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【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】  作者: ダイヤモンド


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春香の作戦

 俺は改めて千夏の私服姿を見てみる。あまり遊び慣れてない子が頑張ってお洒落しました、という感じが伝わってくる。半袖だったらこの時点でクリアだったが、残念ながら長袖なので右腕は見えない。



『ほら秋人、その子の服を褒めてあげて! デートでは基本中の基本よ!』



 早速インカムを通して春香が指示を送ってきた。作戦と全然関係ないだろそれ。しかしまあ、褒めておいて損はないだろう。



「……その服、似合ってるな」

「本当ですか? 今日の為に色んな雑誌を読んでファッションの勉強をしたので、そう言ってもらえると嬉しいです……」



 俺と出かける為だけにそこまで準備してくれたのか。なんだかちょっと申し訳ない気持ちになる。



『それだけじゃ足りないわよ! ちゃんと可愛いって言ってあげないと! 女の子はそれが一番嬉しいんだから!』

「……可愛いと思う」

「あ、ありがとうございます……」



 嬉しそうに頬を染める千夏。なんだか俺も照れ臭い――ってこれじゃ本当にただのデートじゃないか。春香の奴楽しんでやがるな。


 作戦の前にまずは腹ごしらえしようと、俺と千夏は近くのファミレスに入った。「せっかくのデートなんだからもっと良い店にしなさいよ!」と春香から反発を受けたが、俺はこれを華麗にスルー。昼飯くらい好きにさせろ。


 それぞれ好きな料理を注文し、待っている間どういった話をしようかと俺が思案していると、千夏が静かに口を開いた。



「秋人さん。先日は本当にありがとうございました」

「……どうした、改まって」

「誰かに助けてもらったことなんて今までありませんでしたから、ちゃんと感謝の気持ちを伝えたくて。それまでは毎日が苦しくて、生きる気力も失いかけていたので……」



 俯きながら千夏が話す。あと少し俺の転入が遅かったら、千夏が二人目の犠牲者になっていたかもしれないわけか。



「自分から誰かに助けを求めたりはしなかったのか?」

「……はい。私にはそんな資格、ありませんから……」



 千夏の意味深な発言に、俺は首を傾げる。



「ご、ごめんなさい! なんだか空気を重くしちゃいましたね! この話はもう終わりにしましょう!」

「……そうだな」



 それから俺と千夏はたわいもない雑談をしながら食事を終えた。



「ごちそうさまでした。美味しかったですね」

「ああ。それじゃ会計してくる」

「えっ!? 待ってください、私が奢るという約束でしたよね!?」

「あー、そういやそうだったな。だけど大人の男として女の子に奢らせるのは気が引けるし、俺に払わせてくれ」

「……ふふっ。大人の男って、秋人さん面白いこと言いますね。私の方が年上なのに」



 あ、そうか。中身は26歳なものだから無意識に年上のように振る舞っていたが、実際のところ俺は高校二年生で千夏は三年生なんだよな。まだ生前の感覚が抜けきれていないようだ。



「今更だけど、年下なのにタメ口って凄く失礼だよな……」

「いえ、全然気にしてないので大丈夫です! 私のことも千夏と呼んでください!」

「……なら遠慮なく。話を戻すけど、やっぱりここは俺が払うよ」

「そんな! 私が払います!」

「いや俺が!」

「私が!」

「……こうなったらジャンケンで決めるか」

「分かりました。勝った方が払うということで」



 ジャンケンの結果、千夏がパーで俺がチョキ。俺の勝利だ。



「よし。俺が払うってことで異存はないな?」

「……はい。秋人さんにお礼をするつもりが、逆に払わせてしまうなんて……」

「一緒に食事してくれたってだけで十分なお礼だ。伝票は……ん?」



 何故かテーブルの上には伝票が二枚置かれていた。ハンバーグステーキだと? こんなものを注文した覚えは……。


 まさかと思い周囲を見回すと、春香が店の外から俺に向けてピースをしていた。この伝票あいつのか! いつの間に……!!


 さっきから大人しいと思ったら、しれっと入店して食ってやがったのか。しかも地味に高いの頼みやがって。



「秋人さん、どうしました?」

「……何でもない。千夏は先に外に出ていてくれ」



 しぶしぶ俺は三人分の会計を済ませた。後で覚えてろよ春香。



「えっと、これからどうしましょうか」

「そうだな……」



 千夏の右腕を確認もせず帰るわけにはいかないし、食事だけして解散というのも無粋というものだろう。



『お腹も一杯になったことだし、いよいよ作戦開始よ! プランはアタシに任せて!」



 インカムから満足げな春香の声。人の金で食った飯はさぞ美味かっただろうよ。



『この近くにデパートがあるから、まずはそこに向かって!』

「……デパートにでも行くか。千夏もそれでいいか?」

「はい、勿論です!」



 俺は千夏がただの一般人だと信じている。が、もし参加者だった場合、油断した隙に背後からグサリ、なんてことも有り得る。とても俺を騙してるようには見えないが、常に気を抜かないようにしよう。


 やがてデパートに着いた俺達は、三階の女性服売場へとやってきた。どのような作戦かだいたい見当がついた。



『作戦その一、服を着替えさせよ! 半袖の服を試着するように促せば、自然と右腕も見られるはずよ!』



 ま、そうだよな。しかし作戦としては悪くない。



皆様からのブックマークと評価に支えられて書き続けられています。本当に感謝です。

今のところ偶数日に更新していますので、次回の更新は4/2予定です。

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