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春香の過去

「なんというか、今はどちらかというと転生杯の方に集中したいっていうか? 復讐も大事だけど、転生杯に脱落しちゃったらお終いでしょ? だからアタシの復讐は後回しでいいわ」

「……嘘が下手だな。せっかく女子高生になれたんだし、今は高校生活を満喫したいからってのが本音じゃないのか?」

「ギクッ!! そそそそそんなわけないじゃない!! 見当違いも甚だしいわ!!」



 図星かよ。やはり中身は六歳児、自分の目的よりも目の前の楽しいことを優先してしまうのだろう。



「それより二人とも朝ご飯できたわよ! 千夏ちゃんも待ってるから早く来ること!」



 そう言い捨て、春香はそそくさと去っていった。



「……春香はああ言ってたけど、真冬は春香の復讐について何か知らないか? 誰を憎んでるとか、過去に何があったとか」

「ううん。春香って自分のことはあまり話さないから。だけど……」



 真冬は立ち上がり、作戦会議室の外に出る。



「ちょっと来て」

「? ああ……」



 言われるまま、俺は真冬の後に付いていく。俺が連れてこられたのは、沢山の本が置かれた部屋だった。



「書庫か……。このアジトにこんな部屋があったんだな」



 俺は書庫の中を軽く歩き回る。元児童養護施設というだけあって、ほとんどが子供向けの本だ。



「それで、どうして俺をこんな所に?」

「…………」



 真冬は一冊の本を手に取り、パラパラとページを捲る。その途中に、一枚の写真が挟まっていた。そこに写っていたのは、数十人の子供と一人の大人の女性。かつてこの施設で暮らしていた子供達と、その先生だろう。



「この写真が、どうかしたのか?」

「子供達の中に、見覚えのある子がいない?」

「んん……?」



 俺は目を凝らして写真を見る。やがて一人の女の子に目が留まった。



「まさかこれ、春香か?」



 間違いない。見た目は五、六歳くらいだが、春香だ。この頃から早くも美少女の片鱗を見せている。



「……春香はこの施設の出身だったのか」

「ん。この部屋を整理してたら、偶然見つけた」



 なんでわざわざ児童養護施設なんかをアジトにしたのかずっと疑問だったが、そのような由縁があったのか。



「多分、ここで春香の身に何かが起きたんだと思う。だけど春香が自分から話そうとしないから、私もそこには触れないでおこうと思った」

「なるほどな……」



 誰だって話したくないことの一つや二つはあるだろう。俺としてもそれを強引に聞き出そうとは思わないし、本人がその気になるまで――



「な・に・を・してるのかしら?」



 背後の声で、俺と真冬は飛び上がった。恐る恐る振り返ると、そこには怖い笑顔を浮かべる春香が立っていた。



「春香、これは、その……!!」



 俺がどう言い訳しようか必死に考えていると、春香は溜息をついた。



「まったく、なかなかリビングに来ないからどうしたのかと思えば……。人の過去を探るなんて、良い趣味してるわね」



 そう言って、春香は俺の手から写真を取り上げる。どうやら思ったほど怒ってはいないようだ。



「アタシに繋がるものなんてもう残ってないと思ってたけど、迂闊だったわ。この写真、真冬が見つけたの?」

「……ごめん」

「別に謝らなくていいわよ。遅かれ早かれ、二人には話してたと思うから」



 懐かしそうに写真を見つめる春香。だがその目には、悲しみや憎しみ、様々な感情が宿っているように見えた。



「なら、ついでに教えてくれないか? 春香の過去に何があったのか」

「……そうね。もう隠しても仕方なさそうだし」



 意外にも春香はすんなり承諾した。



「春香。もし話しづらかったら、以前秋人にやったように私のスキルで春香の記憶を読み取って――」

「大丈夫。アタシは誰かさんと違って、自分のトラウマを話そうとしただけで体調を崩しちゃうような弱いメンタルは持ち合わせてないから」



 俺のことかい。やっぱりちょっと怒ってる?



「お察しの通り、アタシはこの児童養護施設の出身よ。二才か三才の時に、母親に入れられたの。父親もいなかったし、子育てに嫌気が差したんでしょうね。こんな可愛い女の子を手放すなんて、まったく見る目のないこと」



 書庫の中を静かに歩きながら、春香は淡々と話す。



「写真に一人、大人の女性が写ってたでしょ? 当時のここの保育士で、アタシ達は乙木先生って呼んでた。乙木先生はたった一人でアタシ達の世話をしてくれていたの。アタシの母親は一人の子供すら育てられなかったというのにね」



 一人で数十人の子供を育てるなんて、想像しただけで大変そうだ。そしておそらくその人が、春香の復讐の鍵だと思われる。



「ここでの生活は楽しかったわ。皆でご飯を食べて、遊んで、笑って。アタシは乙木先生が大好きだった。本当のお母さんのように思ってた。乙木先生がいたから、アタシは毎日が幸せだった。でも、それは突然終わりを告げた……」



 暗い表情で、春香は俯く。短い沈黙の後、春香は再び口を開いた。



「今から四年前、アタシが五歳の時……。乙木先生が、何者かによって殺害されたの」

「殺害された……!?」



とりあえず5月も頑張って更新を続けます。応援よろしくお願いします。

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