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ニーベルング

「あくまで推測だけど、スキル因子を体内に取り込むことでスキルを使えるようになるのは一般人に限った話かもしれない。既にスキルを持っている転生杯の参加者がスキル因子を取り込んだ場合、何が起きるか分からない」

「えー? 心配しすぎじゃない?」

「そうかもしれないけど、リスクはできるだけ避けた方がいい。それと、このことは千夏には絶対に内緒。千夏が知ったらどんな行動に出るか大体想像がつく」



 確かに。千夏なら「私の身体でよければ遠慮なく実験に使ってください!」とか言い出しそうだ。



「じゃあどうするの? このままじゃ真冬の理論を立証できないじゃない」

「別に立証できなくていい。ここまでやっといてアレだけど、そこは大して重要じゃないから」



 そう言って真冬はスプレー缶を引き出しの中に入れた。いかにも残念そうに溜息をつく春香。



「なんか勿体ないわね。せっかくアタシも秋人みたいに氷を出したり地面に潜ったり少女戦士に変身したりできると思ったのに……」

「最後のは違う奴のスキルだろ!」

「それより大事なのは、今回の事件の黒幕を突き止めること」



 真冬の言う通りだ。子供達に闘うための力を与え、転生杯の駒として操っている奴等が必ずいる。一刻も早くそいつらを探し出してぶっ飛ばしてやらなければ。



「突き止めると言っても、手掛かりはあるの? まだ里菜ちゃんの記憶は読み取れてないんでしょ?」

「問題ない。敵はきっと、さっき私が実践した方法で複数の子供達に何度もスキル因子を取り込ませては、何度も闘わせてる。その為にはかなりの量の過酸化水素水が必要となるはず。だから過酸化水素水を大量に購入もしくは生産している全国の企業、団体、組織を片っ端から調べてみる」

「全国のって……本当にそんなことできるのか?」

「私を誰だと思ってるの? 私に不可能はない」

「……すみませんでした」



 そうだよな。黒田の住所を見事に特定してみせた真冬なら、きっとやってくれるだろう。



「それにあの子が口にした兵藤という名前も大きなヒントになる。明日までには必ず突き止めてみせる」

「……そうか。任せたぞ真冬」





 翌日。俺と春香は学校から帰宅するや否や、作戦会議室に足を向けた。



「真冬、進捗はどう――うおっ!?」



 ドアを開けると、まるで屍のようにキーボードに突っ伏している真冬が目に飛び込んできた。口からは魂のようなものが出てしまっている。



「真冬!? ちょっと大丈夫!?」



 春香が駆け寄って肩を揺らすと、真冬はゆっくりと顔を上げた。



「お……おかえりみんな……」

「もしかして一睡もしてないのか?」

「……ん」



 俺達にああ言った手前、何が何でも今日中に黒幕を突き止めたかったのだろう。



「それで、敵の正体は掴めたの?」



 春香が尋ねると、真冬は眠そうな顔でピースサインを見せた。



「黒幕は〝ニーベルング〟という組織で間違いない。五年ほど前に設立され、瞬く間に成長を遂げた巨大組織。表向きはごく普通の人体の研究機関だけど、取材を一切受け付けてなかったり、複数の組員が謎の失踪を遂げていたり、色々と怪しい点が多い。大量の過酸化水素水の購入履歴も見つかったし、被験者と称して何人もの子供達を連れ込んでる様子も確認できた」



 真冬がモニター画面に高層ビルを映し出した。五年前ということは、ちょうど第八次転生杯が始まった頃か。



「子供達の出入りはほとんど確認できなかった。つまり子供達は半ば監禁のような形でこのビルに住まわされてるんだと思う」

「完全にクロだな……」

「その子供達はどこから連れてきたのかしら。まさか誘拐?」

「……そこまでは分からなかった」



 誘拐だとしたら事件として報道されるのが普通だろうが、支配人によってその痕跡が消されて公になっていないだけとも考えられる。あの支配人は転生杯が世間に広まらなければそれで良さそうだしな。



「ニーベルングについて更に調査を進めていたら、四人の人物が浮上した」



 続いて真冬が四人の顔写真をモニター画面に映し出した。男が三人、女が一人だ。



「一番上が、向井巧実。この男がニーベルングの総帥」

「若っ! どう見ても未成年じゃない!」

「ってことは、転生杯の参加者なんだろうな」

「あー、なるほどね」



 この向井という男が首謀者か。いかにも悪人って感じの面だ。



「他三人は向井の側近。上から昼山当真、兵藤千里、広瀬歩美。里菜って子が口にしてた兵藤というのは、おそらくこの兵藤千里という男のこと」

「この兵藤って奴が、子供達を操っていた張本人か?」

「ん。おそらく」

「全員若いわね。ってことは、この三人も転生杯の参加者なのかしら」

「多分そうだと思う」



 向井、昼山、兵藤、広瀬。転生杯においてはこの四人でチームを組んでいると考えていいだろう。



「おそらく路上の監視カメラを操作していたハッカーは、この広瀬という女。根拠はないけど、いかにも根暗で陰湿って感じの顔だから」

「それブーメランじゃないの?」

「……何か言った?」

「冗談よ、冗談。そんな怒んないでよ」



 むくれた顔で春香を睨みつける真冬であった。




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