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ストーカー

「あー、気にしなくていいわよ秋人。多分アタシのファンの人達だから」

「……は? ファン?」

「今やアタシはファンクラブができるほどの人気者なんだから。ほら」



 春香がスマホで「はるにゃんファンクラブ」というサイトを見せてきた。いつの間にこんなものが……。



「って、会員数4800人!? 嘘だろ!?」

「ふふーん。凄いでしょアタシ!」



 確かに春香のアイドルとしての素質はズバ抜けてると思うが、たかだか素人の女子高生にこれだけファンがいるってとんでもないな。というか俺もそのファンクラブに入りた――何でもない。



「こんなに人気があるせいか、最近はファンの人達に後を付けられることも増えてきたのよね。だから何も問題ないわ」

「いや大問題だろ!! 立派なストーカーだからそれ!!」

「別にいいじゃない、害があるわけでもないんだし。正直アタシもあまり良い気持ちはしないけど、一々気にしてたらキリがないわ。人気者の宿命ってやつよ」

「いやいや、こういうのは放っとくとどんどんエスカレートしていくぞ……」



 ストーカー共の気配に紛れて転生杯の参加者が襲ってくることも有り得るし、そうでなくとも同居人がストーカーされてるって普通に嫌だ。かと言ってお礼参りをするほどのことでもない。となると……。



「春香、こっちに来い!」

「ちょっ、何よ急に!?」



 ちょうど近くに建物と建物の隙間があったので、俺は春香の腕を掴んでそこに入った。



「大きく息を吸え! プールに飛び込むのをイメージしろ!」

「はあ? なんでそんなこと……」

「いいから!」



 俺は【潜伏】を発動し、春香と共に地面に潜った。このスキルの元所有者である愛城が俺との闘いでジャングルジムを沈めていたように、俺が触れた物体や人物も【潜伏】の効果を受けられるのだ。


 ただし人物を潜らせる場合、その対象者にも〝潜る〟という意識が必要となる。もし必要なかったら敵を強制的に地面に沈めてスキルを解除して窒息死させるという、最強のスキルになっていたのだが。


 そして地面に潜って数秒後、複数の足音が聞こえてきた。



「あれ!? はるにゃんどこ行った!?」

「確かこの隙間に入っていったはず……!!」

「はるにゃーーーん!! 出てきておくれーーー!!」



 地面の上で複数の男の声がする。春香の言う通り、はるにゃんファン(という名のストーカー)だったか。



「つーか何だお前ら!? はるにゃんのストーカーか!?」

「はあ!? 僕ははるにゃんを見守っているだけだ! お前らこそストーカーだろ!」

「一緒にすんなこのストーカー共め!」



 うわ、ストーカー同士で言い争ってる。なんと醜いことか。



「そんなことよりはるにゃんを探さないと!」

「そう遠くへは行ってないよな!?」

「はるにゃーーーん!! どこ行ったのーーー!?」



 ストーカー共が走り去っていくのを確認した後、俺と春香は地面から出た。



「上手く撒けたみたいだな」

「……別にここまでしなくてもよかったのに」

「そう言うなって。あまり良い気持ちはしなかったんだろ?」



 春香は少し照れ臭そうにしながら、小さく嘆息した。



「まあ、一応礼は言っておくわ。でも毎回こんなことしてもイタチごっこにしかならないと思うわよ」

「んー、それもそうだな。何か手を考えるか……」



 って、今はストーカーより転生杯の参加者だろ。いつ襲ってきてもおかしくないし、常に警戒しておかなくては。しかし結局アジトに着くまで、その正体不明の参加者が姿を見せることはなかった。




 アジトから帰宅し、俺は作戦会議室に立ち寄る。そこでは真冬が複数のモニター画面を使って探索を行っている最中だった。



「おかえり秋人」

「ただいま。それで……どうだ? 千夏の行方は」



 俺が尋ねると、真冬は力なく首を横に振った。



「ごめん。手を尽くしてはいるんだけど……」

「……そうか」



 正直、真冬の方から何の連絡もない時点で結果は分かっていた。もし千夏が見つかっていたらすぐに知らせてくれるはずだ。



「放課後に現れたっていう参加者も、まだ見つかってない。ごめん……」

「そんな何回も謝らなくていいって。むしろ真冬に頼りっぱなしで、こっちが謝りたいくらいだ。あまり気負いすぎないでくれよ」

「……ん」



 ふと、真冬の手元にある小型の機器に目が留まった。何だろこれ。見たところ破損しているようだが……。



「真冬、これは?」

「ニーベルングとの闘いの時に広瀬から奪ったUSBメモリ。中には参加者の情報が入ってたんだけど、破損してデータが読み込めなくなった」

「参加者の情報、か……」

「復元を試みてはいるけど、あまり期待はしないで」

「いーや、めっちゃ期待しとく。真冬ならできるさ」

「……気負いすぎないでとか言っておいて、プレッシャーかけるのどうかと思う」

「ははっ、冗談だよ」



 その時、廊下から足音が聞こえてきた。春香か。



「いってきまーす!」

「いってらっしゃー……っておい、どこ行くんだ春香!?」



 俺は慌ててドアを開けて春香を呼び止めた。



「どこって、晩ご飯の買い物だけど?」

「何考えてんだ、参加者が現れたばかりなんだぞ! 今一人で外に出るのは危険だ! できるだけ危険を冒さないのが春香のモットーなんだろ!?」




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