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【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】  作者: ダイヤモンド


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高所恐怖症

「頼む春香、スキルを!!」

「…………」

「春香!? 聞いてるのか!?」



 返事がないので後部座席を振り向くと、春香が顔を真っ青にして尋常ではないほど震えていた。



「ごめん……アタシ実は高所恐怖症で……ちょっと今スキルとか無理かも……」

「おいいいいい!!」



 こうしてる間にもますます高度は下がっていく。ニーベルングのビルは目前だというのに墜落死とか笑えないぞ。今は【操縦】を発動しているので他のスキルは使えない。それ以前に俺の手持ちのスキルでこの状況をどうにかできるとは――



「秋人、これ!」



 真冬が助手席のグローブボックスから〝あるもの〟を三つ取り出した。これは……パラシュート!?



「こんなこともあろうかと用意しておいた!」

「おおっ……!」



 真冬から使い方を聞きながら素早くパラシュートを装着した。



「ほら春香も早くこれ付けろ!」

「高いの怖い……高いの怖い……高いの怖い……」

「春香ー!! 気をしっかり持て!!」



 直後、スカイカーが墜落して爆発する。ギリギリ俺達はパラシュートで脱出に成功し、地面に着地した。



「はー、死ぬかと思ったわ」

「いやマジで死ぬところだったぞ……」



 炎上するスカイカーを見ながら俺は呟く。どこにも被害が出なかったのは不幸中の幸いか。深夜とはいえこれだけ派手な爆発が起きたら人が集まってくるのも時間も問題だろうし、早急にこの場を離れなければ。ひとまず俺は【氷結】を発動してスカイカーを氷で覆い、炎上を止めた。



「すまん真冬。せっかく手に入れたスカイカーを……」

「秋人は悪くないし、別にいい。今は千夏を助けることだけ考えないと」

「……だな」



 間もなく俺達はニーベルングのビルの前に辿り着いた。第一優先は千夏の救出だが、かと言って子供達を見捨てるわけにもいかない。



「真冬、子供達の居場所は分かってるのよね?」

「ん」

「ならビルに入ったら二手に別れましょ! アタシは真冬と子供達を助けに行く! 秋人は千夏ちゃんをお願い!」

「えっ……大丈夫なのか!?」

「大丈夫! アタシだってやる時はやるんだから!」



 春香がウインクをする。二人が向井達の中の誰かと遭遇する可能性を考えると別行動は正直不安だが、ここは春香達を信じよう。



「分かった。けど絶対に死ぬなよ!」

「当たり前よ!」

「よし、それじゃ突入だ!」

「待って秋人、ビルの中に入るにはIDカードが――」

「必要ない!」



 俺は【怪力】を発動し、入口の扉を拳で破壊した。



「……げっ!?」



 だがビルに突入した瞬間、衝撃の光景が目に飛び込んできた。人間の形を模したロボットがそこら中に配置されていたのである。数は軽く百を超えているだろう。



『三体ノ侵入者ヲ確認。排除シマス』



 間もなくロボットが一斉に稼働を始めた。



「歓迎してくれてるわけじゃなさそうね……」

「みたいだな……」



 俺達の襲撃を見越してこんなものまで用意していたのか。だが機械ごときに足止めを食らうわけにはいかない。



「こいつらは俺が引き受ける! 二人は俺を置いて先に行け!」

「その台詞死亡フラグじゃない!?」

「んなフラグへし折ってやるよ! いいから早く!」

「……分かったわ! 行くわよ真冬!」



 春香と真冬が階段の方へ走っていく。そう簡単には行かせまいと、ロボット共が二人を追おうとするが――



「悪いな、ここから先は通行止めだ」



 俺はロボット共の前に立ちはだかった。ロボット共はお構いなしに突っ込んでくる。この光景、雪風の氷人形との闘いを思い出す。あの時はだいぶ苦戦を強いられたが、今の俺は違う。



「舐めるなよ……!!」



 俺は【氷結】を発動し、頭上に無数の氷の槍を生成。それらを一斉に放ち、ロボット共を串刺しにしていく。一体一体破壊するしかなかったあの時とは違う。今の俺は【氷結】のスキルを得たことで遠距離&広範囲攻撃が可能となった。こんな奴等すぐに一掃して、千夏を助けに行く!




  ☆




 一方、子供達のいる四階を目指して階段を駆け上がる春香と真冬だったが――



「あっ!?」



 春香達は三階と四階の間の踊り場で足を止めた。四階へと続く階段の先にシャッターが下りていたからだ。これは向井が千夏を下の階に行かせないために仕掛けたものだが、奇しくも今は春香達にとっての障害と化していた。これでは先に進めない。


 秋人がいればシャッターの破壊も容易だろうが、今は大量のロボットと戦闘中である。そもそも秋人をこっちに呼んだら二手に別れた意味がない。



「問題ない。私に任せて」



 真冬は手持ちの鞄からノートパソコンを取り出した。



「何が入ってるのかと思えば……パソコンなんて持ってきてたの!?」

「ん。こういう時の為に」



 真冬はパソコンを床に置き、高速でタイピングする。アジトではジャミングによってハッキングを封じられたが、あくまでそれはビル外部からの電波を妨害するにすぎない。つまりビル内部からの干渉は可能である。


 間もなく真冬は管制室へのハッキングに成功し、シャッターを上げた。



「流石ね! 真冬が一緒で助かったわ!」

「……役に立ててよかった」




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