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【無効】のスキル

 現在の千夏の状況は分からないが、千夏の近くに向井達の中の誰かがいる可能性は高い。千夏を助けようとすれば戦闘は避けられないだろうし、俺が千夏を発見するのが望ましい。


 ロボット共の残骸を踏み越え、俺はフロアの中央に立って顔を上げる。このビルに突入する前に真冬から見せてもらった図面によると、居住スペースである一階から二十階までは吹き抜けの構造になっている。


 まず俺は【氷結】を発動し、巨大な氷の槍を生成。続いて【怪力】を発動してその氷の槍を上に向かって思いっきりぶん投げると、二十階付近の支柱に突き刺さった。よし、一発で命中した。仕上げに【入替】を発動し、俺自身と氷の槍の位置を入れ替え、俺は一瞬で二十階に到達した。


 三つのスキルを活用したショートカット、我ながら見事だ。やはりスキルが増えるとできることも増えて――



「!!」



 その時、俺の右腕の痣が反応した。近くに転生者の参加者がいる! すぐに俺は、前方の二十一階に続く階段の途中に立っている一人の男の姿を発見した。そいつも俺の存在に気付いたようだ。



「おや。なにやら下の方が騒がしい気はしていたが、思ったより到着が早かったな」

「お前……向井だな!?」



 一度顔写真で見たから分かる、あいつは向井巧実だ。



「いかにも。私の名は向井巧実。このニーベルングの総帥にして〝10〟の痣を持つ転生杯の参加者だ」



 右腕の痣を誇示しながら向井が名乗った。10の倍数ということは、こいつも雪風と同じ、10人しかいないマルチプルの一人か……!!



「転生杯での君の活躍は聞いてるよ、月坂秋人くん。一度お目に掛かりたいとは思っていたが、まさかこんな形で相見えることになるとはね」



 やはりこいつも俺のことは把握済みか。向井がマルチプルというのは想定外だったが、こんなに早く出くわしたのはある意味ラッキーだった。こいつなら千夏の居場所を知っているはずだ。



「千夏はどこだ!!」

「千夏……? ああ、あの女のことか。たかが一般人の安否でそんなに血相を変えなくてもいいだろう。それとも重度の心配性なのかな?」



 やはり普通に聞いても素直に答えるようなお人好しではなさそうだ。ならば力ずくで聞き出すまで。俺は【怪力】を発動し、向井の方へ突っ走る。



「おやおや。気の短いことだ……」



 向井は余裕の表情で一歩もその場から動かない。俺は右の拳を向井の顔面に炸裂させるが――



「っ!?」



 身体ごと拳を弾かれてしまい、俺は床を転がった。この感覚には覚えがある。里菜ちゃんが俺との闘いで使っていた〝攻撃を無力化するスキル〟だ。まさか……!!



「残念だったな。私のスキルは【無効】。いかなる攻撃も私には通用しない」



 やはりそうか。里菜ちゃんはこいつのスキルを取り込まされて……!!



「まずは落ち着いて、私の話を聞きたまえ。千夏という女なら、現在進行形で必死に上の階へと逃げているよ。私との楽しい鬼ごっこの最中だからね」

「鬼ごっこだと……!?」



 馬鹿げているが、この言い方だとひとまず千夏の命に別状はなさそうだ。



「千夏に危害は加えてないだろうな!?」

「フフッ、まるで悪者扱いだな。こちらは不法侵入された被害者だというのに」

「答えろ!!」

「安心したまえ、彼女にはかすり傷一つ負わせていない。今のところはね……」



 口元を歪める向井。無事に帰すつもりはないという意志が見え見えだ。こいつを千夏のもとに行かせるわけにはいかない。


 しかし問題は、あらゆる攻撃を無効にするこいつをどうやって倒すか。里菜ちゃんの時のように相手の攻撃を利用するような単純な策は通じないだろう。だが今回は手加減する必要がないという大きな利点がある。



「そんなことより、私は君に興味があるんだ。月坂秋人くん」

「俺に……!?」

「そう。だから千夏という女の無謀な行動は我々にとって好都合だった。あの女が危機に瀕すれば、その仲間である君が必ず助けに来るだろうからね。そしてまんまと君は誘き出されたというわけだ」

「ハッ。別に興味を持たれるような要素は何もないと思うけどな」



 今はこいつの話に付き合って、その間に策を練るしかない。攻撃が通用しない以上どのスキルをどう生かすか、それが鍵となる。室内では【潜伏】は使えないし、乗り物もないので【操縦】も無意味。となると使えるのは【怪力】【入替】【氷結】の三つ……。



「そんなことはない。どうやら君は己の価値を理解していないようだ」

「……どういう意味だ、それは」

「聞くところによると、君はいくつものスキルを所持しているそうではないか」

「それがどうした?」

「ほう。否定しないあたり、どうやら本当のようだね。今まで半信半疑だったが、おかげで確証を得られた」



 こいつ、カマをかけやがった……!!



「兵藤の研究によれば、転生杯の参加者を含め人間が所持できるスキルは二つまでが限界だそうだ」

「二つまで……!?」

「そう。それを超えると肉体が負荷に耐えきれなくなり死に至る。にもかかわらず、君が平然としているのは何故だ? 月坂秋人、君は一体何者だ?」

「俺が……何者か……!?」



 いや考えるな。今そんなことはどうでもいい。こいつの言葉に惑わされるな。




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