ。昨晩、瀕死の状態だった貴方を助けたのはアタシなんだし」

「君が……!?」

「そっ。ここまで運ぶの大変だったんだから。はい、これが参加者の証拠」



 彼女が袖を捲って右腕を俺に見せる。そこには〝39〟の痣が刻まれていた。昨晩に見た数字と同じだ。ということは、あの時この子は俺の息の根を止めに来たのではなく、俺を助けに来てくれたのか。


 自分の身体をよく見てみると、全ての傷が綺麗サッパリ消えており、血の跡すら残っていなかった。骨も何本も折られたはずなのに、その感覚もない。昨晩の鮫島との闘いは夢だったのかと錯覚しそうになるほどだ。


 だがあれは断じて夢などではなかった。たとえ身体の傷は消えても、鮫島の拳を喰らった時の衝撃、俺の拳が鮫島の身体を貫いた時の感覚まで消えることはない。それらはしっかりと俺の心に刻み込まれている。


 しかしいくらなんでも治るのが早すぎる。現代の医療技術ではとても不可能だろう。となると考えられるのは……。


「俺の怪我が完全に治ってるのは、君のスキルのおかげ……だよな?」

「まあね。どういうスキルだと思う?」

「そりゃあ、対象を治癒するスキル、とか?」

「ふふっ、普通はそう思うわよね。でも残念ながらハズレ。ちなみに今は正解を教えるつもりはありません」



 悪戯っぽく笑う彼女。スキルの正体は気になるが、ひとまずそれは置いておこう。



「とにかくありがとう。君が助けてくれなかったら、俺はあのまま死んでいた……」

「どういたしまして。それよりさっきからアタシのこと君君言ってるけど、ちゃんと青葉春香って名乗ったでしょ?」

「……ああ、うん。青葉」

「春香でいいわよ。貴方の名前は?」

「月坂秋人だ」

「私も下の名前で呼んでいい?」

「まあ……別にいいけど」

「それじゃ、よろしくね秋人」



 うお、こんな美少女から下の名前で呼ばれるとなんだかドキッとするな。考えてみたら家族や親戚以外で女の子から秋人と呼ばれるのは生前の小学生以来だ。



「でも、どうして俺を助けてくれたんだ? 春香も転生杯の参加者なら、同じく参加者の俺は敵のはずだろ?」

「それについては、真冬が帰ってきたら話すわ」

「……真冬?」

「私の仲間。真冬も転生杯の参加者だけど、私達は行動を共にしてるの。今は買い物に行ってもらってるわ。あ、噂をすれば」



 ドアが開き、小柄なツインテールの女の子がビニール袋を持って入ってきた。



「おっ……」



 その子を見て思わず声を漏らした。小動物を連想させるような可愛らしさがあり、春香に負けず劣らずの美少女。一般的にモテそうなのは春香の方だが、俺的にはこの子の方がタイプかもしれない。



「おかえり真冬。買い物ありがと」

「……ただいま。その人、目が覚めたんだ」

「ついさっきね。紹介するわ秋人、この子がさっき話してた東雲真冬。気軽に真冬って呼んであげて」

「そんな勝手に……まあいいけど」



 真冬はビニール袋をテーブルの上に置き、俺の方に目を向けた。



「秋人、でいい? 甘い物は好き?」

「まあ、わりと」



 すると真冬はビニール袋から一個のプリンを取り出した。



「おっ、ありがとう。ちょうど何か食べたいと思ってたんだ」

「そう」



 プラスチックのスプーンを開封し、プリンを小さくすくう真冬。ひょっとしてこれは男なら誰もが憧れる「あーん」をしてくれるのだろうか。そんな期待に胸を膨らませていると――真冬はスプーンを自分の口に運んだ。



「お前が食うのかよ!?」

「別にあげるなんて言ってないし」



 とてつもない精神ダメージが俺を襲った。純粋な男心を弄ぶなんて酷い。



「冗談。ちゃんと人数分買ってきた」



 真冬はビニール袋から二個のプリンを取り出した。今のくだりいる?



「あはは……。真冬はちょっと変わってるけど、とても頼りになる子よ」



 苦笑いを浮かべながら春香が言った。まあ、こういう子は嫌いじゃないけども。



「真冬も転生杯の参加者って春香から聞いたけど、本当なのか?」

「……ん」



 真冬は一旦スプーンを置き、袖を捲る。右腕には〝51〟の痣が刻まれていた。どうやら二人とも参加者であることは間違いなさそうだ。

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