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復讐の刻

「ふ、ふざけんじゃねえ!! 死んだ人間がこんな所にいるはずねえだろ!! 幽霊とでも言うつもりか!?」

「ま、そんなところかな」



 転生杯のことを一から説明するのは億劫なので、そういうことにしておこう。



「いいか、黒田。俺はお前に復讐する為にここへ来た」

「復、讐……!?」

「具体的に言ってやろうか? 俺はお前を……殺しに来たんだ」



 俺は静かに、冷たく、そう囁いた。



「う、うわああああああああああ!!」



 黒田は立ち上がり、叫び声を上げながら走り出した。



「ははっ。そうだ、逃げろ逃げろ! 簡単に殺しはしない……!!」



 あまりの恐怖に身体が言うことを利かないのか、黒田は途中で何度も転んでいた。その様子がまた愉快でしょうがない。しかも大怪我を負っているため全力で走れないのは明白であり、早足でも楽に追いつけるほどだ。このままジワジワといたぶってやる……!!


 だがここで想定外の不運に見舞われた。黒田の目の前を、自転車に乗った警官が横切ったのである。おそらく夜の見回りの最中なのだろう。さっきの落合といい、今日はよく邪魔が入るものだ。



「た、助けてくれえ!!」



 これは黒田にとって願ってもない幸運であり、当然ながら黒田はその警官に助けを求めた。警察が絡んでくると面倒だな。どうしたものか。



「どうしました!?」

「こここ、殺される!! 幽霊に殺される!!」

「……は? 何を言ってるんですか?」

「幽霊が俺を追いかけてくるんだ!! そこにいるだろ!!」

「……いや、何も見えませんけど」

「馬鹿言え!! 確かにガキの姿をした殺人鬼の幽霊が――」



 黒田の言葉が止まる。ついさっきまでそこにいたはずの俺が、忽然と姿を消していたからだろう。



「ほら、誰もいないでしょ。だいたい幽霊なんているわけないじゃないですか」

「本当だ!! さっきまでそこにいたんだ!!」

「ていうか酒臭いですよ。酔って幻でも見たんじゃないですか?」

「幻じゃない!! 見ろ、右腕が折れて血も出てる!! あの幽霊にやられたんだ!!」

「んー、暗くてよく分かりませんよ。どうせ転んで怪我でもしたんでしょ。早く家に帰って治療してください」

「ま、待ってくれ!!」



 警官は黒田を置いて去っていった。やる気のない警官で助かった。しばらく黒田は必死な形相で周囲を見回していた。



「どこにもいねえ……マジで幻だったのか……?」

「そんなわけないだろ」



 警官が遠くに行ったのを見計らい、俺は地面から現れた。【潜伏】のスキルで地中に身を隠していたのだ。



「うわあああああああああああああああ!!」



 またもや悲鳴を上げ、腰を抜かす黒田。いいよ、いい。俺はずっと、こいつの絶望した顔が見たかったんだ。



「じじじ、地面から出てきた!? どうなってんだよ!?」

「いやいやお前言っただろ、俺のこと幽霊って。幽霊は身体が透けてるからそれくらいできても不思議じゃないよなあ」



 俺は半笑いを浮かべながら、黒田のもとまで歩み寄る。黒田は悪魔にでも出くわしたかのように身体を震わせていた。



「頼む……殺さないでくれ……!!」

「命乞いより先に、やることがあるんじゃないか?」

「……!?」



 呆れた俺は深々と嘆息し、ゆっくりと右足を上げた。



「謝罪だよ謝罪。ここまでごめんなさいの一言もないとはどういうことだ? もっと痛くしないと分からないのかなあ!?」



 俺は【怪力】を発動して右足に力を集中させ、黒田の左足を踏み潰した。



「ひぎゃあああああああああああああああ!!」

「あっはっはっはっは!!」



 ああ、最高だ。黒田の悲鳴を聞く度に、俺の心は満たされていく。今の自分の顔を鏡で見てみたい。きっと世界で一番恍惚とした顔になっていることだろう。この時間がずっと続けばいいのに。



「ああっ……嫌だ!! 嫌だ嫌だ嫌だ!!」



 この期に及んでも黒田は俺から逃げようとしていた。この往生際の悪さには感心すら覚える。だが左足を潰された状態では走るどころか立つことすらできず、黒田は芋虫のように這いずり回っていた。


 さて、ここからどう料理してやろうか。しかしこれだけ喚かれると、そろそろ誰か駆けつけてきそうだな。また隠れたりするのは面倒だし、ひとまず場所を変えよう。どこか近くにお誂え向きの場所は……。



「おっ」



 左方向にトンネルを発見。良いスポットがあるじゃないか。俺は黒田の身体をトンネルの方へ蹴り飛ばした。【怪力】発動中なので、ボールのようによーく飛んでくれた。



「あっ……がっ……!!」



 ちょうどトンネルの真ん中あたりで黒田の身体は止まった。ここならしばらくは誰かに見られる心配もないだろう。俺は一歩一歩、黒田のもとへ近づいていく。もはや黒田は動くことすらできない有様だった。



「やめて……くれ……俺には……妻と娘が……いるんだ……俺が死んだら……誰が二人を……支えてやれば……」



 俺は黒田の目の前で足を止め、わざとらしく考え込む様子を見せた。



「うん。確かにお前の家族は何も悪くないし、お前が死んだらきっと悲しむよな。俺も鬼じゃないし、命までは取らないでおくか」



 一瞬、安堵の表情を浮かべる黒田。だが――



「なんて言うと思ったかぁ!?」



 俺は黒田の顔面を乱暴に掴んで持ち上げ、トンネルの壁に激しく叩きつけた。



おかげさまで日間ランキングに載りました!読者の皆様ありがとうございます!引き続きよろしくお願いします!

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