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【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】  作者: ダイヤモンド


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神崎の目的

 春香が俺の耳元に顔を寄せてくる。



「秋人。確か神崎って、以前千夏ちゃんを攫った奴の名前よね」

「ああ。まさに俺達の目の前にいる」

「そう。アンタだったのね……!!」



 春香は神崎を黄崎という名で認識していたので、俺から神崎の名を聞いた時に人物像が一致しなかったのは無理もない。



「よくもアタシの大切な仲間に手を出してくれたわね……!!」



 神崎の所業を知り、怒りを露わにする春香。



「それは千夏って子のこと? 貴女といい秋人くんといい、仲間想いの人達だこと」

「お礼はキッチリさせてもらうわよ。秋人、今すぐこの女をやっちゃって!」

「……え、俺!?」

「他に誰がいるのよ! アタシの元仲間だからって遠慮する必要ないわよ! 秋人の力なら余裕で捻り潰せるわ!」

「いや、その……」



 俺が目を泳がせていると、春香がジト目で睨んできた。



「どうしたのよ。ひょっとして、この女に惚れたんじゃ……」

「んなわけあるか!! 確かにかなりの美人だしアイドルとしてもトップクラスだとは思うが、断じて俺のタイプじゃない!!」

「……地味に傷つくんだけど。私だって貴方のようなプレイボーイは願い下げよ」



 誰がプレイボーイだよと言い返そうとしたが、そこは論点ではないので我慢した。



「だったらなんでそんな消極的なのよ! 秋人だってこの女が千夏ちゃんにしたことは許せないでしょ!?」

「それは、そうだけど……」



 無意識に右ポケットに目がいく。春香はそれを見逃さなかったらしく、俺のポケットに手を突っ込んできた。



「おい何をする!?」

「何これ、ライブのチケット? は!? まさかこんな紙切れで買収されたの!? 信じらんない!!」

「いや買収じゃなくて取引っていうか……。そ、そんなことより神崎、いい加減お前の目的を教えろ!」

「話を逸らさないで!! ちゃんと説明しなさい!!」



 俺の両肩を掴んで前後に激しく揺らす春香。すまない、俺は自分の心を裏切ることができなかった。



「そういえば、まだ言ってなかったわね。いいわ、教えてあげる」



 そう言って神崎は、春香の顔を指差した。



「私の目的。それは貴女よ、春香」

「……は?」



 春香が手をピタリと止めた。あー目が回る……ってそれどころじゃない。



「目的は春香だと!? 春香を転生杯から脱落させるつもりなら話は別だ、さっきの取引も破棄させて――」

「そうじゃないわよ。言ったでしょ、もう転生権に興味はないって。だから春香が転生杯で勝ち残ろうが脱落しようがどうだっていいわ」

「だったら、どういう……!?」



 神崎が春香に目を向ける。春香は訝しげな顔で神崎を睨んでいた。



「貴女、この学校でアイドル活動やってるんでしょ?」

「ええ。なんでアンタがそんなこと知ってるのよ」

「実は業界の間で、ちょっとした話題になってるのよね。陸奥高校ってところに、素人ながらとんでもないアイドルがいるって」

「それってアタシのことよね!? いやー流石アタシ!」



 急に上機嫌になった。まあ実際、春香のアイドルとしての才能は飛び抜けている。それは生前アイドルオタクだった俺が保証する。プロでもないのにファンクラブ会員が5000人以上いるってのも異常だし、業界人が目をつけても不思議ではないだろう。



「貴女がアイドル活動を始めたのって、やっぱり私の影響?」

「そんなわけないでしょ。アンタがアイドルやってるのなんて、つい最近テレビで見て知ったくらいだし。アタシはアタシのやりたいことをやってるだけよ」

「あらそう。とにかく私は貴女が気に食わないのよ。なんせ私がアイドルとしてこれからって時期なのに、貴女の話題が邪魔してくるんだもの。営業妨害もいいとこよ」

「とんだ言い掛かりね。私の話題くらいでアンタの人気に影響が出るようなら、所詮その程度のアイドルだったってことでしょ」



 ビキビキと神崎の額に青筋が走る。



「言ってくれるじゃない。やっぱり私、貴女のこと嫌いだわ」

「奇遇ね。アタシもよ」



 鬼神のようなオーラを放つ春香と神崎。これが、女と女の闘い。もはや俺は沈黙するしかなかった。



「私がこの高校に来たのは、貴女にプロと素人の格の違いを見せつけ、貴女の心を折るためよ。そして二度とステージの上に立てない身体にしてあげる」

「わざわざご苦労様。逆に自分の心が折れるとも知らずにね」



 それが神崎の目的か。なんか思ったより私怨に満ちた理由だった。



「秋人。さっきこの女をやっちゃってとか言ったけど、それは一旦保留よ。この女はアタシが〝アイドル〟として叩き潰す」

「そ、そうか……」



 神崎と取引を交わしてしまった手前、俺は何も言えなかった。



「勝負よ黄崎、いえ神崎。私に喧嘩を売ったこと、後悔させてあげる」

「望むところよ。楽しい高校生活になりそうだわ」



 目から激しい火花を散らす二人。もうすぐ夏休みだからまたしばらく会わなくなりそうだけど。




  ☆




 翌朝。いつも通り春香と登校すると、なにやら玄関前にある屋外掲示板が大勢の生徒で賑わっていた。



「凄い人だかりだな……」

「ふふーん。昨日、アイドル部のみんなで特大サイズのライブ告知ポスターを作って掲示板に貼っておいたのよ。早速注目されてるみたいね」




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