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【怪力】の能力者

「何だ、停電か!?」

「つかスゲー音しなかったか!?」



 電信柱が倒れて電線が切れたことにより、辺り一帯から明かりが消え、動揺する住民達の声が聞こえる。ほら見ろ言わんこっちゃない。これ以上騒ぎを大きくしたら確実に面倒なことになる。



「おい、このまま続けるのはマズいだろ! 一般人に見られてるぞ!」

「んなこと心配する必要はねえ。思う存分バトルを楽しもうじゃねーか」



 駄目だ、話が通じない。これが脳筋ってやつか。



「それよりテメーは自分の心配をした方がいいんじゃねーかあ!?」



 そう言い放ちながら、男が三発目の拳を繰り出す。再び俺は横に跳んでこれを回避。男の拳はブロック塀に直撃し、粉々に砕け散る音が響いた。



「う、うわあああああ!?」

「化け物がいるぞ!! 逃げろ!!」



 住民達が悲鳴を上げながら走り去っていく。俺としても一般人を巻き込むのは本意ではないので、避難してくれるのはありがたい。俺も皆と一緒に逃げたいところだが、多分こいつはどこまでも俺を追いかけてくるだろう。ならばこの場で倒すしかない。



「ケッ。見かけによらず良い動きをするじゃねーか」

「……そりゃどうも。昔から運動はそこそこ得意だったもんでな」



 などと余裕を見せてみるが、正直もう限界ギリギリだ。というかいきなりこんな状況に置かれてまともに動ける人間がいたら是非ともお目に掛かりたいものだ。このまま長引けば確実に俺は殺される。



「だが防戦一方じゃ埒が明かねーぜ。どうせならテメーもスキルを使って応戦したらどうだ? 所詮は無駄な足掻きだろうだな」



 そんなことを言われても、俺はまだ自分のスキルにどういう能力があるのかも分かってない。これでは圧倒的に不利だ。



「ククッ。その様子じゃ、まだスキルの使い方も分かってねーようだな」



 勘の良い奴め。こうなったら今ここでスキルを使えるようになるしかない。考えろ、俺のスキルは【略奪】。この転生杯を勝ち抜く為に与えられた力なのだとしたら、きっとこの状況も打開できるはずだ。



「略奪……奪う……」



 ふと、俺の脳裏に一つの仮説が浮かんだ。もしかしたらこの【略奪】には、相手のスキルを奪う能力があるのではないか? うん、きっとそうに違いない。根拠はないが、俺の直感がそう告げている。


 しかし問題は発動条件だ。果たしてどうすればスキルが発動するのか。ただ頭の中で念じるだけでいいのか? そんな簡単な条件だったら非常にありがたいのだが、とにかく試してみるしかない。


 スキル発動!! 奴のスキルを奪い取れ!!


 俺は男の方を真っ直ぐ見据えながら、心の中で叫んだ。これでスキルの発動が成立したのなら、奴の【怪力】は俺のものになったはず。



「だからと言って見逃してやるほど俺は優しくないもんでなあ。テメーはここできっちり殺してやるよ!!」



 男が大きく跳躍し、俺に向けて拳を放つ。これもなんとか回避したが、男の拳は地面に炸裂し、まるで隕石でも落下したかのような巨大な穴が空いた。


 仮に【略奪】の発動に成功していたら、奴から【怪力】のスキルはなくなりパワーも大幅に落ちるはずだが、今のを見る限りパワーは全く落ちていない。奴のスキルを奪ったという感覚もなかったし、やはり念じるだけでは駄目なのか――



「うあっ!?」



 その時、予期せぬ不幸が俺を襲った。地面に転がっていた空き缶に気付かずそれに左足を取られ、体勢が大きく崩れてしまったのだ。奴がこの好機を逃すはずもなく、口元を大きく歪めながら突進してくる。


 まずい、この態勢からは避けられない。俺は反射的に両腕を胸の前で交差させるが、その程度で防げるはずもない。頼む【略奪】よ、奴のスキルを奪い取れ!! そう再び強く念じながら――俺は奴の拳をまともに喰らった。



「があっ……!!」



 俺の祈りも虚しく、メキメキメキと何本もの骨が粉砕される音が鳴り響く。俺の身体は吹き飛ばされ、盛大に地面を転がった。



「あ……ああ……!!」



 痛い!! 痛い!! 痛い!! なんだよこれ!! 身体の至る所から血が出てる!! ちゃんと呼吸ができない!! 意識が朦朧とする!!


 今まで体験したことのない感覚に、俺の脳が動転しているのが分かる。なんて威力だ、爆弾が爆発したのかと思ったぞ。つーか誰だよ空き缶をポイ捨てした奴は、ゴミはゴミ箱に捨てろと習わなかったのか!?



「おや、まだ息があるのか。しぶといな」



 男は勝ち誇った笑みを浮かべながら、地面に横たわる俺のもとにゆっくりと歩み寄ってくる。結局【略奪】は発動せずか、ちくしょう……。



「だがもう立ち上がることすらできねーだろ? 残念ながらテメーはここで脱落だ。この世に戻ってきたばかりだってのに、気の毒だなあ」



 早く起き上がらないと、今度こそ殺される。だけど身体が言うことを聞かない。全身に力が入らない。



「ああ、そういやまだ名乗ってなかったな。俺の名は鮫島剛毅。これからテメーを殺す男の名だ、しっかり覚えときな」



 俺の闘志がジワジワと消えていく。俺は、ここで死ぬのか? 黒田に、真犯人に、復讐もできないまま……。

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