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時限爆弾

「……ここにいた子供達はどこ?」



 広瀬の煽りを無視して真冬が尋ねる。



『さあ? 兵藤がどこかに連れて行ったみたいだけど、そっちはよく知らないわ。それより私は貴女に用があるの』

「私に用? その為にわざわざ私を閉じ込めたの?」

『ええ。貴女とちょっとしたゲームをしたくてね』

「ゲーム……!?」

『そう。ドアの上を見てくれる?』



 言われるまま真冬はドアの上に目を向ける。そこには小型の黒い機械が取り付けられていた。表面には5:00とタイマーが表示されている。それが何か、真冬は一目で理解した。



「時限爆弾……!!」

『正解。威力は最大に設定してあるから、爆発すれば半径十メートルは木っ端微塵でしょうね』



 真冬の背筋に悪寒が走る。その爆発に巻き込まれたら真冬は確実に死ぬ。閉じ込められている今、どこにも逃げ場はない。



『ちなみにその爆弾はちょっとでも衝撃を感知すると強制的に爆発する仕組みになってるから気を付けてね。つまり月坂秋人を呼んでドアを破壊して脱出しようとしても、その衝撃でドーンってわけ』

「……そう」



 元より秋人に助けを求めるつもりなどなかったので、そこは別に問題ない。



「こんな手の込んだことをして、一体何がしたいの?」

『言ったでしょう、私は貴女とゲームがしたいの。貴女がタイムリミット内に時限爆弾を止めることができれば貴女の勝ち。できなければ私の勝ち。シンプルでしょ? 貴女と私、どちらのコンピュータ技術が上か勝負といこうじゃない』

「……その勝負に私が勝ったら、ここから出してくれる?」

『ええ、勿論』

「…………」



 真冬がここまで来たのは千夏と子供達を救出するためであって、そんな茶番に付き合うためではない。が、他に脱出の手段はなさそうだ。



「分かった。その勝負、受けて立つ」

『そうこなくっちゃ。それではゲーム、スタート!』



 時限爆弾のタイマーが起動する。制限時間は五分。それまでに爆弾を停止させなければ真冬の死が確定する。真冬の武器は、ノートパソコンただ一つ。


 広瀬の合図で起動したことから、あの爆弾がこのビルのコンピュータと繋がっているのは間違いない。ならば再びハッキングして爆弾を止めるまで。真冬の得意分野だ。



『言っておくけど、もうセキュリティを緩くするなんてサービスはしないわよ。果たして貴女に私のセキュリティが破れるかしら?』



 自信ありげに広瀬が言う。だが真冬にも五分もあれば可能だという自信があった。


 ゲームなど無視してドアのパスワードを割り出し、部屋から脱出するという手もなくはない。ゲームに勝っても解放してくれるとは限らないので、その方が効率はいいだろう。


 だがたとえパスワードが分かっても、このドアは内側からは開かないし、外側から開けようにも開けてくれる者がいない。春香にああ言った手前、春香を呼び戻して開けてもらうのも憚られる。となると、やはり爆弾を止めるのが一番だ。


 手始めに真冬はセキュリティプログラムを破壊しようと、強力なコンピュータウイルスを送り込んだ。だが――



「!!」



 ウイルスが驚異的な早さで除去されていく。広瀬がプログラムしたアンチウイルスの仕業である。これには真冬も驚きを隠せなかった。



『どう? 私って実は〝攻め〟より〝守り〟の方が得意なの。どんなウイルスだろうと私の前では無力よ』

「……ふっ」



 思わず真冬は笑みをこぼす。こんな状況ではあったが、真冬は高揚感を覚えていた。自分のコンピュータ技術に対抗できる者など今までいなかったからだ。



『へえ、笑う余裕なんてあるのね。それとも諦めたのかしら?』

「……まさか」



 真冬には秘策があった。広瀬が思いも寄らないような秘策が。




  ☆




「はあっ……はあっ……!!」



 目の前に散乱する大量の鉄屑を見渡しながら、俺は息を整える。ようやく全てのロボットを破壊した。どうだ、死亡フラグをねじ伏せてやったぞ。しかし思ったより時間が掛かってしまった。



「……っ!!」



 またしても強烈な頭痛に襲われる。これで何度目だろうか。時間が掛かったのもこれが原因だ。


 それより早く千夏を助けに行かなければ。問題は、千夏が現在どこにいるか。駄目元で千夏に電話をかけてみたが、やはり繋がらなかった。電話に出られる状況じゃない、敵にスマホを奪われた、どこかでスマホを落とした……。可能性を考え出したらキリがない。しかしこの広いビルを一人で探すのは――



「秋人ー!!」



 その時、春香が階段の方から駆けてくるのが見えた。だが春香以外の姿はない。



「春香! 真冬はどうした!? 子供達は!?」

「それは……」



 一瞬目を泳がせた後、春香は言った。



「真冬なら大丈夫! 子供達も!」

「……本当か!?」

「ええ! それよりアタシ達は千夏ちゃんを助けに行きましょ!」



 何か言い淀んでるようにも見えたが……。まあいい、春香の言葉を信じよう。それにこのタイミングで春香が戻ってきたのは僥倖だ。これで手分けして千夏を捜せる。



「俺は二十階から屋上までを捜す! 春香は二十階より下を頼む!」

「分かったわ!」



 春香は階段の方へ走り出す。一方俺はフロアの中央に向かっていた。



「ちょっと秋人、階段はこっちよ! 方向音痴にも程があるでしょ!」

「違う、ショートカットするだけだ!」

「ショートカット!? どういうこと!?」

「また後でな! 絶対に死ぬなよ春香!」




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