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守りたい者

「……三人仲良くあの世に逝けたんだ。むしろ本望だろ」



 三つの死体を眺めながら、俺は呟いた。想定していた形とは違ったが、これで真冬の復讐は果たせた。俺は手についた血を軽く払いながら、真冬のもとに歩み寄る。



「終わったぞ、真冬」



 俺の声を聞いて、ゆっくりと顔を上げる真冬。しばらくの間、真冬は無言で沢渡達の死体を見つめていた。


 今の真冬の気持ちは、俺には分からない。沢渡達が死んで過去の呪縛から解放されたことを噛みしめているのか、自らの手で復讐を果たせなかったことを悔やんでいるのか、それとも……。



「さっきの悲鳴を聞いて駆けつけてくる生徒がいるかもしれないし、面倒なことになる前にここを離れて――」



 俺の言葉の途中で真冬は立ち上がり、この場から逃げるように走り出した。追いかけようとしたが、俺の足は動かなかった。





 その後、アジトに帰宅した俺は、真冬の部屋へと向かった。玄関には真冬の靴があったので、真冬も帰宅済みのはず。


 俺は真冬の部屋の前に立つ。きっと真冬はこの中にいるはず。思えば今まで真冬の部屋には入ったことがなかった。俺はドアを軽くノックする。



「入るぞ、真冬」



 返事はない。女の子の部屋に許可なく入るのは気がひけるが、とにかく今は真冬と話がしたい。俺は静かにドアを開けた。


 電気はついておらず、もう日も沈んでいるので、部屋の中は真っ暗。そこにはベッドの上で膝を抱える真冬の姿があった。


 俺は真冬の隣りに腰を下ろす。話をしたかったはずなのに、何も言葉が出てこない。沈黙の時間がしばらく続く。



「……私、何もできなかった」



 やがて真冬が、か細い声で口にした。



「春香の言った通りだった。中途半端な覚悟で復讐に臨んでも、残るのは後悔だけ。私には沢渡達に復讐する覚悟がなかった。だから結局、全てを秋人に押し付けてしまった。本当にごめん……」



 感謝ではなく、謝罪か。本当に優しい子なんだな、真冬は。



「気にすんな。俺のこの手はとっくに汚れてる。今更罪が三つ増えたところでどうってことはない。むしろ真冬の手が汚れなくてよかったと思ってるくらいだ」



 それから俺は、真冬の身体を優しく抱きしめた。重い過去を背負いこむには、あまりも小さな身体だった。



「秋人……?」

「つらかったよな。苦しかったよな。けど、もう大丈夫。これからは俺が真冬を守る。もしまた真冬を傷つけるような奴が現れたら、俺が真っ先にそいつをぶっ飛ばす」

「……っ」

「つらいことも、苦しいことも、全部俺が受け止めてやる。だからもう、一人で背負いこむ必要はない。俺がずっと、真冬の傍にいる」



 俺が真冬達と協力関係を結んだのは、俺を陥れた奴等に復讐する為。転生杯に勝ち残り転生権を手に入れる為。そう、全ては自分の為――最初はそうだった。


 だが、今は違う。俺はハッキリと自覚した。この手で真冬を守りたいと。これからは自分の為、そして守りたい者の為に戦う。



「うっ……ううっ……!!」



 真冬の目から、大粒の涙が溢れ出る。真冬が泣きやむまで、俺はその小さな身体を抱きしめ続けた。




  ☆




 翌朝。真冬の復讐が終わったので、もう高校に通う必要はなくなったわけだが……。



「それじゃ秋人、いってきまーす!」

「いってらっしゃーい……じゃない! どこ行く気だ春香!?」

「どこって、学校に決まってるでしょ? 早くしないと遅刻しちゃう」



 キョトンとした顔で春香が言う。



「あのな、俺達が高校に転入したのはあくまで真冬の復讐の為であって、それが終わった今高校に行く意味は――」

「あーあー!! 聞こえない聞こえなーい!!」



 こ、こいつ……!!



「せっかく高校生になったんだし、たった一日で終わりなんて勿体ないじゃない。それに退学手続きだってまだしてないんでしょ?」

「それは、そうだが……」



 真冬とは全てが済んだら退学の手続きをすると約束していたが、まだ真冬は心の整理ができてないだろうし、今は休ませてあげたい。だから退学の手続きは後日やってもらうつもりだ。



「だったら行かない方が不自然よ。今日も放課後にライブがあるし、皆の期待を裏切るわけにはいかないわ!」

「はあ……もう好きにしろよ」



 無理に止めようとまでは思わないし、あと少しだけ高校生ライフをエンジョイさせてやるか。



「秋人は行かないの?」

「当たり前だろ。真冬のことも心配だし、真冬が元気になるまではどこにも行かないつもりだ」

「ふーん……」



 ニヤニヤした顔で俺を見る春香。



「なんだよ」

「別に? それじゃいってきまーす!」



 春香は元気よく玄関から飛び出していった。まったく、高校生になれたことがよっぽど嬉しいんだな。それから俺は朝食のサンドイッチとオレンジジュースを持って真冬の部屋に向かった。



「真冬、もう起きてるか?」

「……ん。どうぞ」



 真冬の声が返ってきたので、俺はドアを開けて部屋に入った。真冬はベッドで上半身だけ起こし、何かの本を読んでいた。昨日は暗くてちゃんと見られなかったが、ピンク色の絨毯が敷いてあったり、可愛いぬいぐるみがあちこちに置いてあったり、意外と女の子らしい部屋だ。



最近、個人的に色々とつらい事が続いて、メンタルが弱っています……。

書き続けるためにはモチベーションが不可欠なので、ブックマークや評価などの形で応援していただけると嬉しいです。

何卒よろしくお願いします。


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