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空飛ぶカーペット

『ヒャッホオオオオオウ! オイラは自由だ、自由になれたんだ! イエエエエエイ!』



 カーペットが奇声を発しながらグルグル空中を旋回する。なんか思ってたのと違う。つーか喋れんのお前? 佐竹の文房具共には言語能力とかなかったのに。


 それはさておき、見たところ空を飛べる力があるようだ。こいつを上手く使いこなせれば貴重な移動手段になるのは間違いない。



「おいカーペット、俺を乗せて空を飛んでみてくれ! 空飛ぶ絨毯みたいな感じで!」

『は? オイラに命令すんなボケ』



 こ、こいつ……!!



「何だその態度は!? いいか、お前に命を与えたのは俺だ! つまり俺はお前のご主人様なんだぞ!」

『そんなの知らないね。オイラはな、我が物顔でオイラを踏みつける人間共が大っ嫌いなんだよ! だから人間の命令なんざ絶対に聞かねえ!』



 そんなこと言われても、カーペットが踏みつけられるのはしょうがないだろ。



『もう人間共に見下ろされるのはゴメンだ! 今度はオイラが空から人間共を見下ろしてやるぜ! ヒャッホオオオオオウ!』

「あっ、待てコラ!!」



 カーペットはどこかへと飛んでいってしまった。貴重な移動手段が……。



「なにはともあれ、成功おめでとう秋人」

「いや失敗だろ……」



 しかし空飛ぶカーペットなんて一般人に目撃されたら大騒ぎになりそうだな。まあきっと支配人がなんとかしてくれるだろうし放っとくか。



「っと、そろそろ時間だな」

「……今日もジム?」

「ああ。たまには真冬も一緒にどうだ?」

「絶対に嫌」

「ははっ、そりゃ残念だ」



 裏庭の片付けを済ませた後、俺はアジトを出た。ここ最近、俺は毎日のようにジムに通っている。今日は休日だから長時間滞在できそうだ。ちなみに春香も誘ったがパスとのこと。春香は普段からアイドル部で身体を動かしてるだろうし、わざわざジムに通う必要もないか。


 ニーベルングとの闘いを終えてからというもの、俺は昼山との決闘を度々思い返していた。あいつは強かった……俺が今まで闘ったどの参加者よりも。ビルの崩壊によって闘いは中断されたが、もしあのまま続けていたら、一体どうなっていたことか。


 しかしあの時の俺は、スキルの負荷の影響で身体の状態が最悪だったから――いや、こんなのは言い訳だ。どんな状態だろうと敵は待ってはくれない。そんな言い訳が通じるほど転生杯は甘くない、それは俺も分かっている。


 それに身体の状態を考慮しなかったとしても、俺と昼山には身体能力と戦闘センスに圧倒的な差があったことは明白だ。しかも昼山はまだ全然本気を出していなかった。あいつが全力で闘ったら、果たして俺は勝てるのだろうか……。


 基本的に一人につき一スキルという転生杯において、俺には複数のスキルを所持しているという大きなアドバンテージがある。実際これまでの闘いも、そのアドバンテージを活かして勝利を重ねてきた。だが、それに慢心している自分はいなかったか? 昼山戦はその慢心が招いた結果ではなかったか? そんな考えが度々頭を過ぎる。


 だからこそ今一度原点に立ち返り、ジムで身体を鍛えようと思い至ったわけだ。戦闘センスはともかく、身体能力の差は鍛錬で十分に埋められる。



「いいよ秋人くん!! もっとだ!! 己の限界を超えるんだ!!」



 ジムトレーナーの高宮さんが、ランニングマシンで走る俺に熱い声援を贈る。前にも話したが、何故かこの人は俺に対して一際熱心に指導してくれる。



「ナイスラン!! 今日も絶好調だね秋人くん!!」

「ありがとうございます」



 三十分弱のランニングを終え、俺はタオルで汗を拭う。最初の頃は高宮さんのこの感じには面食らったけど、もうだいぶ慣れてきたな。



「最近は秋人くんが毎日来てくれるようになって、僕も毎日幸せだよ! それまで長らく会えない日々が続いてたから、僕はどれだけ寂しかったことか……!」

「そ、そうですか」

「まあ秋人くんも高校生だし、勉強とか部活とか色々あって忙しいだろうから、ジムに来られないのも仕方ないよね……」



 高校生活もだが、氷の牢獄に閉じ込められたりニーベルングとの闘いだったりで、ジムどころじゃなかったからな。



「……ん?」



 ふと、高宮さんのネームプレートに目が留まる。今初めて気付いたが、その苗字の欄には「堀北」と書かれてあった。高宮じゃない……?



「ああ、そう言えば秋人くんにはまだ話してなかったね」



 俺の目線で勘付いたのか、高宮さんが言った。誰かのネームプレートと間違えた、というわけではなさそうだ。となると考えられるのは……。



「もしかして結婚されたんですか? おめでとうございます」



 しばらく会わない間に、まさかそんな一大イベントがあったとは。結婚して夫側の苗字が変わるのは珍しいが、そういうケースもあるだろう。これで俺への興味も薄らいでいくだろうし一安心――



「ははっ、逆だよ。離婚して苗字を元に戻したんだ」

「……えっ!?」



 思わず俺は声を上げた。そして素早く頭を下げる。



「す、すみません! なんて無神経なことを……!!」




自転車がパンクしてしまい大ピンチなのでブックマーク・評価をよろしくお願いします。

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