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【守護霊】と【洗脳】

「……焦っているな」



 昼山は防御態勢もとらず、その場から動かない。確実に何かあるが、怖じ気づくわけにはいかない。まずは一発俺の拳をお見舞いして――



「!?」



 突然俺と昼山の間に巨大な〝何か〟が出現し、俺は反射的に足を止めた。



「……クマ!?」



 そう、それは動物のクマだった。しかも一般的なクマより数段大きい。何故いきなりクマが……昼山のスキルか!?



「俺のスキルは【守護霊】。俺は〝ワン〟を守護霊として呼び出した。霊と言っても実体はあるから気を付けることだ」



 ワンというのはこのクマのことだろう。名前まで付けてるあたり、昼山とは何か縁のある動物だと思われる。



『ガウウウウウ……!!』



 凄まじい形相で俺を睨みつけるクマ。見るからに凶暴そうだが、その目からは昼山を絶対に傷つけさせないという強い意志を感じる。その名の通り、昼山を守護する霊というわけか。



「先程の発言は訂正しよう。俺〝達〟を倒すことができたら、な」

「……上等だ」




  ☆




 秋人と昼山が戦闘を開始した頃、春香は秋人の指示通り一階から二十階の間を駆け回っていた。先程の向井の発言によれば千夏は二十階より上にいることになるが、春香には知る由もなかった。


 しかし奇妙なのは、ニーベルングの一般の組員が一人も見当たらないこと。深夜とはいえこれだけの騒ぎが起きているのだから、一人くらい姿を見せてもよさそうなものだ。


 おそらくこの状況を見越して向井がホテルなどに隔離したのだろう。余計な邪魔が入らないようにするためだろうが、秋人達にとっても一般人を巻き込まずに済むので好都合であった。


 つまり現在このビルにいるのは、秋人・春香・真冬・千夏と向井・広瀬・昼山・兵藤の八人、そして囚われの身の子供達だけだと思われる。



「!!」



 春香が十三階に上がった矢先、春香の痣が反応した。このフロアに向井達の中の誰かがいる。そしてその近くに千夏、もしくは子供達がいる可能性が高いと春香は考えた。


 間もなく春香は「図書室」と書かれた部屋の前で立ち止まった。人の気配がする。この中にいるのは間違いない。また何かの罠かもしれないが、躊躇っている場合ではない。春香は意を決してドアを開け、図書室に足を踏み入れた。


 直後、部屋の奥からレーザーのようなものが飛んできた。春香は瞬時に身を翻してそれを回避する。外れたレーザーは壁に直撃し、巨大な穴を開けた。春香は思わず身震いをする。直撃していたら確実に死んでいた。


 部屋の奥に目を向けると、そこには一人の子供が立っていた。あの子がレーザーを放ったと見て間違いない。そしてその背後には、大勢の子供達がうずくまっている。何者かが子供部屋からこの図書室に移動させたのだろう。それはおそらく――



「ちっ、月坂秋人じゃないのか。残念だな」



 子供達の中心には、悠然と椅子に腰を下ろす白衣姿の男がいた。もはや何者か疑いようもない。



「あんた、兵藤ね!?」

「そう大声を出すな。確かに私が兵藤千里だ」



 右腕の〝14〟の痣を見せながら兵藤が名乗った。春香の脳裏に、兵藤が子供達を痛めつけていた映像が蘇る。今すぐぶん殴りたい衝動に駆られたが、まずは子供達の避難が最優先だ。



「みんな、すぐにこの部屋を出て!!」



 春香が子供達に呼びかける。しかし何も反応がない。まるで人形のようだ。



「どうしたの!? その男は危険よ!! 今すぐ――」

「無駄だ、こいつらにお前の声は届かない。私のスキル【洗脳】によって、こいつらの意識は私の手中にあるのだからな」

「洗脳……!!」



 先日秋人と闘った里菜もこのスキルで操られていたのだろう。ならば直接助け出そうと春香は踏み出すが――



「動くな!!」



 兵藤の怒号に、思わず春香は足を止めた。



「私の話を聞いてなかったのか? こいつらの意識は私の手中にあると言っただろう。つまりその気になれば舌を噛み切らせることも可能ということだ。この意味分かるな?」

「……!!」

「どうやら理解したようだな。そうさせたくなければ不用意に近づかないことだ。私としても貴重な実験道具を失いたくはないのでね」



 子供達を人質として使われることは当初から危惧していたが、その言葉通りの状況になってしまった。これでは春香も迂闊に動けない。



「しかしガッカリだ、月坂秋人が来てくれることを期待していたというのに。悪いがお前には全く興味がない。大人しく立ち去るなら見逃してやってもいい」

「誰が!!」



 春香は拳を握りしめ、鋭く兵藤を睨みつける。



「アタシは絶対に許さない!! 罪のない子供を傷つけ、道具のように扱うアンタを!! アンタはアタシが倒す!!」

「ははっ、こんな状況でよく吠える」



 兵藤は相変わらず余裕の表情で、春香の怒り顔を眺める。



「気が変わった。お前を殺して月坂秋人を誘き出すとしよう。無論、闘うのは私ではないがね」



 兵藤は先程レーザーを放った子供に目をやる。



「さあやれ、実験体23番。あの女を葬るんだ」

「……はい。兵藤様」



 子供が頷く。その姿はまさに操り人形のようだ。


 状況は圧倒的不利だが、策はある。千夏のことも心配だが、秋人がなんとかしてくれると信じよう。今やるべきことは、子供達を悪魔の手から救い出すこと。そう春香は自分に言い聞かせた。




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