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逆転の発想

「それと、相手の身体を動けなくしたり、誰も乗ってないショベルカーを動かしたり、あれは何だったのでしょうか?」



 うっ。やっぱそこ気になるよな。



「あんなこと、普通の人間にはできません。神崎さんという方もそうですけど……秋人さんは一体何者なのですか?」



 どうする。沢渡達の一件で、ただえさえ俺には何か秘密があると思われている。もう誤魔化すのは無理なんじゃ――


 いや、逆だ。ここは下手に誤魔化そうとしない方がいい。



「千夏。今から俺が話すこと、よく聞いてほしい」



 俺は全てを話した。俺が一度死んだ人間であること、仮転生という形で一時的に蘇っていること、そして転生杯のことも。


 何故この前千夏の記憶が改竄されなかったのかは分からない。だが一般人にここまで知られてしまってはさすがの支配人も見過ごせず、千夏の記憶を改竄するしかなくなるだろう。まさしく逆転の発想だ。


 千夏は終始、困惑した顔で俺の話を聞いていた。



「えっと……秋人さんは十年前に亡くなった方で……スキルというものが使えて……100人の参加者と闘って……え……?」

「ま、訳が分からないよな。別に信じなくていい」



 だがこれで、千夏は何も知らない一般人に戻れるはずだ。千夏には普通の高校生活を送ってほしい。それが俺の心からの願いだ。



「さて、俺達もそろそろここを出るか」



 ショベルカーを激突させた影響で、廃工場全体に亀裂が入り始めている。ここは間もなく崩壊するだろう。ずっとここに居たら巻き込まれそうだ。さっきの爆音を聞きつけて近くの住民が駆けつけてくるかもしれないしな。



「立てるか千夏……千夏!?」



 いつの間にか千夏は気を失っていた。息はちゃんとしているので命に別状はない。人質にされて怖い思いをした上、目の前で有り得ない光景を見せつけられ、現実では有り得ないようなことを一気に聞かされたんだ。精神疲労が限界を超えて気絶くらいしてもおかしくはないだろう。


 自宅まで送ってあげたいところだが、生憎俺は千夏の家を知らない。とりあえず俺は千夏をアジトまで連れ帰ることにした。





 日付が変わり、午前一時過ぎ。アジトに帰宅した俺を、心配した様子の春香が出迎えてくれた。



「随分遅かったわね秋人。真冬はとっくに寝ちゃったわよ。一体どこで油を売って――えっ!? ちょっとその子、千夏ちゃんでしょ!? しかも怪我してるじゃない! 何があったの!?」

「それは後で話す。まずは千夏を寝かせてやりたい」


 空き部屋に千夏を寝かせた後、すぐに俺も自分の部屋で眠りに落ちた。今日は色んなことがあって本当に疲れた。今はゆっくり休もう……。





 八時間ほど泥のように眠り、朝になった。あれほど疲れていたというのに、起きた時にはほぼ回復していた。これが若さかと、俺は十六歳の身体に感心したのであった。


 それはさておき千夏のことが心配なので、俺は千夏を寝かせた部屋へと向かう。ドアをノックすると「どうぞー」という春香の声が返ってきた。春香が千夏の様子を見てくれているようだ。



「春香、千夏の容態はブーッ!?」



 ドアを開けるや否や、俺は勢いよく噴き出した。千夏が下着姿でベッドに横たわっていたからである。



「おはよ、秋人」

「おはよじゃなくて!! なんで服着てないんだよ!? 春香が脱がせたのか!?」

「千夏ちゃんが眠ってる隙に、痣がないか身体の隅々まで調べておこうと思ったのよ」

「だったら脱がせる必要ないだろ! 参加者の痣は右腕にあるんだから!」

「念のためよ念のため。もしかしたら右腕以外にも痣があるパターンだってあるかもしれまいし」

「百歩譲ってそれをやるのはいいとしても、俺を部屋に入れたら駄目だろ!」

「そう? 昨日のデートで二人の距離も縮まったことだし、千夏ちゃんもそれくらい許してくれるでしょ」



 何を勝手な。相変わらず春香は女子の羞恥心を分かってなさすぎる。ひとまず俺は千夏に服を着せるよう春香に命じた。



「で、結果は?」

「どこにも痣はなし。千夏ちゃんは間違いなく一般人ね」



 まあ、そうだろうな。既に分かっていたことだけど安心した。



「千夏の容態は?」

「怪我をしてること以外は特に問題ないわ。直に目も覚めるんじゃないかしら」

「春香のスキルで怪我を治してやれないのか?」

「前にも言ったでしょ。アタシのスキルは対象にかなりの負担が掛かるから、使わないに越したことはないの。怪我は大したことないし、自然に治るのを待つのが一番よ」



 そうだったな、と俺は春香のスキルで治してもらった時のことを思い返した。あの身体の節々の痛みは結構堪えた。



「それで昨日は千夏ちゃんとデートした後、何があったの?」

「ああ……」



 俺は神崎という転生杯の参加者に千夏を人質に捕られたこと、そして廃工場で神崎と闘ったことを春香に話した。



「そんなことが……。アタシが途中で帰ったりせず、最後まで二人を見守っておけばよかったわね」

「いや、危機意識が足りてなかった俺に責任がある。春香は悪くない」



 千夏を転生杯に巻き込みたくなくて断腸の思いで突き放したのに、結局巻き込んでしまった。まったく笑えない話だ。



今日は読者の皆様に日頃の感謝を……。

いつも誤字脱字報告をしてくれる方々、ありがとうございます。非常に助かっております。

それと(遅くなりましたが)レビューを書いてくださった方、ありがとうございます。身に余るお言葉をいただき嬉しい限りです。かなり元気を貰いました。

そしてなによりブックマーク・評価をしてくださった方々、ありがとうございます。おかげ様で今日まで書き続けられています。

引き続きよろしくお願いします。

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