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中間テスト

「うーん、誘ってくれたのは嬉しいんだけど……。実は私、もう別のチームに入ってるんだにゃ」

「別のチーム?」

「そっ。その名もチーム『ムーンライト』! だから春香ちゃん達の仲間にはなれないにゃ。ごめんね」



 俺達以外にもチームを組んでる参加者がいたのか。まあ転生杯のルール上、同じことを考える奴は少なくないだろう。



「そっか……。なら仕方ないわね」

「それじゃ、俺達とはまた敵同士ってことになるな」

「うん、協力関係も終わり。なんなら今ここで決着つける?」



 一瞬、俺と朝野の間に緊迫した空気が流れる。雪風の乱入によって中断された、あの時の闘い。その続きをこの場でやろうというのか。だがすぐにその空気は解かれた。



「やめだやめ。こんな生徒達が大勢いる場所で闘うのはもうゴメンだ。それに正直、今はお前と闘う気分になれない」

「あはは、実は私も同じ気持ちにゃ。協力関係は終わりだけど、休戦はしばらく継続ってことで」



 なんせ閉ざされた空間で七日間も行動を共にしたんだ。まともな人間なら少なからず仲間意識は芽生えるものだろう。



「だけど共に転生杯の参加者である以上、いずれ決着はつけないとな」

「そうだね。でもその時は春香ちゃんとも闘ってみたいにゃー。春香ちゃんのスキル面白そうだし!」

「はあ? 勘弁してよ、アタシはできるだけ危険を冒さずに勝ち残りたいの。そういうのは秋人の役目よ」

「えー? ノリ悪いにゃー」



 やっぱり春香のその方針は変わらないんだな。雪風との闘いの時のように危機的状況にでもならない限り、自ら闘う気は更々ないらしい。



「それじゃ私は先行くにゃ! 春香ちゃん、リストバンドありがとー!」



 ブンブン手を振りながら朝野は走り去っていった。



「…………」



 春香はしばらく無言で俯いていた。どうやら意外にも朝野に振られてショックを受けているようだ。そんなことで落ち込むタイプには見えないのに。



「元気出せ春香。こういうこともあるさ」

「……チーム名、アタシ達も考えた方がいいかもしれないわね」



 そっちかよ。





 廊下で春香と別れ、俺は二年A組の自分の席に腰を下ろした。そして軽く教室の中を見回してみる。やはり以前より席の数が少ない。減った分は、雪風との闘いで犠牲になった生徒の席だろう。当然、石神の姿もそこにはなかった。


 だが人々の記憶が改竄された今となっては、誰もそのことに気付きはしない。死んだ者達が誰の記憶にも残っていないことを思うと、なんだかやるせない気持ちになった。



「おいーっす、秋人」



 そこに圭介がいつもの調子で俺に挨拶してきた。



「ああ、おはよう」

「ちゃんと準備はしてきたか、秋人」

「準備? 何の話だよ」

「……マジかお前。さすがの俺もちょっと引いたぞ。周りの奴等を見てみろよ」



 俺は改めて周りを見回す。まだホームルームの十分前だというのに、ほとんどの生徒が真剣な顔つきでノートや教科書と睨めっこをしていた。



「やけに静かだと思ったら……。皆なんで勉強してるんだ?」

「んなもん今日が中間テストだからに決まってるだろ」

「……は? 中間テスト?」

「本当は三日前にやる予定だったけど、四日前に休校になっただろ? だから振り替えで今日やるんだよ。休校前にそういう伝達があっただろ。まさか中止になるとでも思ってたのか?」



 いや初耳なんだけど。もしかしてこれも記憶の改竄の影響か? まあ仮に聞いていたとしても勉強なんてしなかっただろうけど。



「本当に全然知らなかったって顔だなおい。そんな有り様で中間テストに臨むのは無謀すぎるし、いっそ仮病でも使って休んだらどうだ?」

「……ふっ、安心しろ。勉強なんざしなくても全教科余裕で高得点取ってやるよ」

「ほほーっ、そいつは楽しみだ。期待してるぜ」



 これでも生前きっちり高校を卒業した身だし、成績は常に上位だった……とまでは言わないが、中の上くらいはあった。高二の中間テストくらい楽勝だろう。こうして俺は意気揚々とテストに臨んだ。





 三日後。全ての答案用紙が返却され、成績表を渡された。結果、俺は全教科で赤点を取ってしまった。



「だっはっはっはっは!! 全教科赤点ってお前!! なにーが『全教科余裕で高得点取ってやるよキリッ』だよ!! だっはっはっはっは!!」

「ぐっ……!!」



 俺を指差して大笑いする圭介。今回ばかりはグウの音も出ない。まさかここまで学力が落ちていたとは……。中でも酷いのが数学で、5点しか取れなかった。微分積分? 三次関数? 生前の学生時代の俺は本当にそんなもん解けていたのか? むしろよく5点も取れたなって感じだ。



「あー腹痛てえ。いやあ笑わせてもらったわ。サンキュー秋人」

「うっせえ! そういうお前はどうだったんだよ!」



 圭介はいかにもお馬鹿キャラだし、人のことは笑えないだろう。きっとこいつも赤点を量産しているに違いない。



「俺か? 俺は赤点一つもなかったぞ」

「は!? 嘘だろ!? ちょっと見せてみろ!!」



 俺は圭介の手から成績表を奪い取る。確かに赤点は一つもなかった。だがそれ以上に驚いたのは、どの教科も41点、つまり赤点より一点上だったことだ。



「お前これ、狙ってやったのか……!?」

「ああ。俺は赤点さえ取らなきゃそれでいいしな。だったら100点より41点を狙う方が勉強量も少なくて済むだろ? 必要最低限の労力で生きる、それが俺のモットーだ」



 いやそっちの方が難しくないか。



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