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占い師との再会

 真冬が根負けした形で、千夏のニーベルング潜入作戦が決まった。ただし秋人と春香には知らせず秘密裏に進めなければならない。秋人達に知られたら作戦を中止されられるのは目に見えているからだ。


 特に秋人の場合、千夏を転生杯に巻き込んでしまったことに負い目を感じているのもあって、絶対に許さないだろう。



「まず必要なのはIDカード。これがないとニーベルングのビルには入れない。だけど当然ながらIDカードを所持してるのはニーベルングの組員だけ」

「それじゃ、どうやって中に……?」



 真冬は一旦部屋を出ると、複数のカードを持って戻ってきた。



「もしかしてそれ、IDカードですか!? どうして真冬さんが……!?」

「ニーベルングのコンピュータをハッキングしたら、向井と三人の側近に関しては残念ながら空振りだったけど、それ以外の組員の個人情報は色々と手に入った。横領だったり賄賂だったり汚いことに手を染めてる人がいたから、それを使ってちょっと脅したら快く譲ってくれた」

「な……なるほど……」



 思わず顔を引きつらせる千夏であった。


 それから潜入をスムーズに進めるため、真冬はニーベルングのビルの平面図と断面図を印刷して千夏に渡した。



「それと……」



 真冬がスプレー缶を千夏に見せる。二日前の実験で、秋人の血液から抽出したスキル因子を入れた缶だ。



「このスプレーを吸えば、秋人さんのスキルを使えるようになるんですよね……?」

「理論上は。それで秋人が所持する全てのスキルを使えるのかは未知数。それとさっきも言ったけど、もし失敗したら何が起きるか分からない。だからそれは最終手段にして」

「……分かりました」



 真冬はやや躊躇いながらも、そのスプレー缶を千夏に手渡した。これに頼る事態にならないようにと願いながら。



「決行は明日の二十七時。その時間なら組員達も就寝しているはずだし、その隙に潜入して子供達を救出する。だから明日に備えて今日はゆっくり休んで」

「はい。何から何まで、本当にありがとうございます」

「……最後に、一つ」



 真冬は短い間を置いて、静かに口を開けた。



「これから千夏がやろうとしていることは、本当に危険なこと。この作戦が上手くいったとしても、きっと秋人は喜ばない。それでもいい?」

「……はい。覚悟はできてますから」



 秋人は千夏のことを本当に大事に思ってるから――そう真冬は口にしようとしたが、どうしてか言葉が出てこなかった。




  ☆




 翌日、午後五時。一足先に学校から帰宅した千夏は、早速準備を始めた。ニーベルングのビルはアジトから結構な距離があるので、まずはその近くのホテルに宿泊する。ホテルの予約は真冬が昨日済ませておいた。


 ちなみに秋人達には「久々に千夏の両親が帰ってくるそうなので、千夏は明日まで自分の家で過ごすことになった」と伝えてある。そのことに秋人達が疑いを持つことはなかった。本当は千夏が何をしようとしているのかも知らず。


 そして出発の時が来た。真冬は不安げな表情で千夏を見送る。



「そんな顔しないでください。私まで不安になっちゃいます」

「……ん」



 確かにこういう時は笑顔の方がいいと思い、頑張って口角を上げる真冬。しかしあまり笑うことに慣れてないせいか、なんとも微妙な顔になった。



「ふふっ、あははっ! こんな時に笑わせないでください真冬さん!」

「別にそんなつもりじゃ……」



 思いっきり笑う千夏を見て、真冬も自然な笑顔になった。



「……それでは、行ってきます」

「待って千夏」



 玄関を出ようとした千夏を、真冬が呼び止める。



「フラグになりそうだから、あまりこういうことはやりたくないんだけど……」



 そう言いながら、真冬は小指を千夏に差し出す。



「約束して。必ず生きて帰ってくるって」

「……はい。勿論です」



 千夏と真冬は互いの小指を固く結んだ。





 午後六時。ホテルへ向かう電車の中、千夏の手には、以前秋人から貰ったイルカのキーホルダーが握られていた。千夏にとっては大切な宝物であり、御守りだ。


 最後に秋人さんとちゃんと話をしたかったな……。キーホルダーを見つめているとそんなことを考えてしまうが、すぐに振り払う。これではまるで今生の別れのようではないか。必ず生きて帰ってくる、真冬とそう約束したはずだ。



「あら、また会ったわね」



 そんな時、思いがけない人物が千夏の前に現れた。



「えっ……エミリアさん!?」



 それは数日前に千夏と秋人が訪れた占い師、エミリアだった。本日はオフなので私服姿だが、千夏には一目で分かった。



「私のこと、覚えてくださってたんですか!?」

「ええ。この間来てくれた子でしょ? 確か、千夏さんだったかしら」

「私の名前まで……!! 光栄です!!」



 千夏はエミリアの大ファンなので、状況を忘れてつい興奮してしまう。



「お隣り、いい?」

「どうぞどうぞ! 今お飲物をお持ちしますね! あっ、ここ電車でした!」

「ふふっ。面白い子ね」



 エミリアは千夏の隣りに腰を下ろした。




感染者が増えて大変ですが皆さんも体調には気を付けてください。

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