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部活の強制

 昼休みになり、売店まで昼飯を買いに行こうと席を立った矢先のこと。



『二年A組、月坂秋人君。職員室まで来てください』



 校内放送で俺の名前が呼ばれた。この声は担任の先生だ。



「あちゃー。とうとう女子更衣室の盗撮がバレたみてーだな秋人」

「んなことするか!」



 圭介にツッコミを入れつつ、俺は職員室に向かった。以下、俺と先生の会話。



「月坂君って、まだどの部活にも入ってないでしょ?」

「ええ、まあ」

「月坂君は転入生だから知らないかもしれないけど、この学校の生徒は原則として何らかの部活に所属しないといけないって校則があるのよ」

「えっ……マジですか」



 初耳だ。春香はアイドル部だからいいとして、俺は完全にフリーである。帰宅部に所属してます、なんてベタな言い訳は通じないだろう。



「こういうことはもっと早く伝えるべきだったわね、ごめんなさい。何か持病とか家庭の事情とか、特別な理由があれば無理に入る必要はないんだけど」

「それは……ないですけど」



 転生杯という命を賭けた闘いの真っ最中なので免除してください、なんて言えるはずもなく。



「月坂君は何かやりたいことはないの? スポーツとか音楽とか」

「……特にないですね」

「この際だから探してみたら、自分のやりたいこと。部活動の経験は必ず将来に活かせると思うから。はい、入部届。一週間以内に決めてくれると助かるわ」



 先生から入部届の紙を受け取り、俺は職員室を出た。



「部活、ねえ……」



 思わず溜息が出る。まったく、なんでそんな校則があるのやら。校長に抗議したいところだが、人間性を育てる為とか社会人の基礎を学ぶ為とか、そういういかにもな理由をつけられて追い返されるのがオチだろう。将来に生かせるなんてのも疑わしいところだ。


 もうお察しかもしれないが、生前の高校時代は帰宅部だった。身体を動かすのはわりと好きな方だが、俺に運動部のノリは絶対に合わないという自信があったし、かと言って文化部に入る気もなかった。当時の高校には部活を強制する校則とかもなかったしな。




 放課後になったので、とりあえず俺は部室棟の中を見て回ることにした。まず運動部は絶対ナシ。ノリが合わない以前に、部活動で体力を無駄に消耗して転生杯に影響が出たら元も子もないからだ。


 となると文化部ということになるが、吹奏楽部や軽音部といった音楽系もナシ。運動部並みに大変と聞くし、そもそも俺は何の楽器もできない。というか運動部にしろ文化部にしろ、真っ当な部活だと高二の生徒が入ったら確実に浮くだろう。


 よって俺が狙うのは、今にも廃部寸前でまともに活動していない、幽霊部員でも問題なさそうな部活だ。どの学校にもそういう部が一つや二つはあるものだし、それを探すとしますか。


 囲碁部、写真部、漫画研究部……。俺は廊下を歩きながら、各部室の窓を軽く覗いてみる。どこも思ったより人がいるな。なかなか俺の眼鏡に適う部活は見つかりそうにない。



「!」



 ふとアイドル部の部室が目に留まり、俺はその前で立ち止まった。カーテンが閉まっているので中の様子は見えないが、楽しそうな声は聞こえてくる。そういや以前、大勢の生徒に追い回されていた俺が逃げ込んだのもここだったな。あの時は春香がバケツにおしっこをしそうになって驚いた――



「あら、秋人じゃない」



 噂をすれば、後ろから歩いてきた春香に声を掛けられた。



「昼休みに校内放送で呼び出されてたけど、何かあったの? 他の生徒の財布を盗んだのがバレたとか?」

「んなことしてねーよ!」



 春香といい圭介といい、なんで俺が何かやらかしたこと前提なんだよ。



「春香はこれから部活か?」

「そうよ。秋人はこんな所で何してるの?」

「ああ、実は――」

「あっ、分かった。アタシ達の着替えを覗きに来たんでしょ?」

「ちげーよ! 偶々通りかかっただけだ! 先生から部活に入るように言われてどの部にするか見に来たんだよ!」

「まったく、呆れたものね。普段アタシがあんなに裸を見せてあげてるのに、まだ物足りないのかしら」

「人の話聞いてる!?」

「しょうがないわねー。特別サービスでカーテンを少しだけ開けといてあげるから、バレないように覗きなさいよ。それじゃ」

「おい!?」



 ヒラヒラ手を振りながら、春香は部室の中に入っていった。直後、カーテンが動いて僅かな隙間が生まれた。春香の奴、本当にやりやがった。あの隙間から覗けば、アイドル部員達のあられもない姿が――



「おらぁっ!!」



 俺は廊下の壁に額を激しく打ちつけ、煩悩を掻き消した。駄目だろそれは、春香が特殊なだけで普通の女子は着替えを覗かれたらショックに決まってる。危うく変質者になるところだった。



「おっ、秋人じゃねーか」



 俺は声の方に顔を向ける。今度は圭介か。



「うおっ!? なんか額から血が出てるぞ秋人! どうしたよ!?」

「……何でもない。それより圭介は何しに来たんだ?」

「そりゃあ、アイドル部員の着替えを覗きに来たに決まってんだろ」



 変質者がここにいた。




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