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自害

「貴女……生前はイジメを苦に自殺したんでしょ……?」



 もう少しこの管制室を調べてみようと真冬が思い立った矢先、広瀬が弱々しい声でそう口にした。



「……驚いた。そんな情報まで手に入れてたなんて」

「これはただの勘よ……貴女は私と同じニオイがするもの……。私もそう……中学生の時……イジメに耐えられず……自ら命を断った……」



 真冬は広瀬から自分と近い人間性を感じてはいたが、どうやら生前の死因まで同じだったらしい。



「かつての私は……親からも周囲からも……誰からも必要とされていなかった……。そんな私を……向井様は必要としてくれた……仲間として受け入れてくれた……。貴女にもいるでしょ……この人の為ならどうなっても構わない……そう思える相手が……」



 真冬の脳裏に、秋人の顔が浮かぶ。



「……何が言いたいの?」

「別に……ちょっとした恋バナよ……」



 カチッ、と音がした。真冬の意識が逸れた一瞬の隙に、広瀬が左ポケットに手を入れて何かのボタンを押したようだ。真冬に動揺が走る。



「何をしたの!?」

「上を見たら……分かるんじゃない……?」



 天井に目を向けると、真冬は驚愕した。子供部屋にあったものと同じ時限爆弾が天井に取り付けてあったからだ。広瀬がそれを起動させたらしい。しかも今回はタイマーが残り時間30秒で設定されている。



「まさか……!!」

「貴女の思い通りには……ならないってことよ……。向井様の為なら……この命……惜しくはない……」



 分身を使った自害のフリで一度は真冬を出し抜いた広瀬であったが、今度は本気のようだ。広瀬は最初からこのような事態も想定していたのだろう。



「ひと思いに殺してくれたら……こんなことせずに済んだのに……。その甘さはいつか必ず……命取りになるわよ……」



 またハッキングして時限爆弾を停止させる? いやそんな時間はない。広瀬を抱えて脱出する? 今の真冬の状態でそれは無理だ、確実に逃げ遅れてしまうだろう。



「……っ!!」



 もはや選択肢は一つしかなかった。真冬は広瀬を置いて、管制室を飛び出した。



「それでいい……。誰も殺せない貴女が……転生杯でどこまで生き残れるか……楽しみにしておくわ……」



 広瀬は時限爆弾に目を向ける。タイマーは既に5秒を切っていた。



「お役に立てず……申し訳ありません……向井様……」



 広瀬の頬を涙が伝う。そしてタイマーが0になり――大爆発が起きた。必死に逃げていた真冬は、その爆風に巻き込まれて床を転がった。



「うっ……」



 やがて真冬は立ち上がる。幸い軽傷で済んだ。それから走ってきた道を引き返し、管制室のあった場所に戻った。そこにあった全てのコンピュータが木っ端微塵となり、広瀬の身体も当然、跡形もなく消し飛んでいた。



「…………」



 広瀬との闘いに勝利したことを喜ぶべきか、それとも広瀬の記憶から情報を引き出せなかったことを嘆くべきか。しばらくの間、真冬はその場に呆然と立ち尽くしていた。




  ☆




 ――ニーベルングビル二十一階・トレーニングルーム――



 昼山とクマを相手に、俺の劣勢は続いていた。俺は【氷結】を発動――



「氷による攻撃か」



 氷の槍を生成して昼山に放つが、いとも簡単にかわされる。そのまま昼山が俺に突っ込んできた。俺は【怪力】を発動して対抗――



「パワーを上げて拳で対抗か」



 昼山は身体を逸らして俺の拳を回避。そして昼山の背後に控えていたクマが、がら空きとなった俺の腹部に一撃を叩き込んだ。



「がっ……!!」



 俺は派手に吹き飛ばされた。瞬時に【氷結】を発動して山勘で腹に氷を張ったので、なんとかダメージを最小限に抑えられた。だが既に身体はボロボロで、いつ倒れてもおかしくない状態だ。



「しぶといな。俺達を相手にここまで持ち堪えたのはお前が初めてだ」

「……そりゃ、どうも」



 俺の手が読まれ始めている。先程の攻撃も完全に見切られていた。昼山は身体能力もさることながら戦闘センスも卓越している。本当に厄介な相手だ。



「……っ!!」



 立ち上がろうとした時、不意に強烈な頭痛が襲い、俺は床に手をついた。くそっ、またこれか。こんな時まで……!!



「どうやら体調が悪いようだな。どうせなら万全のお前と闘いたかったものだ」

「ハッ。この程度、ちょうどいいハンデだ……!!」



 笑みを浮かべながら、俺は立ち上がる。所詮は強がりでしかないが、弱音を吐いたところでどうにもならない。



「……面白い男だ。朝野が言っていた通りだな」



 昼山の口から思いがけない名が出てきたので、俺は衝撃を受けた。



「お前、朝野を知っているのか!?」

「おっと、口が滑った。今のは忘れてくれ」



 どういうことだ、何故こいつが朝野のことを……。まさか朝野もニーベルングと関わりがあるのか? しかしあの朝野に限ってそんな……。


 いや、余計なことは考えるな。昼山は集中力を欠いた状態で勝てる相手じゃない。今は昼山を倒すことだけ考えろ。



「お前の闘志は大したものだ。だが、このまま闘いを続けても結果は見えている。潔く降参するのも一つの手だと思うが」




ちょっとメンタルがやられる出来事がありましたが、なんとか更新がんばります……。

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