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告白……?

「ああ。千夏は普通の人間と同じように俺と接してくれた。俺が正体を明かした後も。そして思い出した、かつては俺も普通の人間だったなって。だからこの二度目の人生を、普通の人間のように楽しむのも悪くないなと思い始めたんだ。だからこうして高校にも通ってる」



 これまで色々と理由をつけて仕方なく高校に通ってるように振る舞ってきたが、本心ではどうだったか。いい加減認めよう、高校生活を楽しんでいる自分がいることに。最初は高校なんて面倒臭いとしか思わなかったのにな。この心境の変化は、間違いなく千夏と出会ってからだ。



「千夏は自分に何の力もないって悩んでるようだけど、全然そんなことはない。千夏は俺に大切なことを思い出させてくれた。復讐に囚われていた俺に手を差し伸べてくれた。千夏は俺にとって特別な存在だ」

「秋人……さん……」



 いつの間にか、千夏の目から涙が溢れ出ていた。この前泣かせてしまった時は明らかに違う涙だ。


 やがて千夏が立ち止まる。どこか苦しそうに胸を手で押さえていた。



「千夏? 具合でも悪いのか?」

「いえ、これは、そういうのじゃないです。ちょっと、気持ちが、溢れてきてしまったというか……」



 しばらく俯いた後、何かを決意したように、千夏は顔を上げた。



「そういえば、まだちゃんと伝えたことなかったですよね。私の気持ち」

「千夏……?」



 頬を赤く染め、俺を見つめる千夏。この流れ、もしかして――



「私……私!! 秋人さんのことが……!!」

『こちらは、廃品回収車です。ご家庭で不要になったテレビ、冷蔵庫、洗濯機など。何でも無料で回収します。こちらは、廃品回収車です』



 その時、千夏の後ろを廃品回収車が巨大な音声を流しながら通過していった。雰囲気ぶち壊しである。



「……すみません。何でもないです」

「そ、そうか」



 さすがにテイク2というわけにはいかず、俺達は何事もなかったように歩き出した。だけどもし邪魔が入らず、千夏から気持ちを伝えられていたら、俺はなんと答えていただろうか……。


 その後、俺は久々にスポーツジムに寄って身体を動かしたいと言って、千夏と別れた。しかし俺の行き先はスポーツジムではなかった。



「っ……ああっ……!!」



 俺は通りかかったベンチに腰を下ろし、両手で頭を押さえる。実は電車を降りた直後から頭痛が再発し、立っているのもやっとの状態だった。アジトに着くまで耐えられそうになかったので、千夏に心配をかけまいと嘘をついてしまった。


 しかし本当に何なんだこの頭痛は。治る気配がないどころか酷くなる一方だ。こんな有様でニーベルングの連中とまともに闘えるのか……!?


 とにかく薬局で鎮痛薬でも買おう。少しはマシになるかもしれない。俺は歯を食いしばって立ち上がり、なんとか歩き出した。




  ☆




 その頃真冬は、朝から作戦会議室に引き籠もって向井達の情報収集に明け暮れていた。何か弱味でも握ることができれば、向井達との闘いを優位に運べるだろうが……。



「ふー……」



 大きく溜息をつく真冬。残念ながら一日かけてもこれといった情報は得られなかった。ニーベルング内部のコンピューターへのハッキングには成功し、他の組員の情報はある程度得られたものの、肝心の向井達四人については何も出てこなかった。既に手を打たれていたようだ。


 おそらく他の組員は子供達が悲惨な目に遭っていることを知らない。その者達に向井達の所業を暴露すれば、子供達の救出の際に協力を得られないだろうか――いや、見ず知らずの人間は信用できないし、こちらの味方になってくれるとも限らない。むしろ余計な混乱を招くだけだろう。


 ならばいっそ向井達の所業を世間に公表してしまおうか。子供を拉致して監禁するのは立派な犯罪なので、警察という国家権力の力を借りる手もある。転生杯のことが明るみに出る怖れはあるが、そのあたりは支配人が上手く改竄してくれるはず――



「……何考えてんだろ」



 真冬は首を横に振った。こんなのは向井達が転生杯の参加者だということを完全に度外視した考え方だ。一般人に頼ってどうにかなる相手とは思えないし、いたずらに犠牲者を増やすだけだ。少し考えれば分かることなのに、真冬も疲労が溜まっているせいか、思考力が鈍っているようだ。


 何か手はないものか。行き詰まっていたその時、真冬は里菜のことを思い出した。一昨日は記憶が混濁していて真冬のスキルは失敗に終わったが、二日経って容態も安定してきたし、今なら記憶を読み取れるかもしれない。そう思った真冬は、里菜のいる部屋に足を向けた。



「あっ、真冬さん」

「……千夏。帰ってたんだ」



 真冬がドアを開けると、そこには里菜の看護をする千夏の姿があった。里菜はベッドで寝息を立てている。



「春香と秋人は?」

「春香さんはアイドル部の活動、秋人さんはスポーツジムに寄ってくるそうです」

「……そう」



 真冬は里菜のもとに歩み寄り、彼女の額に人差し指を当ててスキルを発動する。が、未だに記憶は混濁したままで、二日前と結果は同じだった。里菜の記憶を読み取ることができれば、そこから向井達の情報を得られるかもしれないと期待していたが……。




年内最後の更新です。皆様よいお年を!

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