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ファーストバトル

 それから電車とバスを乗り継ぎ、俺は忌々しい検察庁に到着した。まさかまたここに来ることになるとはな。あの地獄の十八日間の記憶が嫌でも蘇る。本当は二度と来たくなかったが、背に腹は代えられない。


 検察庁の中に入った俺は、無意識に周囲の視線を窺う。だが案の定、俺に注目している人は誰もいなかった。そりゃそうだよな。十年も経てば皆俺のことなんて忘れてるだろうし、たとえ覚えている人がいたとしても、死刑になった男が16歳になって蘇ったなんて夢にも思うまい。そのまま俺は悠然と受付のカウンターに足を向けた。



「すみません、黒田……さんという検察官はいらっしゃいますか?」



 ひとまず俺はそこに座っている女性に声を掛ける。



「黒田……。ああ、あの方なら数年前に別の検察庁に異動になりましたよ」



 思い出したように女性は答えた。予想はしていたが、やはりもうこの検察庁にはいないらしい。



「では黒田さんの住所を教えていただけますか?」

「住所、ですか? 申し訳ありません、そのような個人情報を一般の方にお伝えすることは……」



 だよな。どうしたものか。



「どこの検察庁に異動したのか分かりますか?」

「それは分かりますけど……。どのようなご用件でしょうか?」



 女性は怪訝な顔で俺を見つめている。まずいな、完全に怪しまれてる。先に住所を聞いたのが失敗だったか。


 そうだ、ここは試しにスキルを使ってみよう。女子高生のパンツを奪えなかったということは、きっとこのスキルは物体を奪うような能力ではないのだろう。となれば――


 スキル【略奪】を発動! この女性から黒田に関する情報を奪い取れ!


 心の中で叫んだが、またしても何も起きず。これも違うか……。



「あの……どうされました?」



 ただ突っ立っているだけの俺に、女性が不審そうに声を掛ける。これ以上ここに留まるのはマズイ気がする。



「あー、その、やっぱり大丈夫です。ありがとうございました」



 そう言って俺はそそくさと検察庁を出た。こうなったら黒田の居所は自力で突き止めるしかなさそうだ。





「はあ……」



 俺は深々と嘆息する。結局夜になっても黒田の居所は分からなかった。俺は途方に暮れながら住宅街を歩く。ネットで色々調べたりもしたが駄目だった。検察官というのは三千人近く(検察事務官とかいうのも含めると約一万二千人)もいるらしく、その中から特定の人間を見つけ出すのは雲を掴むような話だ。


 やはり明日もう一度検察庁に赴くしか……。いや、もう俺のことは警戒されたと考えていいだろうし、やめておくのが無難だろう。あそこに行ったらまた思い出したくない記憶が蘇って気分が悪くなりそうだしな。


 こうなったら全ての検察庁を一つ一つ回るしか……。いやさすがに気が遠くなりそうだし、交通費も馬鹿にならないので時間と金の無駄だ。何か良い方法はないものか。



「いっ……!?」



 俺が頭を悩ませていた時、突然右腕に焼けるような痛みが走り、俺は足を止めた。一体何だと思いながら袖を捲ると、右腕に刻まれた88の痣が赤く光っていた。


 そういえば今は第八次転生杯とやらの真っ最中なんだっけ。だが黒田への復讐を果たすまでそんなものに時間を費やすつもりはない。


 しかし参加者百人による生き残りを賭けたバトルロイヤルとか言われても、この広い日本から百人の参加者を一体どうやって見つけ出せばいいのやら。この痣が目印になるのかもしれないが、俺みたいに袖で隠していたら一般人と見分けはつかないしなあ。それはそうと、なんでさっきから痣が光って――



「みぃーつけた」



 不意に聞こえた男の声に、悪寒が走る。咄嗟に背後を振り向くと、数メートル先に筋骨隆々とした一人の男が立っていた。



「88、か。まだ転生杯に参加して間もないと見える。こいつはラッキーだぜ」



 俺の右腕の痣に目をやりながら、不気味な笑みを浮かべる男。こいつ、明らかに転生杯のことを知っている。ということは……!!



「お前も、参加者か……?」

「その通り」



 男は袖を捲り〝24〟の痣を俺に見せつけた。つまりこいつは24番目の転生杯参加者ってことか。まさかこんなにも早く他の参加者に遭遇してしまうとは予想外だ。痣が光っていたのは、他の参加者が近くにいることを知らせていたわけか。


それはそうと参加者は全員16歳の身体に補正されているはずだよな? こいつの身体、とても16歳とは思えないんだけど。



「この痣を持つ者同士が出会ったとき……分かってるよなあ?」



 参加者百人による生き残りを賭けたバトルロイヤル――それが第八次転生杯。どうやらこの男は俺と闘う気マンマンらしい。悪いが今はそんなことをやってる場合じゃない、なんて言葉が通じる相手ではなさそうだ。



「そんじゃ、始めるぜえ!!」



 男は拳を握りしめ、俺に向かって勢いよく走り出す。早速かよ!



「うおっ……!!」


 

 俺は咄嗟に横に跳び、奴の拳が俺の頬を掠めた。危ねえ、マジで俺を殺す気かよ。こっちはまだ心の準備もできていないってのに……!!


 そもそもいくら夜とはいえ、こんな住宅街のど真ん中で闘ったりしていいのか? こういうのって一般人に見られたらマズいんじゃ――



「おらあっ!!」



 なんて考えていたら、すかさず男が二発目の拳を放ってきた。これは地面に転がり込むことで回避したが、代わりに男の拳は俺の背後に立っていた電信柱に直撃した。



「なっ……!?」



 直後、俺の背筋が凍りついた。常識で考えれば、ただの人間が電信柱を殴ったところでビクともしないだろう。だが今の一撃で電信柱はへし折れ、激しい音を立てながら地面に倒れた。目の前の信じがたい光景に、俺はかつてないほどの戦慄を覚える。


 こんな芸当、普通の人間には絶対に不可能だ。つまりこれは――



「スキル、か……!?」

「大正解! 俺のスキルは【怪力】! 能力はご覧の通りだ」



 ご丁寧に自らのスキル名まで明かしてくれた。しかしあんな一撃をまともに喰らったら即あの世逝きだ。せっかくこの世に蘇ったというのに、そうなっては何の意味もない。

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