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【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】  作者: ダイヤモンド


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安い挑発

「よってお前の〝スキルを奪うスキル〟は私には何の意味もない。つまり私はお前にとって天敵というわけだ」

「天敵か……どうだろうな」



 仮転生して最初に遭遇したのが夜神だったら詰んでただろうが、今の俺には【略奪】の他にも六つのスキルがある。圧倒的に不利な相手というわけではない。



「今の自分に不満はないが、私も生前は普通の女の子。スキルという魔法のような力に少なからず憧れはあった。だから様々なスキルをこれ見よがしに使っているお前を見ていると、無性に腹が立つ」

「とんだとばっちりだな……」



 こいつが俺に勝負を挑んできたのは、そういう私怨も混じってそうだ。



「さて、長々と話に付き合わせてしまったが……。お前はよかったのか?」

「……げっ!?」



 真上のタイマーを見ると、既に五十分が経過していた。まずい、あと十分しかない。現時点で夜神は2010pt、俺は435pt。もはや正攻法で逆転するのは不可能に近いだろう。


 ならばやはり〝ゲームを続行できなくなったプレイヤーは敗北となる〟というルールを利用するしかない。つまりは夜神と闘って勝つことだ。命は奪えないまでも戦闘不能にさえできればいい。


 だが夜神は強い。果たしてこの僅かな時間でそれができるかどうか。いやそれ以前に問題なのが……。



「慌ててポイントを取りに行かないあたり、やはり私を倒すのが狙いか。しかしさっきも言った通り、私は平和主義者でな」



 そう、夜神に闘う気が全くないことだ。あの足の速さで時間切れまで逃げ回られたら打つ手がなくなる。なんとかして俺と闘うように仕向けなければ……!!



「私はコイン集めを再開させてもらう。もう私の勝利でほぼ確定だろうが、念には念を入れておかないとな。お前も最後まで諦めず――」

「そんなに怖いのか? 俺と闘うのが」



 この場から立ち去ろうとした夜神を、駄目元で挑発してみる。すると夜神は足を止め、こちらを振り向いた。



「……今、なんと言った?」



 おっ、効いてる? なら更に煽ってみるか。



「平和主義者とか何とか言い訳してるけど、本音は俺と闘うのが怖くて怖くてしょうがないんだろ? まあ無理もないか。スキルを一つも持たないお前にとって、複数のスキルを持つ俺は脅威だろうしな。一体いくつスキルを持っているのか、まだ強力なスキルを隠し持っているんじゃないか、本当はそんな不安でいっぱいなんだろ? もっと自分に正直になっていいと思うけどなー」



 夜神は眉をピクピクさせながら、俺を睨みつけた。



「なるほど……なかなか良い度胸をしている……これは身の程を思い知らせてやる必要がありそうだな……!!」



 どうやら闘う気になったようだ。意外とチョロかった。



「この私を侮辱したこと、後悔させてやろう!!」



 夜神が俺の方へ走り出す。やはり速い――が、想定の範囲内。俺は【氷結】を発動し、前方の地面に氷を張った。


 今のあいつは怒りで冷静さを失い、足下など見えていないはず。氷で盛大に足を滑らせたところで【怪力】の拳を可能な限り叩き込む。いくら身体が頑丈でも、俺の拳を何発も喰らえばタダでは済まないだろう。



「……何!?」



 だが俺の目論見は見事に外れ、夜神は地面の氷の手前で大きく跳躍した。こいつ、冷静さを失ってなどいなかったのか!


 しかし夜神は俺の頭上を飛び越え、遙か後方に着地した。勢い余って飛びすぎた? いや違う、奴の狙いは――



「はあっ!!」



 夜神は目の前にあった巨大な岩に正拳突きを炸裂させ、木っ端微塵にした。なんて破壊力だ、俺の【怪力】に勝るとも劣らないだろう。そして夜神は足下に落ちていた金のコインを拾い上げる。どうやら岩の下にあったようだ。



「おい、どういうつもりだお前!」

「ん? さっき言っただろう、コイン集めを再開させてもらうとな。私の狙いは始めからこのコインだ」

「俺と闘う気になったんじゃないのかよ……」

「そんなことは一言も言っていないだろう。何度も言っているように、私にお前と闘う気はない。まさか私があんな安い挑発に乗ったと思っていたのか?」

「くっ……!!」



 またしてやられた。全然チョロくなかった。



「では、せいぜい頑張れ」



 そのまま夜神は走り去り、あっという間に見えなくなった。こうなってはもう夜神との闘いは望めないだろう。夜神を戦闘不能にしてゲームを続行できなくさせる作戦は失敗に終わってしまった。


 残り時間は八分。考えろ、何か他に手はないか。夜神とのポイント差は1500以上あるし、もう悠長にコインを集めている場合ではない。となると高ポイント狙いで強力なモンスターを倒しまくるしかないが、いつどこにモンスターが出現するかは分からない以上――いや、待てよ。


 俺は一つの仮説を立てた後、山なりになっている地点に移動し、荒野全体を見渡す。これまで俺が闘ったモンスターは全て、まるで俺を待ち構えていたかのような出現の仕方だった。考えてみたら不自然だ。


 そしてモンスター出現の際には必ず魔法陣が浮かび上がる。つまりモンスターはランダムに出現しているのではなく、予め特定の場所に魔法陣が仕掛けられていて、プレーヤーの接近に反応してその魔法陣が浮かび上がるシステムになっているのではないか。




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