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モグラ女

 そっちがその気なら、俺も受けて立ってやる。公園には他に誰もいないし、昨日のように一般人に迷惑をかけることもなさそうなので、思う存分闘える。


 俺はスキル【怪力】を発動。そして拳を握りしめ、愛城に向けて駆け出した。一撃で終わらせる!


 だが俺の拳が炸裂する直前、まるで水中に潜るかのように、愛城の姿が地面の下へと消えた。今のを見て確信した、こいつはスキルを使って地中を移動できるようだ。


 俺は地面を凝視しながら、できる限り動き回る。棒立ちになればその瞬間を狙われる。奴はどこから出てくる……!?



「いだっ!!」



 突然、俺の左足に激痛が走った。愛城が地中から顔半分と腕だけ出して、俺の左足にナイフを突き刺したのだ。



「このっ……!!」



 俺は右足で愛城の顔に蹴りを入れようとしたが、またすぐ地中に潜られてしまった。一発で仕留めるのはやめて、まずは俺の動きを奪う作戦に切り替えたか。


 直後に今度は右足を刺され、また地中に逃げられる。駄目だ、反応が追いつかない。まだ動けなくなるほどの致命傷にはなっていないが、これが何度も続けば俺はいずれ立つことすらできなくなるだろう。


 とにかく動き続けろ。もし足を掴まれて転倒すれば刺され放題になってしまう。漫画のキャラみたいに近づいてくる気配を察知して避けるとか俺には無理だしな。


 だが両足を刺されたせいで段々動きが鈍くなっているのが自分でも分かる。何か手を打たなければ……!!



『秋人、ジャングルジムに登って!』

「は!? なんでそんなこと――そうか!」



 真冬の指示通り、俺は両足の激痛に歯を食いしばりながらジャングルジムの天辺まで登った。ここなら地中からの攻撃も届かない。考えてみれば簡単なことだったが、ナイフを避けることで頭が一杯だったので視野が狭まっていた。サンキュー真冬。


「はっはっは! 高所に避難されたらどうしようもないだろモグラ女! 悔しかったら地上に出てきて正々堂々闘ったらどうだ!?」



 俺はあからさまに愛城を挑発してみるが、地中から出てくる様子はない。さすがにそこまで単細胞ではないか。しばらく膠着状態になるかと思われたが――



「どわっ!?」



 間もなくジャングルジムが大きく傾き始めた。まさかジャングルジムを持ち上げてるのか!? っていやいやそんなわけがない。


 大きくバランスを崩した俺は、ジャングルジムから投げ出されてしまった。その寸前、ジャングルジムが下部分から地中に沈んでいくのが見えた。まさかスキルを使ってジャングルジムを沈めたのか!? そんなことまで……!!


 俺の身体が地面に叩きつけられるのと同時に、待ってましたとばかりに愛城が地中から飛び出し、俺の横腹に深くナイフを突き刺した。



「ぐああっ!!」



 俺の悲鳴を聞いて、不気味に微笑む愛城。だが俺はこの瞬間を待っていた。俺は左手で愛城の右腕をがっちりと掴む。ようやく捕まえた。



「なっ!! まさかワザと……!?」

「肉を斬らせて骨を断つ、ってな……!!」



 あああああ痛い!! 痛いけど耐えろ月坂秋人!! 俺は右の拳を握りしめ、愛城の腹部に炸裂させた。



「がはあっ!!」



 血を吐きながら盛大に地面を転がる愛城。【怪力】でパワーアップした俺の一撃、タダでは済まないだろう。



「ぐっ……よ……よくも……!!」



 まだ息があるのか。今ので決めるつもりだったが〝痛い〟という意識に引っ張られすぎたせいか、だいぶ威力が落ちたようだ。しかし十分に致命傷は与えられたはず。



『秋人、大丈夫!?』



 真冬の動揺した声に、俺は軽く頷いた。実はあまり大丈夫ではないのだけども。横腹をぶっ刺されたので血が止まらない。今にも絶叫したくなるほどに痛い。



「……どうだ、俺の拳の味は? もう立つこともできないんじゃないか? 降参するなら見逃してやってもいいぞ」



 それでも俺は、敢えて余裕があるように振る舞ってみせる。ここで怯んでは駄目だ。この闘いを乗り切れば、きっと春香が治してくれる。それまで我慢しろ。



「冗談じゃ……ないわよ……!!」



 ゆらりと立ち上がる愛城。ちくしょう、まだ闘う気かよ。とどめの一撃をお見舞いしたいところだが、横腹の激痛のせいで思うように足が前に出ない。



「私は五年前、旦那に崖から突き落とされて死んだ……落下中に見えた旦那の悪魔のような顔が今でも忘れられない……!!」



 口の端から流れ出る血を拭いながら、愛城が語り出す。やけに口調がおばさん臭いなと思っていたが、元既婚者だったか。



「転生杯の参加者として蘇った後、全てを知った……。旦那の犯行がただの事故で片付けられていたこと! 旦那が別の女と再婚していたこと! 私を殺すずっと前から旦那がその女と浮気していたこと! 旦那は私が邪魔だったから殺したのよ!!」

「……それは気の毒だ。で、それらを知ってお前はどうした?」



 赤の他人の過去なんぞ知ったところで何の益もないが、興味本位で俺は尋ねた。



「このナイフで旦那を刺し殺してやったよ、浮気女諸共ね! 私を殺したんだから当然の報いさ! 死んだはずの私を見た時の旦那の顔は傑作だったよ! 死ぬ直前までごめんなさい許してくださいって何度も謝ってた! 浮気女と一緒にあの世に逝けたんだから幸せだったんと思うけどねえ!! アッハッハッハッハ!!」



 狂ったように愛城は笑う。こいつは復讐を果たすことができたわけか。

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