真冬の罪滅ぼし
「……ぶっ!?」
やがてドアが開き、思わず俺は噴き出した。案の定それは真冬だったが、俺が驚いたのは、真冬が全裸だったことだ。真冬は顔を真っ赤にし、大事なところを隠しながら、浴室に入ってきた。
「ままま真冬!? どうしたんだよ!?」
裸の真冬が風呂に入ってきたのは過去二回。一回目は春香から無理矢理脱がされて。二回目は真冬の復讐に協力した見返りとして。自分から入ってきた以上は何か理由があるのだろうが、今回はまるで心当たりがない。
「秋人に元気を出してもらうにはどうすればいいかって真冬が相談してきたから、だったら秋人と一緒にお風呂にあげたらって言ったのよ」
「そんなこと言ったのか!?」
「だけどアタシはあくまで提案しただけ。そうするって決めたのは真冬自身よ」
いやしかし、俺に元気を出してもらうというたったそれだけの為に、真冬があられもない姿を晒すとは思えない。他にも何か理由がありそうだ。
「やっぱり千夏のことは、私に一番責任があるから……!!」
「えっ……?」
「その罪滅ぼしの為にも……せめてこれくらいはさせて……!!」
そうか、真冬は千夏を止められなかった罪悪感から、こんなことを……。
「真冬。今朝も言ったけど、真冬は何も悪くない。だから真冬が責任を感じる必要は全く――」
「まーまー、いいじゃない秋人。こうでもしないと真冬の気が収まらないんでしょ。それに秋人だって真冬の裸が見られて嬉しいでしょ?」
「当たり前だろ」
あっ、つい本音が。正直俺としても拒否はしたくない。真冬の裸が見られるのなんて次はいつになるか分からないし。真冬には申し訳ないけど、今の内にしっかり目に焼き付けておこう。真冬の裸も、春香とはまた違った魅力があるんだよな……。
「入る……から……!!」
「ん?」
「今日からは……私も二人と一緒に……お風呂に入るから……!!」
「は!?」
「それくらいしないと……罪滅ぼしにはならないから……!!」
「ほ、本気で言ってるのか!?」
「ん……本気……!!」
それはつまり今日だけじゃなくこれから毎日、俺は二人の美少女と風呂に入り、裸を拝めると……!?
「う……うおおおおおおおおおおーーーーー!!」
興奮が最高潮に達した俺は立ち上がり、雄叫びを上げた。落ち込んでいた自分が馬鹿馬鹿しくなるほどに。
「わっ、すご! 秋人のちん○んが史上最大に凄いことになってる! ほら見て真冬!」
「……!!」
真冬が俺の大砲を凝視する。直後、真冬の頭からボンッという爆発音が響き、真冬は倒れたのであった。なんかデジャヴだなこれ。
斯くして俺は、心も身体も完全復活を遂げたのであった。
とまあこんな波乱の出来事があった後、真冬から作戦会議室に来るように言われた。何か大事な話があるそうだ。
「すまん、遅れた」
「…………」
部屋に入るや否や、真冬がジト目で俺を睨んできた。
「な、何だよ真冬」
「別に。どうせ部屋で変なことしてたんだろうなと思って」
「うっ……」
そりゃ真冬達の裸を見た直後だし、アレするのは必然というものだ。
「なになに? 変なことって」
春香が純真無垢な眼差しで聞いてくる。中身が6歳の春香にそんなの言えるわけがないだろう。
「ど、どうでもいいだろそんなこと。それより真冬、大事な話って何だ?」
「……これを見てほしい」
真冬がモニターに映像を映し出した。どうやらニーベルングビルの屋上のようだ。今となっては崩壊してしまったので、過去の映像だと思われる。
「これは四日前のニーベルングとの闘いの最中に、私のドローンが捉えた映像」
「えっ、真冬ってドローンなんて持ってたのか?」
「ん。というか今までもドローンは普通に使ってた。監視カメラの視野にも限界があるから。基本的に自動飛行で何が映るか分からないし、小型無人機等飛行禁止法に引っ掛かるからそんなに堂々と飛ばせないけど」
「そ、そうか……」
監視カメラのハッキングも立派な法律違反じゃないかと思ったが、そこはツッコまないことにした。バレなければ犯罪ではないという考えなのだろう。
「ドローンの話はいいでしょ。それよりこれ、屋上に誰かいるわね」
「ん」
真冬が映像を拡大する。そこには二人の人物が映っていた。一人は向井。そしてもう一人は――
「千夏……!!」
そう、千夏だった。しかし俺達の知っている千夏とは明らかに雰囲気が違うのが映像からも伝わってくる。この時の千夏は既に一度死に、転生杯の参加者として蘇った後なのだろう。その証拠に千夏の右腕に痣らしきものが見える。
「やっぱり千夏は向井に殺されたのか……?」
「その場面は捉えられてないけど、十中八九間違いないと思う」
真冬が映像を再生させる。千夏と向井の闘いが繰り広げられるが、戦況は千夏が圧倒していた。なにより驚いたのは、千夏が俺の【氷結】を使っていたことだ。
それだけではなく、確認できる限りでは向井の【無効】まで使っている。途中でドローンが屋上から遠ざかっていったので、決着の場面までは見られなかった。
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