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【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】  作者: ダイヤモンド


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スキル再確認

 そして俺は現在、アジトの裏庭でスキルを使った自主練をしていた。と言っても軽く発動するだけで大したことはしてないが、たまに使わないと感覚が鈍りそうだしな。


 現在俺が所持するスキルは四つ。改めてそれらの能力を確認しておこう。


 一つ目は【略奪】。ご存じ支配人から直接与えられたスキルであり、俺が〝スキルを奪う〟という意志を持った状態で対象に接触すると自動で発動し、対象のスキルを奪うことができる。


 二つ目は【怪力】。身体の特定の部位に意識を集中させると、その部位の力が飛躍的に上昇する。その力は集中力に比例する。両手同時だったり全身の力を上昇させたりすることも可能だが、その分各々の力は落ちる。


 三つ目は【潜伏】。地面の下に潜り、地中を移動することが可能。コンクリートやアスフェルトに覆われていても、地に接していればそれらをすり抜けて地中に潜れる。ただし透明人間になったわけではないので、壁や建物の床をすり抜けたりはできない。ちっ、もし可能だったら女子更衣室や女子風呂に侵入――いや何でもない。


 四つ目は【操縦】。乗り物を思いのままに操ることが可能で、自分がそれに乗っていなくても構わない。自転車やボートは勿論のこと、バイクや自動車といった操縦の仕方が分からないものまで操れる。だからその気になれば飛行機や新幹線も操れると思われるが、怖いので実際に試したことはない。


 スキルの確認は以上。そしてこれは先日判明したことだが、二つ以上のスキルを同時に発動することはできない。あるスキルの発動中に別のスキルを発動した場合、最初のスキルは強制解除される。


 例えば【潜伏】で地中に潜りながら【怪力】でパワーを上げることはできず、仮に【怪力】を発動すれば【潜伏】が強制解除されて地中に閉じ込められてしまう。これは結構重要なことなので早めに気付けてよかった。


 この強制解除は一見デメリットに思えるが、考え方次第ではメリットにもなり得る。例を挙げると【怪力】発動中に【潜伏】を使いたくなった場合、普通に考えると一旦自分の意志で【怪力】を解除をして、それから【潜伏】を発動する必要がある。だが強制解除のおかげで自分でスキルを解除する手間が省けるため、【怪力】発動から【潜伏】発動に直接繋げられる。戦闘においてこのショートカットは大きなメリットだ。


 スキルの数が増えるほど戦法も増えていくので、その点では他の参加者より優位に立っていると言える。それはいいのだが、スキルのことで最近ちょっとした悩みができた。それは……。



「今日も頑張ってるわね、秋人」



 自主練を終えて一息ついていると、この裏庭に春香がやってきた。



「あら、なんか浮かない顔ね。どうかしたの?」

「いやー、俺が持ってるスキルって、どれも華がないなと思ってさ」

「華?」

「【略奪】【怪力】【潜伏】【操縦】……。別にこれらのスキルに不満があるわけじゃないけど、もっとこう、炎をぶっ放したりだとか電撃を炸裂させたりだとか、漫画の主人公っぽい能力が欲しいんだよ」



 俺が悩みを打ち明けると、春香は呆れたように嘆息した。



「中身は26歳のおっさんのくせに、まるで子供のような願望ね」

「なんだと!? これでも真剣に悩んでるんだぞ! あとおっさん言うな!」

「だいたい本来スキルは一人に一つなんだから、四つも持ってるだけで十分でしょ。他の参加者から見たら贅沢すぎる悩みよ」

「それはそうかもだが……」

「まーでも転生杯を勝ち進んでいけば、秋人の言うような漫画の主人公っぽいスキルを持ってる参加者と出くわすこともあるだろうし、その時に【略奪】で奪っちゃえばいいんじゃない?」

「……だな」



 早く炎とか電撃を使う参加者が現れてくれ、そう俺は切に願った。



「それにしても、復讐を終えたことで秋人の気が抜けないか心配してたけど、そんなことはなさそうだから安心したわ」

「復讐を終えた? 何言ってんだよ。むしろこれからが本番だ」

「……そうだったわね」



 そう。黒田を亡き者にすることはできたが、俺の復讐が終わったわけではない。もう一人の復讐の相手――九年前の事件で俺を陥れた真犯人を探し出し、この手で葬り去らなければならない。


 しかし黒田と違って顔も名前も分からない相手なので、そう簡単には見つからないだろう。唯一の手掛かりは、現場に残された〝42〟の数字。


 そういえば時系列が合わない謎は有耶無耶になったままだった。あの事件は間違いなく転生杯の参加者が引き起こしたものだ。だが九年前には第八次転生杯はまだ始まってすらいない。まずこの謎を解決しないことには……。



「それはさておき、そろそろ準備したら?」

「……ああ、もうそんな時間か」

「ええ。行きましょ」



 俺と春香はアジトを出て、ある場所に向かう。それは――スポーツジムである。日中アジトに閉じこもっているのも退屈なので、春香の勧めで五日前から通い始めたのだ。



「それにしても春香がジムに通ってたなんて意外だな」

「いざという時自分の身は自分で守れるように、少しでも鍛えておこうと思って。ま、アタシはなるべく危険を冒さず転生杯を勝ち抜きたいから、基本は秋人に守ってもらうつもりだけどね」

「お手本のような他力本願だな……」



 春香は俺の命の恩人だから何も文句は言えないけども。



「真冬はジムに誘わなかったのか?」

「以前誘ったんだけど、ものすごく嫌そうな顔で断られちゃった」

「まあ真冬ってそういうの苦手な感じするしな」



 俺の身体能力がもっと高ければ、鮫島との闘いであそこまで追い詰められることもなかったはずだ。その反省から、俺もジムに通って身体を鍛えることにした。スポーツを何もやってない16歳男子がジムに通ってるのはちょっとばかり不自然かもしれないが、まあ中にはそういう高校生もいるだろうし、問題はないだろう。


 生前の頃は仕事終わりのランニングが日課だったので、運動することに関して抵抗はなかった。まあそのランニング中にあの殺人事件が起きたんだけどな……と、つい嫌なことを思い出してしまう。



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